第29話-2 迷宮攻略
第29章の後半です。迷宮ボスであるヴァンパイア・ロードとの戦い。
第29話-2 迷宮攻略
勢いよく部屋に入ると、それはそこにいた。
高貴な印象の衣装を身に纏い、そこだけは時が止まったかの様な落ち着いた態度で、それでいてどこか蔑んだ目でこちらを見ている。
人の身では決してあり得ない、究極の美を体現しているかの様なその相貌と、それに不釣り合いな青い皮膚の色、突き出た犬歯。
そのすべてが、危険信号を発している。
「みんな、のまれるな!行くぞ!」
「おう!」
レイリアはサイレントの呪文の詠唱を開始した。
サーシャはスリプルの呪文を紡ぎ始めた。
リンはすかさず火炎魔法のスクロールを投擲した。
メンデスは気合いを入れながら、フランベルクで斬りかかっていった。
僕はいつもの様に高速移動しながら、手裏剣で攻撃を開始した。
みんな一斉に攻撃を開始した。
しかし、サイレントの魔法と火炎魔法はレジストされた。
スリプルの呪文は、レジストはされなかったものの、効果を発揮することはなかった。
メンデスは、ヴァンパイア・ロードの攻撃を盾で防ぎながらも、フランベルクで攻撃を加えているが、与えた傷はすぐに癒えてしまい、ヴァンパイア・ロードには少しのダメージを与えることができない。
僕は高速に移動しながら、あらゆる生物の急所である死点、すなわち頭部、頚部、心臓を、順に手裏剣で攻撃したが、いずれの攻撃も致命傷を与えることは出来なかった。
急所への一撃でさえ、ダメージはすぐに回復されてしまった。
ヴァンパイア・ロードは、一見防戦一方となっている様に見えるが、実際は余裕を持って対応している様だ。
レイリアとサーシャは、レジストされる確率の高いデバフや攻撃魔法は諦め、味方の物理や魔法防御力の上がるバフに切り替えた。
リンは、ポーションを用いて、回復役に徹する構えだ。
タンク役のメンデスは、ヴァンパイア・ロードと攻防を繰り返していたが、事態の膠着を恐れ、フランベルクでの攻撃に重点を置く様に切り替えた。
しかし、ヴァンパイア・ロードは、それを見越した様に反撃に転じた。
鋭い爪による攻撃を執拗に繰り出しはじめた。
メンデスはそれを剣や盾で流していたが、ついにその一撃が右腕に掠ってしまった。
わずかに掠っただけのかすり傷であったが、そこから体内へと注入された毒液は、メンデスを麻痺させてしまった。
「くっ、しまった。でもエナジードレインは受けてないだけましか・・・」
エナジードレインは最悪の攻撃なのだ。
レベルを吸い取られると言うことは、身につけたステータスやスキルを奪われることにもなり、精神的なダメージが大きいのだ。
「メンデス、待ってて」
レイリアは、すかさず麻痺を解くべくキュアパラライズの詠唱を始める。
しかし、ヴァンパイア・ロードはその隙をついて、眷属召喚を行い、三体のヴァンパイアを召喚した。
ヴァンパイアも攻撃呪文を得意としている。
ヴァンパイアからの魔法攻撃が後衛に向かうと、一気に危険に陥る危険性がある。
そう判断した僕は、時空間操作スキルを発動すると、三体のヴァンパイアに狙いを定めた。
今では、時空間操作スキルの使用中は、時間の流れは数分の一以下に感じられ、それを2-3分ほど継続できる。
ゆっくりと流れる時間の中で、僕は高速に移動しつつ、順番に、速やかに、手裏剣でヴァンパイアに致命傷を与えていき、ヴァンパイア三体を一気に屠ることに成功した。
その間、リンは状況を確認し、ヴァンパイア・ロードを牽制すべく、火球魔法のスクロールを投擲した。
サーシャも連続で火炎魔法を唱え、牽制に専念している。
ヴァンパイア・ロードは、火炎魔法による攻撃で、ダメージを受けることはなかったが、目の前で爆発を繰り返されることにより、攻撃には移れない様だ。
それでも、爆発の間の一瞬を狙い、アイシクルバレットという氷の弾丸魔法を放ってきた。
アイシクルバレットの飛来とともに、サーシャの魔法防御が発動したが、魔法を防ぎきることはできず、メンデス達にダメージを与えた。
リンは、ダメージの大きかったメンデスとレイリアを、ポーションを使って回復している。
そうしてみんなの踏ん張りにより稼いだ時間で、レイリアの呪文詠唱は完了し、メンデスの麻痺は解除された。
動けるようになると、メンデスはすかさず戦線に戻り、再びタンク役をこなしはじめた。
やはり僕がダメージディーラーになって、倒しきらなければ勝利は難しい。
しかし、単に死点を攻撃するだけでは倒せない。
どうすれば倒せるのか?迷っている時間はない。
僕にできるのは、手裏剣で死点を攻撃することだけだ。
それならば、死点を複数攻撃したらどうか?
僕はステルス・スキルを使いつつ、高速でヴァンパイア・ロードに近づいた。死角に入るために時空間操作スキルを使うのではなく、攻撃直前から使うことで、死点と呼ばれる三カ所を、ほぼ同時に攻撃する作戦に出た。
ゆっくりと流れる時間の中で、相手の攻撃をよけつつ、眉間から深く手裏剣を突き入れ、頚部に斬撃を加えて首をはね、最後に胸部に深く手裏剣を突き入れることに成功した。
三カ所への死点攻撃で、さすがのヴァンパイア・ロードも大きなダメージを受けた。
回復能力も追いつかない様子で、瀕死の状態へと追い詰めることができた。
それでも徐々に頭や首が生え、眉間や胸の傷は閉じ始め、また回復し始めている。
まだ倒し切れてはいない。
僕は右手に魔力をチャージすると、気合いとともにヴァンパイア・ロードの生えつつある頭部を手裏剣で斬りつけた。
それと同時に手裏剣を通して魔力を解放した。
手裏剣の刃と魔力の刃の両方でヴァンパイア・ロードを斬りつけたのだ。
手裏剣の刃はヴァンパイア・ロードの体を切り裂き、魔力の刃は回復能力を封じ込めることに成功した。
この攻撃によって、ようやくヴァンパイア・ロードを倒すことに成功した。
ヴァンパイア・ロードが煙の様に溶け徐々に消失していく、それとともに魔方陣と宝箱が現れた。
リンが早速宝箱の罠を調べている。
「ちょっと待つのです、すぐに開けるのです」
宝箱には、爆発を引き起こす罠のエクスプロージョンがかかっていた。
しかし、リンは罠を作動させることなく解除に成功した。
中には、迷宮攻略の証となる攻略証が入っていた。
「なんだ!これだけ~?」
「まあ良いじゃないか。無事に勝てたし、これでCランク冒険者だ!」
「そうだね、やった~!!」
迷宮の攻略を終えた僕たちのパーティーは、部屋の奥に出現した魔方陣を使い、迷宮外に出てきた。
「さあ、戻ろう!」
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