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第49話 キラー・マンティス

第49話 キラー・マンティス

黒の鍵を使い扉を開けると、漆黒の闇が目の前に広がっていた。

まだ目が慣れない。

そう思ったのもつかの間、真っ暗だった広い部屋の壁にある燭台に、一つずつ、順番に灯がともっていく。

燭台が一つ灯るごとに、部屋は少しずつ明るくなっていき、やがて部屋の様子は誰の目にも見えるようになっていった。

それと共に浮かび上がってきたのは、高さが5m程もある、茶色いカマキリの魔物であった。

キラー・マンティスは、体全体をゆっくりと前後に揺らしながら、祈るような体勢で、こちらを向いている。

キラー・マンティスの鎌に当たる部分は異常に発達しており、そこに生える沢山の棘は、蝋燭の光を反射し、怪しく揺れ動いている。

三角形の顔に着いた複眼の目は、こちらを見ているようにも思えたが、微動だにせず、その近くでただ触覚だけがせわしなく動いている。

その姿を見たとき、僕は、前世の子供時代に飼っていたカマキリのことを思い出した。

「みんな、カマキリは動くものしか見えないんだ。じっとしていて。僕が動いて囮になるから、チャンスを見て弱点である目や首を狙って」

「了解」

サーシャは呪文の詠唱を静かに開始した。

メンデスやエライザはゆっくりと剣に手をかけている。

「行くよ」

僕は3m程ジャンプして、素早くみんなから離れると、わざとゆっくりと歩き出した。

キラー・マンティスがそれに反応してこちらを見た。

                *

レンがジャンプをし、僕たちの前方に出て、ゆっくりと歩き出したときに、はっきりとキラー・マンティスは獲物を認識したようだ。

キラー・マンティスの纏う雰囲気がはっきりと変わった。

意識がレンに向いている。

僕はレンのことが心配であったが、それ以上に信頼もしていた。

いつでも剣を抜けるように準備しつつ、様子を見ていた。

そして、それは唐突に起こった。

キラー・マンティスが、突然消えたかと思うと、僕たちの2m程前で、這いつくばったような状態で現れた。

そして体を起こそうとしている。

今だ。

僕は、すかさず距離を詰めると、目の前にあるキラー・マンティスの右目にフランベルクを突き刺した。

エライザも同時に動きだしている。

流麗な動きで接近したかと思うと、地面近くにあるキラー・マンティスの頭に、シューティングスターで斬りかかった。

サーシャは、キラー・マンティスが突如近くに出現したことが分かると、詠唱を終えていたファイア・ストームの呪文を、その長い体(腹)の部分を目標に発動させた。

それらの攻撃が一斉にキラー・マンティスを捉えた。

それで、キラー・マンティスは満身創痍となった。

エライザは、気合いの声を上げたかと思うと、もがき苦しむキラー・マンティスの首をシューティングスターで斬りつけ、キラー・マンティスを絶命させることに成功した。

「レン、大丈夫か?」

「まあ、何とか…」

「何が起こったんだ?全く分からなかったぞ。レン、説明できるか?」

「ああ、キラー・マンティスが突然消えたように見えただろう?あれはおそらく瞬間移動だ」

「瞬間移動!?」

「ああ、時空間操作スキルを使っていなかったら危なかったよ…。あの少し前から時空間操作スキルを使っていたんだ。それでもやつの動きは見えなかった。それは瞬間移動したからだと思う。でも、突然現れた後の動きはゆっくりだった、だから捕まらずに済んだんだ。ジャンプして、上に避けることが出来たからね」

「しかし、瞬間移動するなんて報告はなかったぞ!瞬間移動しているかのように見えるという報告はあったけどな」

「うん…、メンデス…、あれも特殊個体だったのかもしれないよ」

「…そうかもしれないな、それなら納得がいく…」

僕たちは、暗い気持ちのまま迷宮を後にした。


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