第39話 新メンバー
リンの幼なじみ?
第39話 新メンバー
翌日、ギルドにやって来た僕たちの前には、見知らぬ顔があった。
ギルドマスターの横に立つのは、リンとよく似た雰囲気の猫族の青年である。
「よく来てくれたな。ライジングサンのみんなに新しいメンバーを紹介する前に、ちょっと少しだけいいか?」
「はい」
「まず、彼には君たちの事情や状況を話してある。見ての通り、彼はリンと同じ猫族だ。もちろんリンのこともよく知っている。そして君たちに起こった出来事についても。それでも君たちとともに冒険したいと、申し出てくれている」
「それでは、紹介しよう。こちらはCランク冒険者、マッパーのミーニャだ」
「初めましてなのです。マッパーのミーニャです。マップ作成だけじゃなく、スカウトもできるのです。宜しくなのです」
ミーニャの自己紹介を見ていると、思わずリンと初めて出会ったときのことを思い出していた。
不意に、悲しみや悔しさがこみ上げてくる。
今は、それを何とか抑え込んだ。
「初めまして。リーダーのメンデスです。ミーニャは戦闘の方はどう?」
「短剣を使って、少しは戦えるのです」
「そうか。まだどうなるか分からないけど、前衛をお願いすることになるかもしれない」
「はい、大丈夫なのです」
「ではこれから宜しく」
「宜しくなのです」
「初めまして、レンです。前衛をしています、宜しく」
「初めまして、レイリアです。回復魔法は私にお任せあれ、宜しくお願いしますわ」
「ん、初めまして、ボクはサーシャ。魔法担当、宜しく」
「改めて、皆さん宜しくなのです。私はリンの幼なじみなのです。どうしてリンが死んだのか、皆さんの力を見極めさせてもらうのです」
「…それについてはもう説明してあるだろう?」
「はい。でも自分の目で確認するまでは、納得できないのです」
「まあ、彼らの実力は、クエストをこなせばすぐに分かるだろう。国の上層部から、二週間後にメンバーを一人紹介したいと言われている。それまではクエストをこなして、せいぜい仲良くなっておいてくれ」
「ギルマス、メンバーを一人紹介するのに、どうして二週間も時間が必要なのですか?」
「そうだな…、大切な使命を帯びた、将来有望なパーティーに、唾をつけておきたい貴族も多いといったところかな…?」
「……」
「私、クエストをこなすのも良いのだけれど、やっぱり迷宮に潜りたいわね」
「僕もそうだね。クエストよりも迷宮探索がいいよ。二週間しかないなら、アークワン迷宮に戻って、少しでも経験を積むのと、連携の確認をしておきたいな」
「そうだな…。ギルマス、と言うことで、しばらくはアークワン迷宮でレベリングをしてきます」
「分かった。もしその後にアークニート迷宮に潜るつもりなら、王都との往復は時間の無駄でしかない、新メンバーにはマーリン支部で落ち合うように手配しておこうか?」
「心遣いありがとうございます。よろしくお願いします」
*
僕たちのパーティーは冒険者ギルドのマーリン支部にやって来ていた。
カラランとけたたましくなるベルの音とともにドアを開け、中に入る。
かつての僕たちと同様に、フレッシュな冒険者達が多く見受けられる。
それは、アークワン迷宮の近くにあるマーリン支部に特徴的な光景といえた。
僕たちが周囲を眺めながら、受付に向かって歩いて行くと、受付嬢のリーリアさんがにっこりと微笑みかけてきた。
「リーリアさんお久しぶりです」
「あら、お久しぶりですね、皆様。メンバーが替わっているようですね?パーティーの手続きですか?」
「はい、パーティーの手続きをお願いします。それと、明日から第3層でレベリングの予定なので、その手続きをお願いします」
「分かりました。まず冒険者証をお願いします」
「はい、有り難う御座います」
「ミーニャさんを新たにパーティー登録しますね」
「現在のパーティーの状況を確認するために、能力鑑定をさせてください」
「はい、わかりました」
何度も見てきた光景だが、点滅する二つのオーブを見ていると、初めて冒険者となった日のことが思い出された。
…あれから、レベルもずいぶんと上がって強くなったとは思うが、これからのことを考えると、複雑な気持ちになってしまう。
そうしている内に、僕の鑑定の番がまわってきた。
レン 人間族 15歳 男
職業 忍者 職業レベル10
基礎ステータス
力 20、知性 20、信仰心 19、生命力 20、体力 20、敏捷性 20、
幸運 19、器用さ 20
職業スキル
ステルス レベル8、遠見の術 レベル7↑、暗視 レベル8、
気配察知 レベル9↑、状態異常抵抗 レベル6、暗殺 レベル8、
投擲 レベル8
固有スキル
時空間操作 レベル8、魔力操作 レベル8
生活魔法
火属性 レベル6、水属性 レベル6、風属性 レベル6
土属性 レベル6、精神属性 レベル6
その他 攻撃魔法適正なし
当然のことだが、ほぼ前回の鑑定結果と変化がない。
未踏の森周辺の探索をしたためか、気配察知、遠見の術が上がったくらいだ。後、年齢も上がっている。
攻撃魔法の適性はないままか…。
「皆さんありがとうございました。ところで、明日からのレベリングはどのような予定ですか?」
「最終的には迷宮ボスの周回をしたいけど、連携の確認をしたいし、明日は第二層のボス周回か第三層の中ボス周回かな?」
「そうですか。ギルドといたしましては、パーティーのレベル的に、迷宮ボス周回は控えて頂きたいですね。もちろん、特殊なパーティーであることを理解しておりますので、お引き留めはいたしませんが…」
「分かっています、無理はしません」
「それでは、お気をつけて」
*
ミーニャが新たにメンバーに加わったので、迷宮でのレベリングを行う前に、宿泊施設の僕たちの部屋にみんなで集合し、打ち合わせを行った。
「今回のレベリングはこの五人のメンバーで行うので、リンのしていた役割をミーニャにして貰おうと思うんだけど、何か意見はある?」とメンデス。
「基本的にはそれでいいと思うわ。ミーニャさんは、ある程度の戦闘はできるのよね?」とレイリア。
「ある程度の戦闘は大丈夫なのです。それで、リンのしていた役割とは何なのですか?」とミーニャ。
「それはね、ボス以外の戦闘で、相手の一列目が1-2体なら、後衛に下がって戦闘補助にまわってもらい、それより数が多いときは一体受け持って前衛で戦闘をしてもらう。で、ボス戦では基本的には戦闘補助をしてもらう、という感じの役目かな」
「それなら出来そうなのです」
「じゃあ後は実践あるのみだね。明日は第2層のボスを倒しながら連携をみて、大丈夫そうなら第三層の中ボスを周回しよう」
「了解」
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