第50話 可能性
第50話 可能性
ギルド直営の宿泊施設に戻った僕たちは、ギルドカウンターに立ち寄り、瞬間移動をする特殊なキラー・マンティスが出現し、それを討伐したことを報告した。
ギルドとしては、これ以上の特別な調査は行わないが、迷宮にはいる際に注意喚起を促すということだった。
僕は、女神サリア様から聞いていた特殊固体についての情報を、思い出していた。
女神様が看破できない、同格か格上の神様による隠蔽がなされた魔物…。
隠蔽をしているのは女神ベスか?
それとも、想像も出来ないが、サリア様より格上の神様?
ただ、いつ出現するかも分からない特殊固体に、気を取られすぎるのは、好ましくない。
そう結論づけると、このまま迷宮攻略を進めていこうと、心に決めた。
しかし、あの瞬間移動は奇妙な現象だった。
文字通り、移動は瞬間で行われ、時空間操作スキルを使っていてさえ、移動を認識することすら出来なかった。
しかしあれは本当に瞬間移動か?
時間を止めたのではないか?
そんな疑問が浮かんだが、すぐにそれを打ち消した。
時間を停止させたのなら、移動後の攻撃も認識できなかったはずだ…。
それに、そもそも時間を停止できるのか?
時空間操作スキルでは、時間の流れを遅くすることは出来ている。
では、完全に止めることは出来るのだろうか…?
スキルレベルが10に上がれば出来るようになるのだろうか?
とにかく、早くレベルアップをして、確かめたいと思った。
ちょうど明日は休息日である。
僕は、この迷宮で、初めてソロで潜る決心をした。
早速、その旨をメンデスやメンバーに伝え、眠りにつくのだった。
*
僕は今、一人で迷宮に潜っている。
ソロで潜るときは、光をともすライトの魔法は使わず、そのかわりに暗視能力をフルに発揮している。
それに加え、迷宮ではあまり役に立たないといわれている気配察知のスキルやステルス・スキルも、常時使う様にしている。
いつものことだ。
この迷宮をソロで潜るのが初めてとはいえ、することを変える必要は無い。
僕は平常心を保ちながら、第一層を歩いていた。
ボスであるキラー・マンティスは、特定の場所でしか出現しない。
それ故に、エンカウントする魔物は、ドラゴン・フライ、コールド・アント、ヒュージ・スパイダー、ヒュージ・センティピードといった所だ。
ドラゴン・フライとコールド・アントはレベル8でも勝てる相手であり、まったく問題とならないだろう。
やはり一番の強敵はヒュージ・センティピードなのだ。
僕はヒュージ・センティピードを周回すると決心した。
しかし、ヒュージ・センティピードにソロで勝てるだろうか?
シミュレートしてみた。
…戦闘開始時から、時空間操作スキルを使えば問題ない。
そう結論づけた。
今は剣技を磨くことよりも、レベルアップを優先する。
それならば、エンカウントすると分かっていれば、はなから時空間操作スキルを使えば良いのだ。
いくら素早い動きをするヒュージ・センティピードであっても、時空間操作スキル下ならば、問題とならない。
今、白の鍵は持っていない、さあ周回の開始だ。
この扉の向こうに、ヒュージ・センティピードがいる。
僕は指先に魔力をチャージし始めた。
扉を開けると同時に、時空間操作スキルを使った。
巨大なムカデの魔物が、こちらを向いている。
僕は全速力で、ヒュージ・センティピード向かった。
ヒュージ・センティピードはこちらに気づいて動き出す。
しかしその動きは緩慢で、脅威を感じるほどではない。
そのまま、ヒュージ・センティピードの手前1m程の所まで接近すると、チャージしておいた魔弾を、その頭部めがけて放った。
ヒュージ・センティピードは避けきれない。
魔弾が頭部に命中し、拳大の穴を穿った。
緑の体液が、流れ出はじめている。
僕は躊躇せず、その穴に手裏剣を深く突き入れ、内部から硬い皮膚を突き破った。
ヒュージ・センティピードは、頭部を破壊され、そのまま倒れた。
完勝である。
戦闘開始からわずか二十秒ほど。
そのまま扉から部屋の外に出ると、手にある白の鍵を捨て、キャンプをはった。
僕はクリーン・アップの呪文を唱え、付着した体液を完全に除去した。
しばらく休んだ後、キャンプを離れ、再び指先に魔力をチャージし始めた。
さあ、再戦といこうか…。
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