第10話 王都貿易商・ライラ・マーシャルからの依頼
とりあえず、展開をブラックにしたい。
シスターライラの釣って来た巨大魚は、シスター達の手により数々の料理に変えられた。しかし、それは物の数分ですべて消えた。
シスターたちの食欲とミルフィの食欲が凄かったからだ。
そして、食べ終えた私、カノン、ミルフィはシスターライラに湖へ案内された。
「申し訳ございません。食事後すぐにこのような場所へ。実は、あなた方にお頼みしたい事が」
何故、頼んで来るかと言えば、さっき私たちはイェーガーに所属している事を教えたからだ。
「正式なモノではありませんが、依頼と捉えて頂いて構いません。報酬はしっかりとお支払いたします」
まだ内容を聞いていないのだけれど、と思っているとカノンが
「ああっ!!!」
突然叫び、シスターライラは驚いた。
「思い出しました! 週刊ローゼン通信で見ました! 貿易の記事で見たんですよ。王都貿易商のライラ・マーシャルさん!」
カノンが言い終えると、何かライラさんは諦めたようにため息を吐く。
「あの……隠してたみたいですが、別に隠す必要は無いんじゃないですか? 貿易であるなら」
私が続けようとすると、ライラさんは「貿易内容が特殊なのよ」と口調を変えた。
「はぁ、ったく。あの雑誌さ、マジで人の後ろヘコヘコ着いてきやがってよ」
変わった、と言うより豹変の方が良いかもしれない。
「な、なぁ。その貿易内容ってのは?」
ミルフィが聞くと、ライラさんはタバコを取り出し咥え
「主に軍需産業だよ」
と言うと火を点けた。
マジで変わりすぎですよ。
「ローゼンバーグ・王室陸軍所属、銀翼の騎士団には新型戦車。王室海軍艦隊には新型駆逐艦に巡洋艦……どれもシスターが貿易するもんじゃないだろ?」
「だったら何でそんなモノを?」
私が聞くと、ライラさんは煙を交えたため息を吐いた。
「いやな、軍事部門に強いミハエル重工の社長との取引に何か成功しちまって……そっからそのコネで王室の依頼を受けもう買わされて買わされて」
「お金は?」
「王室から出た。あたしの金じゃあんな化け物みたいな兵器は買えないさ」
成程、とカノンが言うと私は「では、依頼の方。良いですか?」と聞く。
「ああ、その事だったな。実は最近この修道院でおかしな出来事が起きててな」
「おかしな事?」
「そ、おかしな事。出ない筈の魔物が出るんだよ」
魔物には詳しくないが、まぁ出るとしたらゴブリンや寒さに強い奴だろう。
しかし、出ない筈の魔物?
「まぁ、あたし自身初めて見たんだが……言えば悪霊、と言うべきか」
ライラさんが言葉を探していると「スケルトンじゃないですか?」と言うと「それだ!」とライラさんは納得。
「スケルトンは思念体、と言うべきか、明確な意思を持った魂が骸骨に憑りつく事で動き出す魔物だ。しかし、悪霊系の魔物であるスケルトンは修道院周辺に出没する事は出来ないんだ」
「何でだ?」
ミルフィが聞く。
「修道院は一応は神聖な場所で、周辺には加護を受けた護符を張っているから悪意を持った霊は近づけないんです」
「へぇ、お前良く知ってんじゃないか。勤勉だな」
答えたカノンにライラさんが言った。
顎に手を当て感心している。
「まぁ、この娘の説明した通りだ。この修道院にスケルトンが出るんだ。私がさっき出かけてたのは護符を張り直してたんだ」
成程ね。でも、何で護符は剥がれたんだろう。
接着剤の質が悪いのだろうか?
「そん時だよ。スケルトンに狂暴化したゴブリンに遭遇してな、マジでビビった」
狂暴化、に私たち3人は反応し、顔を見合わせた。
まさか? ここでも魔術回路が関わっているのかな?
「アキハさん。また回路でしょうか?」
「あり得るね」
私とカノンのやり取りを聞いて「回路とは?」とライラさんに聞かれた。
まぁ、護符にも影響が出ている以上教えなければならないだろう。と思うとミルフィが説明してくれた。
「神話のソレと似た現象だな」
聞いたライラさんは言った。
「嫌な予感がする。……チェックしてない護符は残り2つだ。あんた達に任せようかと思ったが、同行する」
と言うとライラさんは地面にしゃがみ、出ていた紐を引っ張ると棺桶が地面から飛び出し、その蓋をライラさんは開け、中から装飾の行き届いた薙刀を取り出す。
「安心しろ、戦闘経験はこれでも豊富だ」
タバコを吐き捨てライラさんは言うと私たちを見る。
着いて行っても良いか? の確認だろう。
「じゃあ、行きましょうか。護符を張り直しに」
そう私が言うとカノン、ミルフィは頷き笑みを浮かべる。




