第26話 ソロ攻略
ソロで迷宮に潜るのは忍者の基本かも…。
第26話 ソロ攻略
第三層の攻略は、順調に進んでいると言って良い。
特に、メンデスがフランベルクという業物の長剣を手に入れてからは、速やかにモンスターを倒すことができるようになって、安定して攻略をすすめることができたのだ。
約三ヶ月間で、僕を除くパーティーメンバーは、レベル8に到達した。
僕はまだレベル7までしか上がっていなかったが、パーティーの足を引っ張るようなことはなかった。
しかし、いよいよ中ボスに挑戦しようという気運が高まってくると、
僕は不安を覚えるのであった。
中ボスであるヴィレントは、高度なステルス能力と暗殺スキルを有し、さらに強大な冷気のブレス攻撃を行ってくる妖魔の一種であり、大きな壁として冒険者に立ちはばかる。
倒しがたい強大なモンスターであるだけに、一抹の不安を覚えたのだ。
「メンデス、明日の休息日に僕はソロで迷宮に潜るよ」
「久しぶりのソロだね。第三層に行くのかい?」
「どうだろうね。アイアン・ゴーレムと戦ってみて、手応えでどうするか決めるよ。アイアン・ゴーレムより第三層のモンスターの方が、経験値が多いと思うからね」
「そうか、…レンのことだから、大丈夫だとは思うけど、十分に気をつけてね。健闘を祈るよ」
「うん、ありがとう」
いつものようにレッド・キーを使い、特殊な扉を開けると、20mほど向こうに第二層のボスであるアイアン・ゴーレムが二体見えた。
アイアン・ゴーレムは一体で出現することが多いのだが、希に二体で出現することがある。
今回は少し運が悪かったのかもしれない。
二体のアイアン・ゴーレムは僕を認識したようだが、今のところこちらに向かってくる様子はなく、微動だにしない。
ここから一歩でも進めば襲いかかってくるのだろう。
僕は魔弾によるスナイプを試みることにした。
その場で片膝を突くと、突き出した右腕を左手で固定し、頭部の魔石に狙いを定めた。
魔弾は不可視のエネルギー弾で、距離があっても威力は落ちない。
頭部の魔石に当てることができれば、一撃で倒すことができるだろう。
相手が動いてこないことを良いことに、じっくり狙いをつけて発射した。
音もなく発射された魔弾は、瞬時に頭部へと到達し、見事に魔石に命中した。
為す術もなもないまま、一体のアイアン・ゴーレムは倒れた。
僕は、残りの一体もスナイプで狙おうかと思ったが、近接戦での手応えを確認しておきたかったので、手裏剣を右手に持ち、前に進んでいくことにした。
僕が一歩進んだところで、アイアン・ゴーレムもこちらに向かって動き出した。
それを見た僕は、アイアン・ゴーレムに向かって、急加速しながら走り出した。
後2mほどに迫ったところで、時空間操作スキルを使った。
そのままアイアン・ゴーレムの右側を通り抜けながら、無防備な右足を手裏剣で切りつけた。
鋼鉄製の武器では傷をつけることも能わないアイアン・ゴーレムであるが、手裏剣は鋭い切れ味を見せた。
まるで抵抗がないかのように、やすやすとダメージを与えることができた。
手裏剣の攻撃力が相手の防御力を上回るなら、動きの緩慢なアイアン・ゴーレムは僕の敵ではなかった。
高速に移動しながら、手裏剣で何度も切りつけ、右足と右腕を切断することに成功した。
アイアン・ゴーレムはほとんど何もできないまま、身動きがとれなくなった。
僕は、相手の動きに注意しながら、頭部の魔石に手裏剣をお見舞いした。
手裏剣という武器を手に入れた僕には、もはやアイアン・ゴーレムは敵ではなかった。
安全にレベリングするのには、アイアン・ゴーレムを周回するのが良い。
しかし、今はもっと自分の力を試したいという気持ちが勝った。
第三層のモンスターに挑んでみることにした。
第三層へと下りる階段を下っていると、下りた先にモンスターの気配を感じた。
ただの勘である。
しかし、ただの勘とはいえ蔑ろにする気はない。
右人差し指の先端に、魔力をチャージしつつ、階段を下りきった。
数m先に巨人が二体いた。
フロスト・ジャイアントだ。
フロスト・ジャイアントは、広範囲のブレス攻撃を仕掛けてくる、厄介な相手だ、それが二体いる。
広範囲のブレスといえど全体攻撃ではない、相手に居場所を知られなければ、何も問題はないと判断した。
僕は、一体のフロスト・ジャイアントに魔弾を撃ち、それに気を取られている隙に、時空間操作スキルを使って死角に入ることに成功した。
フロスト・ジャイアントは、突然の襲撃と獲物を見失ったことで困惑している。
僕はそのまま高速に移動しながら背後に回ると、高く跳躍し、反転しながら天井に両足を着き、重力で落下する前に天井を強く蹴り飛ばした。
蹴り飛ばした初速に重力加速が加わり、すごいスピードでフロスト・ジャイアントの頭部に近づいていく。
フロスト・ジャイアントは僕の動きにまだ気づいていない。
勢いを保ったまま、手裏剣を頭部に突き刺した。
フロスト・ジャイアントの頭部は、その攻撃により完全に破壊された。
僕が一回転しそのまま地面に着地すると、それを見つけたもう一体のフロスト・ジャイアントは、ブレス攻撃を仕掛けてきた。
危ない!それを察知した僕は時空間操作スキルを使用した。
緩慢に感じる時の流れの中で、迫り来るブレスの範囲から逃れるべく、全速力で退避した。
危機一髪、ブレスから逃れることができた。
今度はこちらのターンである。
再び時空間操作スキル使って相手の死角に入ると、背後からフロスト・ジャイアントの両大腿部を切り裂いた。
そのダメージでフロスト・ジャイアントはよろけ、両膝をついた。
今、フロスト・ジャイアントの背部が目の前にある、チャンスだ。
僕は背部から心臓をめがけて、手裏剣を突き入れた。
手応えは十分だ。
手裏剣を引き抜くとともに、大きく後退し、様子を見た。
背部にあいた傷口より、多量の血液が噴出した、心臓が突き破られたのだ。
フロスト・ジャイアントは、何やら叫びながらそのまま力尽き、前に倒れ込んだ。
勝利である、それも危なげない勝利だった。
僕はその後も何度も戦闘を繰り返し、能力鑑定を行った。
レン 人間族 14歳 男
職業 忍者 職業レベル8↑
基礎ステータス
力 20、知性 19↑、信仰心 18↑、生命力 19↑、体力 19↑、敏捷性 2、幸運 18、器用さ 20↑
職業スキル
ステルス レベル7↑、遠見の術 レベル4↑、暗視 レベル7↑、
気配察知 レベル6↑、状態異常抵抗 レベル4、暗殺 レベル7↑、
投擲 レベル7↑
固有スキル
時空間操作 レベル6、魔力操作 レベル7↑
生活魔法
火属性 レベル5、水属性 レベル5、風属性 レベル5↑
土属性 レベル5↑、精神属性 レベル5↑
その他 攻撃魔法適正なし
能力鑑定の結果、僕のレベルは、みんなと同じ8になった。
しかし、レベル8になっても、広範囲を攻撃するスキルを得ることはできなかった。
生活魔法の風属性と水属性がともにレベル5になったことから、クリーン・アップの呪文を覚えた。
これは、体や衣服の汚れや細菌などを除去する生活魔法で、手刀や手裏剣で攻撃する僕には、とてもありがたい魔法だ。
万が一返り血を浴びても、一瞬で綺麗にできるのだ。
これで、迷宮内で異臭を漂わせる心配もなくなり、みんなに迷惑をかけずにすむのだ。
まあだからといって、宿泊施設に戻ってからのシャワーが要らないというわけではないのだが。
また生活魔法の精神属性がレベル5になったことから、スリープの魔法を覚えることができた。
この生活魔法は、自分にも他人にもかけることのできる魔法で、速やかに眠りに誘うことができるものだ。
自分自身にかけた場合、術者自身が眠るので、術者のコントロールからはずれ、通常の眠りと同様になる。
他人にかけた場合は、術者がコントロールすることで、眠りの深度や時間を制御することができる。
但し、この呪文も詠唱時間が長くかかり、戦闘時の使用は難しい。
日常生活での使用や、迷宮内ではキャンプを張ったときに使う魔法である。
みんなのレベルに追いついたことを確認すると、ソロでの攻略ここまでとし、迷宮を後にするのであった。
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それにしてもなかなかPVが増えませんね。アドバイスやご意見をお待ちしております。よろしくお願いします。