序章 がしゃどくろの談
──許すまいぞ、決して許すまいぞ。
恨み骨髄に徹するとはよく言ったものだ。
骨の髄にまで染み込めば、忘れたくとも忘れられなくなる。
骨髄に詰まっているのは怨みだけではない。
忘却の果てに打ち捨てられたことへの恨み、置き去りにされて水底に沈められたことへの憎しみ、誰もが顧みようとしてくれなかったことへの辛み。
何より骨髄を沸かせるのは怒り──奴の浅ましさに対する怒りだ。
先祖代々の土地を売って水の底に沈めただけでは飽き足らず、その地に眠る我々を見捨てたのだ。
我等を地の底に鎮めたまま──私を亡き者にしたままでだ。
──忘れまいぞ、決して忘れまいぞ。
ありとあらゆる薄暗い感情が、骨の内側へと浸透していくのがわかる。
はらわたが残っていれば煮えくり返っただろう。
脳髄が残っていれば煩悶としただろう。
しかし、それらは皮や肉と共に腐れてしまった。
この水底の汚泥に飲まれ、澱んだ泥流に押し流されてしまったか……。
今の我等は骨──腐り果てることのない骨でしかない。
その内に巡るのは恨み、憎しみ、悲しみ──そして怒り。
どうやらその怒りが骨の隅々にまで行き渡ったようだ。
肉も筋も失った骨だけの総身に力が漲る。新たな躍動を感じ取れた。
ゆっくりと湖底から身を起こす。
見上げると水面の瞬きが満天の星のように煌めいている。
その息を飲むような美しさに感動する心はもう残っていない。
それはあまりにも人間がましい。
今の我等はただの骨──行き場のない怒りで満たされた骨なのだ。
「……われぇはぁぁ……ほねぇぇぇ……ぼぉぉぉねぇぇぇぇ……」




