第14話 迷宮の中で
とんでもない位の痛みを後頭部に覚え、私は目を開ける。さっきまでを思い出す。
女王陛下の依頼
ネイビーポート05調査任務
魔物襲撃
ゴーレム襲来
落下
ああ。落ちたんだ。通りで。私はすぐに炎魔法を発動。辺りにファイアウィップで火を放つ。そのままランプを取り出し灯りを灯す。
絵にかいたような迷宮通路。
「どうしよ」
携帯ないからなー。ってか電波すらないし携帯あっても無意味なんだけど。
まぁ止まっていてもしょうがない。取り敢えず進もう。
と私は進む事にした。
いやー。ミルフィだったら怖がってただろうな。一人だと。
進む事数十分ほどだろうか、私は何だかだだっ広いドーム状の区画に着いた。
見渡すがランプの灯せる範囲は限られている。視界は悪い。なれば魔法で視界を広げよう。
私は剣を抜き、ファイアウィップを使用しようとすると右の方から瓦礫の動く音がする。
魔物? ……もしかしたら軍人?
だが何にせよ剣は抜いたまま、炎をエンチャントさせる。
「ちょ、ちょっと! 待って待って俺ローゼンバーグの軍人!」
そう声がし、私は力を抜く。するとランプの照らす範囲に長い青髪の若い男が両手を上げ出て来る。
「……マジで軍人?」
「マジマジ。ほら証明書」
そう言って男は紙切れを渡して来た。受け取る。
ローゼンバーグ海軍・陸戦部隊所属 パトリック・ラフィルス
「な? ほら俺軍人。オッケー?」
「分かりました。あ、他の軍人の人は?」
「え? 君ここに来るまでに誰かに会ってないの?」
「会ってないよ。じゃああんた一人?」
「そうだが……タメ口?」
あ、キャラ的にタメ口使ってた。
「なんかあんまり気にしなさそうなので、ダメ?」
「んー……デートしてくれる?」
「すいません。敬語を使います」
「ちょ! 冗談冗談タメ口でいいから!」
全く。なんて軽い人だ。でも1人で居るよりかは遥かに良い。賑やかだから。
「よし! 他の奴を探しに行こう……あれ? 君すげえ可愛い」
初めて言われた可愛いなんて。この人美的感覚が狂っているんだろうな。
でも危険なので取り敢えず炎をエンチャントした剣を向ける。
「あの、焼き殺しますよ?」
「参った。よし、真面目に行こう。俺はあの東の入り口から来た、君は南。残るは北と西。どっちに行く?」
北と西。どっちがいいんだろう。まぁ困ったらあれに頼ろう。
「ちょっと待って」
私は言うと剣のエンチャントを解き、剣を地面に立て、手を離す。すると剣は西に倒れる。
「よし、西に行こう」
「君ってユニークだな」
「そう? 初めて言われた」
取りあえず、西に行く事にし、入口へ向かう。
「君は何かに所属してるのか?」
通路を歩く中、聞かれたのでイェーガーに所属している事を言うとパトリックは驚いた。
「すごいな。あのギルドに……ここにはどうやって? ギルドの人間でも入れない筈だぜ。一応軍施設だから」
「任務なの。女王陛下直々の」
「マジ? 君何者?」
「聞きたい?」
「え? 何かあんの? すっげえ聞きたい」
とパトリックが顔を向けると私は目だけを向ける。それと同時、何かが凄い勢いで前から来ている。足音は人間のモノではない。
「魔物だ。戦えるか?」
「当然。舐めないでよ」
私たちは同時に武器を抜く。私は剣。パトリックも同じように剣一本。
「まず俺が視界を開く」
その言葉と同時にパトリックは剣を振り上げる。ファイアウィップだ。私のモノよりも強力だ。
視界は一気にはれ、魔物の姿が見えるようになる。
良く知る魔物。ゴブリンだ。何体いるんだろう。20以上?
「ビビるなよ」
「ビビんない!」
私は氷魔法を発動させ、槍を形成させ、風魔法で前方へ飛ばし、先方の数体を串刺しにする。
しかしその間にパトリックは炎魔法系列の火焔魔法を使用し、十数のゴブリンを丸焼きにする。
強い。負けていられない。
と思った矢先、パトリックは一振りで残りを全滅させた。
喋る感じ、見た目からは想像できない強さ。軍人となるとこのレベルなのか。と感心した。
「あんたすごいじゃん。流石軍人」
本当に凄いので称賛したのだが、パトリックは膝を付き、腰を抑える。
「ど、どうしたの!? まさか、何か攻撃が!」
しかし、そんな気配は無かった。何か、まさかゴーレムの術者
「いや、ただの腰痛だ」
心配した私が馬鹿だった。
「いやな、俺は剣術が苦手でな。しかし手持ちはこの剣一本。そして隣には可愛い女の子。美少女だ。色男として良い所見せたいだろ?」
取りあえず私は痛んでいるであろう腰を鞘で叩く。
「お前! 痛いってマジで! 鬼! 悪魔!」
「あんた役に立たないじゃん! 一回の戦闘で腰痛めるって!」
「しかたねぇだろ! 俺は弓矢が専門なんだよ!」
「だったら持って来てよ!」
「こないだ晩飯のカレー零して汚かったから置いてきたよ!」
「最悪! どうすんのよ! 置いてくよ!」
「おい! それはねぇだろ!」
「ねぇだろじゃないでしょ! あんた足手まといじゃん!」
とここで私たちは「はぁはぁ」と肩で息をする。
言い合いは疲れる。意外に。
何て無駄に体力を消費したんだろう。
言い合いはここまで、取りあえず。この男をどうするかだ。
「じゃああんたどうすんの? あたし男一人担いで戦うなんて出来ないけど」
「参ったな……あれ?」
パトリックは奥に何かを見つける。私も見る。
「にゃー」
ネコだった。そのネコは真っ白。可愛いネコなのだが、弓を咥え、矢筒を背負っている。
何て都合の良いネコなんだろう。
「弓矢あるじゃん」
「あ、しかもあれ俺のだぜ」
「は? 置いてきたんじゃないの?」
「いや、あのネコ基地で飼ってるんだよ。可愛いだろ? 名前はゴンザレスってんだ」
名前が全く可愛くない。しかしこの猫が都合よく武器を運んで来てくれたおかげで助かった。
「よし、剣さえ使わなければ腰は痛くない。さぁ、行くぞ……ところで君、名前なんての?」
そう言えば教えていなかった。私は呆れ気味にため息を吐く。
「サクラバアキハ。それが私の名前」
「変わった名前だな……まぁいいや。行こうぜアキハ。あぁッ!?」
「どうしたの!」
「すまん。尿意を我慢していた」
「さいってぇー」
私は言うと後ろを向く。すると嫌な水音が聞こえ「あーすっきり」とパトリックの声が聞こえる。
本当に最悪だ。
「さぁ。行こうぜ」
何でそんなスッキリした顔してんのよ。
私は大きくため息を吐いた。




