第40話 融和
第40話 融和
僕たちのパーティーは、アークワン迷宮に向かうべく、送迎馬車に揺られていた。
僕はいつものように、索敵をしながらボーッと外を眺めていたが、珍しいことに前方よりオークが二匹こちらに向かってきている。
通常、弱い魔物達は強い冒険者を恐れ、本能的に逃げていくものだ。
不審に思ったが、特に変わりの無い普通のオークのようだ。
しばらく様子を見ていると、オークとの距離が200m程になったとき、ミーニャがオークの存在をみんなに知らせてきた。
ミーニャの索敵距離は200m程なのかな?それとももっと先まで索敵できる?
そんなことを考えながら、メンデスに確認した。
「僕が片付けて来ようか?」
「あー、じゃあ頼むよ」
「了解」
僕は魔力を指先にチャージしつつ、馬車から飛び降りた。
オークに向かって走りながら、障害物がないことを確認し、そのまま片方のオークに向け魔弾を放った。
魔弾は命中し、一匹のオークは倒れた。
そのままもう一匹のオークへと走って行き、相手に動く暇さえ与えず、手刀で首をはねて倒した。
さっさと仕留めた僕は、馬車に戻ってきて、ミーニャに尋ねた。
「ミーニャ、僕の戦闘はどうだった?」
「まあまあなのです。不思議な技を使うのです」
「合格で良いのかな?」
「まだ分からないのです。相手が弱いオークだからなのです」
「それはそうだろうな。で、もし良ければ、ミーニャはどこまで見えているのか教えてくれない?」
「…どこまで?」
「うん、索敵範囲とか精度とかのこと」
「それは…言えないのです。…まだあなた達を完全に信用したわけではないのです」
「ミーニャ、リンのことがあるから、私たちを信用出来ない気持ちも分かるわ。でも私たちはパーティーなのよ。お互いを信用しなければ、きっと痛い目にあうわよ」
「今回はそのためにアークワン迷宮に潜るという側面もあるんだから、迷宮で戦闘を繰り返しつつ信用して貰うしかないよ」
「分かったわよ、メンデス。ミーニャも偏見無く私たちを判断してよね」
「それは大丈夫なのです」
送迎馬車は、その後も順調に進んで行き、特に何も無いままアークワン迷宮の入り口までやって来た。
僕たちのパーティーは迷宮に入ると、雑魚の敵を蹴散らしながら進んだ。
雑魚敵だけでなく、第一層のボスも、何の問題も無くたやすく葬り去っていった。
第二層のボス部屋の前まで進んできたとき、メンデスがみんなに話しかけた。
「みんな知っての通りこの先にコボルト・キングがいる。通常は、後衛にコボルト・キングが一体、前衛にハイ・コボルトが数体いる。コボルト・キングは、もはや僕たちには何ら脅威にはならないけど、連携を確認するには良い相手じゃないかな。ハイ・コボルトから倒していき、最後にコボルト・キングを倒すよ」
「連携の確認が目的なら、手裏剣や手刀を使わずに短剣でゆっくり倒そうか?」
「そうだな…、油断は禁物とはいえ、まあ問題はないだろうから、連携を確認しながらゆっくりと倒そうか」
「ん、魔法はどうする?」
「ミーニャとの前衛の連携を確認したいから、魔法はなしで。何かトラブルがあったら補助して」
「了解」
「あの…ちょっといいです?ここまでの戦闘ややりとりを見て、パーティーの実力がかなり分かったのです。そしてメンバー全員の人柄も」
「それで、どう判断したの?」
「はい。リンの不幸は、決してパーティーが未熟なせいでも、誰かに陥れられた訳でもないと分かったのです。みんなごめんなさい」
「いいよ、そんなの!それだけリンのことを大切に思っていたという証拠だよね」
「はい。リンとは幼なじみだと説明したけど、本当はそれだけでないのです。リンとは従兄妹同士で、兄妹のように育ったのです。私が冒険者になるために先に里を出たので、リンは私を追ってきたのかもしれないのです…。ある意味、リンのことは私にも責任が…」
「ミーニャ、私たちも、リンの事は悔やんでも悔やみきれません。でも、きっとリンも、私たちが悲しんでいるばかりではなく、前に進んでいく事を望んでいると思うわ。メンデス…あれを」
「うん、分かっているよ。ミーニャ、これはね、リンの形見の一つなんだ。パーティーみんなが無事でいられるように願を込めて、以前にみんなで揃えたものだ。生命のペンダントといってね、身に着けていると徐々に体力が回復するペンダントなんだ。良かったらミーニャが身に着けてくれないかな?」
「分かったのです。これを身に着け、リンと共に、そしてみんなと共に戦うのです。みんな、改めて宜しくなのです」
「うん、宜しくね」
「じゃあ、連携を確認しつつ、コボルト・キングを片付けちゃいましょうか」「おう!」
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