第27話 ヴィレント
中ボスとの戦闘です。
第27話 ヴィレント
僕たちのパーティーは、第三層の中ボスに挑むべく、迷宮に来ていた。
第三層に入ってすぐ右手にあるダークゾーンの中の一つの扉は、いくつも続く小部屋へとつながっており、その小部屋の一つから、長い通路へと出ることができた。
この通路を左手に進んでいくと、この通路はどうやら渦巻き状に時計回りに続いている様子で、渦の中心といえる部分に何かいる予感を誰もが抱いた。
「この先は危険だと僕の予感が告げているね」とメンデス。
「ん、でも行くしかない」とサーシャ。
「私たちの呪文にはまだ余裕があるわ」とレイリア。
「メンデス、この先の情報はないの?」と僕。
「以前にこの迷宮に来たときには、ここには来なかったんだ。だから詳しいことは分からない。知っていたらちゃんと話してるよ」
「それはそうだね。じゃあ情報はないのか…」
「心配か、レン?」
「うん、メンデスじゃないけど、危険な香りがプンプンしているね」
「でも攻略するには進むしかないよ。ここに中ボスがいるのかもしれない。いつかは越えなければならない壁だね。今がその時じゃないかな?」
「わかった。元々そのつもりだったしね。中ボスはヴィレントだったね?」
「そうだよ。危険なモンスターだ。僕も戦ったことはないけどね」
それから僕たちのパーティーはもうしばらく通路を進んでいった。
渦巻きの中心部にかなり近づいたとき、リンが手で僕たちを静止させた。
「この角を曲がって進むと中心部に着くのです」とリン。
「みんな準備は大丈夫かな?…では行くよ!」
メンデスの指示に従い、僕たちは角を曲がって、渦の中心部を確認できる位置までやって来た。
何もいない。
危険な雰囲気は充満しているのに、モンスターは見当たらない。
「気を抜いては駄目だ、きっと何かいるぞ!」僕は気配察知能力を全開にした。
ようやくここに至って、気配を消しながら音もなく高速で動き回っているモンスターを認識した。
「高速移動しながら隠れているぞ!このままでは捉えきれない。サーシャ、中心部に向かって範囲魔法を!」
「ん、了解。ヴィーダ・スーン・フェリマス・カイト、魔力よ、空に満ちて敵を切り裂け!ウインドカッター!」
目に見えない無数の風の刃が中心部に向かって一斉に放たれる。
高速移動しつつ隠れていても、広範囲をカバーするこの刃からは逃れることができない。
ウインドカッターはヴィレントを捉えていた。
大きなダメージを与えることはできなかったが、動きを鈍らせることには成功した。
ダメージを受けたヴィレントは、高速移動をやめ、片手で天井にぶら下がる様に止まると、今度は大きく口を開け、ブレス攻撃を仕掛けようとしている。
ヴィレントのブレス攻撃は、広範囲の冷気による攻撃で、フロスト・ジャイアントのブレスをも上回る凶悪なものである。
但し、ブレスの威力はヴィレントの体力依存しており、体力を削ることで、威力を減じることができる。
遠距離攻撃ができる僕とサーシャは、ブレスを吐かれる前にそれぞれに攻撃を仕掛けた。
僕は手裏剣を投擲し、サーシャは詠唱の短い火球の呪文を素早く唱えたのだ。
ブレス攻撃を仕掛けようとしていたヴィレントは、避けることができずにダメージを受けている。
しかし、そんなことはお構いなしとでもいう様に、ブレス攻撃を僕たちに浴びせてきた。
すさまじい威力の冷気が僕たちをおそってきた。
もしヴィレントの体力を削っていなければ、倒される者もいたかもしれない。
しかし、パーティーメンバーはかなりのダメージを受けてはいるが、幸いなことに、動けなくなった者はいない。
「みんな大丈夫か?レイリアとリンは回復を頼む!レンとサーシャはもう一度攻撃を。少しでも体力を削るんだ!」
僕は、すでに手に戻ってきていた手裏剣を、今度はヴィレントの腕をめがけて投擲した。
ヴィレントは左手一本で、天井にぶら下がっていた。
天井との唯一の接点である腕を攻撃することにより、ダメージを与える確率を上げることができ、もしダメージを与えられなくとも、床に下りてくる様に仕向けたのだ。
目論見通り手裏剣はヴィレントにダメージを与え、天井から落下してきた。
一方、サーシャは、ヴィレントに魔法抵抗がないことを見抜いていた。
相手からのダメージを減らすには、状態異常も有効な手段である。
サーシャは、今度は火球魔法ではなく、同じく詠唱の短いスリプルの魔法を唱えた。
スリプルの呪文は、床に落ちてくるヴィレントを確実に捉え、睡眠へと誘うことに成功した。
睡眠という状態異常は、抵抗されなければ効きやすいという特徴があるが、一方で、ダメージにより容易に解除されるという側面を持っている。
「チャンスだ!目覚める前に一気にやっつけるよ」
ヴィレントの落下とともに走り出していたメンデスは、無数の突きを瞬時にたたき込む、得意技の流星剣を放った。
その間に僕は、時空間操作スキルとともにヴィレントの背後の位置にまわり、メンデスの攻撃で仕留められなかったときのために準備しておく。
メンデスの流星剣は大きなダメージを与えたものの、倒しきれず、ヴィレントは眠りから覚め、起き上がろうとしている。
僕は、すかさず背後より手裏剣で首を攻撃し、頭部をはねることに成功した。
「やった!みんなよく頑張った!」
「とても良いコンビネーションでした」
パーティーは、ブレス攻撃により大きなダメージを受けた。
しかしそれでも、誰も倒されることなく勝利したことは、求めうる最上の結果と言って良い。
パーティーメンバーがお互いをたたえ合っていると、ヴィレントは煙の様に消え去り、そこにラストキーが残っていた。
迷宮攻略の最後のアイテムであるラストキーを手に入れた僕たちのパーティーは、今日の探索は終了し、マーリンに戻ることにした。
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