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第15話 敵は騎士団

 進む私たちは地下迷宮の把握が出来ていない。その所為だろう、同じ場所をグルグル回っている。

 ここで私は思った。隣の鼻歌を歌っている軍人だが、ここは一応ネイビーポート05の敷地内だ。

 何で内部事情を把握していないのだろうか。


「ここは一応、俺達海軍は立ち入り禁止区域だったんだ」

「え? どうして? ここは海軍の敷地内でしょ?」

「そうなんだがな、遺跡調査を請け負ったのは騎士団なんだ」


 騎士団が? 一応騎士団は軍属だけど、何かあるのだろうか。


「聞くと、ヤバい魔導回路があるみたいでな」


 ここでもか。此間は第6私設部隊隊長と言ってたな。


「ねぇ、黒魔術のヘルファイアって知ってる?」

「ヘルファイア……黒魔術」


 少し考えるようにし、パトリックは思い出した様に私を見る。


「ああ、報告書で見た事があるな。高位の魔法の使い手だとか。元は軍人だ」

「元? どこの」

「東の大国。アルバード帝国さ」


 まだアルバードは行った事が無いな。もしかしたら、帰る為の方法探しで行くかも。


「しかし、一向に出口も何も見えないな……」

「うん。目印も無いし。ここ、本当に騎士団が調査したの?」

「ああ、ゴーレム襲撃の1日前にな」

「騎士団はどうしたの?」

「帰ったよ。そそくさとな」


 何とも腑に落ちない。と言ってみるとパトリックは私を見た。

 どうやら同じ意見らしい。 

 ゴーレム襲撃は昨日。聞くと、海軍基地に直接殴り込みに来たらしく、追撃隊はここに落とされた。


「あまり考えたくはないが……その魔導回路を狙って騎士団が」


 少し考え始めたパトリック。かなり真剣な表情だ。

 騎士団の手際の良さから言えば当然と思うけど。


「まぁ進んでみようよ。まだ仲間が居る可能性があるんでしょ?」

「ああ。そうだな。さっさと出て君とデートだ」


 抜いた剣に炎をエンチャントさせ、切っ先をパトリックに向ける。


「ねぇ。刺すよ?」

「すんません」


 まったく、と私が息を吐いた直後だった。

 何かが崩れる音がし、次の瞬間には横の壁が吹き飛び、巨大な腕が伸びた。

 私が動く前にパトリックは私を担いで回避してくれ、助かった。

 見ると、壁に穴が開き光が差し込んでいる。


「ねぇ、こっから逃げられない?」

「そう簡単に行くか?」


 日の差し込む箇所からはゴーレムが姿を現す。目は赤に光っている。


「このゴーレム。あたしをここに落とした奴と違う」

「何だと!?」


 パトリックが驚くと、ゴーレムは私たちに気付いた。


「つまりアレか? このゴーレムはお前が見た2体目って事か?」

「イエス」

「マジかよ!」


 取りあえず、私は降ろしてもらいゴーレムへの攻撃を開始しようとするが、パトリックに止められる。


「風魔法が使えるなら逃げるぞ。視界が悪い」


 そりゃそーだ。仕方ないか。私は回路を起動させ、風魔法を発動させ光の方向へ飛び、地表が迫った。

 出られた、と思い木の上まで行き周囲を確かめると、海軍基地に戦車数台が砲撃している。

 森や基地からは黒い煙が上がっている。

 海に駆逐艦はいない。

 いや、それどころじゃない。 

 ミルフィとカノンは?

 最悪の状況が浮かんだが、あり得ない。2人は女の子だけどタフだ。

 簡単には。

 

「アキハさん!」


 聞き覚えのある声。下の方から聞こえ、見るとカノンだ。

 私はカノンの前に降りる。


「よかったぁ。カノンが無事で」

「私も安心しました。でも、ミルフィと逸れて」

「ウソ。一緒じゃないの?」

「はい、ゴーレム襲撃のどさくさで」

「カノン! ミルフィを探そう!」


 はい、とカノンは返事をし武器を構える。

 いつもの凶悪なブレード。

 しかし、パトリックが上がって来ない。

 穴に近づき「おーい」と呼んでみる。

 するとパトリックが風魔法で上がってくる。


「アキハ、ありゃとんだこけおどしだぜ。あのゴーレム。ただの泥人形だ」

「泥人形?」


 カノンが聞き返した。神妙な顔をしている。


「ああ、攻撃したら一発でバラバラだ。おかげで」


 パトリックは弓を持った手で軍服を掴む。「ドロドロだ」


「あ、違う。お願いパトリック。力を貸して」


 私の真剣さが通じたのかパトリックは真剣な顔だ。


「どうした」

「私の仲間が居なくなっちゃって。一緒に探して」

「分かった。だったら俺からもだ、俺の仲間も一緒に探してほしい」


 承諾し、私たち3人は結託。取り敢えずは基地の様子を知らせた。

 カノン、パトリックの意見は同じだった。

 基地を襲う戦車隊はおそらく銀翼の騎士団。

 つまり、下手をすれば騎士団と敵対するかもしれない。


「でも、やらないわけにはいきません。アキハさん。海軍基地に落ち度はない筈。おかしいのは騎士団です」


 言ったカノンはやる気だ。

 しかしそれはパトリックも一緒だ。


「じゃあ、まずは基地に行こう」


 


 戦車隊が停まっているのは基地正門前。

 騎士団であろう銀の甲冑の数人が、捕まえたであろう基地の人間、捕虜を一か所に集めている。

 怒声が聞こえると、騎士団員は捕虜を剣の柄で殴った。


 私たち3人は正門が見える草むらの陰に居た。

 こんな時思う。私の居た世界だったら、体温とか音に反応するソレでばれるんだろうなって。

 映画で見たから。


「貴様、どこの所属だ」


 騎士団員の1人のくぐもった声が聞こえたので、そこを見ると武器を取り上げられたミルフィが居た。

 怖いのだろう怯えている。

 私は無意識に唇を噛んでいた。

 そんな私の肩にパトリックは手を置く。


「感情的になるな」と声が聞こえてきそうだ。


「答えろ!」と大声が聞こえる。私たちやミルフィはまだ少女だ。捕虜の軍人たちは「おい、まだ子供だぞ」と言うが殴られ、黙らせられる。

「答えんかぁ!」


 さらに大きな声に、ミルフィは肩をビクつかせた。見かねたであろう騎士団員はミルフィの腹を殴り、抜いた剣の柄でミルフィの頭を殴った。

 かなり鈍い音がし、少しの血が落ち、ミルフィは倒れた。

 限界だ。


 私は剣を抜き、回路を作動させ、風魔法で飛ぶとミルフィを殴った騎士団員を後ろから斬る。

 しかし、甲冑は伊達ではない。

 甲冑には魔法的な防御も施されている。ちょっとやそっとじゃ壊れないみたいだ。

 これを知っていたからこそ、カノンもパトリックも動かなかった、と考えると随分自分はバカなんだな。と思い知らされた。

 私に気付いた騎士団員は振り向き、剣を振り上げている。


 ―――ああ、馬鹿だな私


 斬られた、と思ったのだけれど、騎士団員の腕は何かに刎ねられた。

 振り向くと、パトリックが弓を構え、次の矢を装填している。


「止まるな!」


 パトリックからの私に向けての言葉。直後に草むらからカノンが飛び出し、私に迫っていた騎士団員の首にブレードを刺し、空中で一回転きりもみし、着地。

 何て身体能力。


「アキハさん! 甲冑にも隙間はあります!」


 頷くと、近くに団員が迫った事に気付いた。迫った剣を構えた剣で防ぐと、私は衝撃で手が痺れた。

 かなりのパワーだ。


「ガキどもが!」


 聞こえたくぐもった声。私は回路を起動させ、炎魔法を発動させる。

 剣の切っ先を甲冑の首の隙間に向けると、炎の刃が伸び首を焼切る。

 肉の焼ける嫌な臭いと嫌な悲鳴。

 すぐに魔法を解き、次の敵に向かおうとするが、既に片付いた後。


「ミルフィ!」


 倒れているミルフィに駆け寄る。

 片方のこめかみから血が出ている。私は治癒魔法は習っていない。

 とりあえず抱き起すとかなり痛そうにしている。


「あ、アキハ……無事だった」


 かなり弱弱しいミルフィの声。カノンとパトリックは戦車の搭乗員を無力化して、捕虜を解放した。


「ねぇ、誰か治癒魔法使える人は!」


 私が聞くが、誰も使えないらしい。一先ずはファーストエイドキットを求めたが、基地は壊滅していて無いらしい。

 ミルフィは予想以上に出血が多い。顔色も悪い。

 どうしよう、と思っていると、ミルフィの傷口に手が当てられる。


「治癒は精霊の力を使うんだ。意識を集中し、精霊を召喚する」


 聞き覚えのある声だが、恰好はかなり変わっている。 

 ライラさんだ。

 ライラさんは、少し詠唱し、紋章を出現させ、それを傷口に当てると傷口が塞がる。


「凄い」と私は言うとライラさんは目をこっちに向けた。

「アキハ。悪い、遅れたな」

「いえ。来てくれて助かりました」


 言うと、ミルフィは頭を押さえながら立ち上がる。


「うぅー。何か頭がガンガンする」

「ミルフィ殴られたじゃん」


 取りあえず言ってみるとミルフィは辺りを見る。

 死体だらけ。


「わああああ! お化け! 死体!」


 叫び始めると私に抱き着いてきた。

 本当にこういう子は可愛いなぁー。


「しかしだアキハ。どういう事なんだ。何でお前たちは騎士団と敵対しているんだ?」


 事情を把握していないであろうライラさんの問いは仕方がない。


「いえ、今は女王陛下の依頼中なんです。ゴーレム討伐の。でも、この一連の流れは騎士団が原因の可能性が高くて」

「そうか……まぁ、私はアキハのパーティーだ」


 背中に背負った薙刀は、装飾が行き届いている。


「お前たちが敵対するなら、それは私の敵でもある」


 この人カッコいいなー。

 でも、どうやってここまで来たんだろう。


「ああ、風魔法で水面を滑って来たんだ。長距離だったから割と怖かった」


 とんでもない事したなこの人。

 まぁ、何はともあれ戦力は揃った。

 私の横に立ったパトリックを見る。


「海軍は戦闘準備完了だ。戦車もゲットしたしな」


 カノンを見る。戦闘意欲満々だ。


「ゴーレムの術者は騎士団の人間、でいいのかな」

「はい。違いないと思います」


 答えたカノン。海軍の軍人も頷いている。

 なれば、決まりだ。


「ねぇ、2班に分けよう」

「2班?」


 ライラさんが聞き返す。


「ゴーレム討伐班と術者討伐班か?」とパトリック。

「うん。どうかな」

「いいと思います。術者が居れば戦車は無意味です。戦車砲はゴーレムに有効かもしれません」 


 カノンが言うとパトリックは班を振り分けた。

  

「じゃあ、俺とアキハのパーティが術者討伐。他はゴーレムと俺達の邪魔になる魔物の討伐だ」


 構わないか? と確認の視線だ。私は頷き剣を抜く。

 進は島の奥地。密林を抜けた先だ。

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