第9話 サムエル修道院のシスターライラ
とりあえず修道院を出しました。
結構北へ進んで来たであろうその場所は、山を登った先の湖の湖畔にあるサムエル修道院。
別に来たかった訳ではない。ただ、進んでいたら着いただけ。
「へぇ、修道院か」
私がそう呟くと、修道院の入り口が開き、修道女たちが外へ出た。
「ねぇ、修道院って何をするの?」
ミルフィが聞くとカノンは目だけを向ける。
「修道院は主に修練。といっても修練は回復魔法の習得などです。他には農作物を育てたり、孤児院として機能したりですね」
多種多様な事をするんだな。と思い私は修道女たちを見る。
彼女たちは何故か釣竿を取り出し、全員で水辺に並び釣竿を垂らしている。
シュール過ぎる。
だって、修道女たちが並んでるんだよ。恰好はシスターだよ。
と、思っていると
「あら? 旅の方々?」
若い女性の声に後ろから呼びかけられた。
振り向くと、若いシスターであろう女性は
身の丈の2倍はある巨大魚を背中に背負っている。
そして笑顔。凄く綺麗な女性だ。
私より1つ、2つしか変わらないだろう。
「旅の方々であって、先に進むという事で余裕があるのであれば修道院に寄って行きませんか?」
まぁ、そんなに急いではいない。
カノンもミルフィも寄ろうぜ。と言わんばかりの目線。
ま、いっか。
「まぁ、流石シスター・ライラですわ。これだけ巨大な魚を」
「本当。これだけ大きいと食べごたえもありそうですわ」
うふふふふふ。
とシスター達は頬に手を当て、頬を朱に染めうっとりとしている。
シスター・ライラとはあの声を掛けてくれた女性の事だ。
しかしよく見るとここのシスターはライラと呼ばれた女性より年上は居ないようだ。
皆中学生くらいかな?
「さぁ、皆さん。旅の方々へおもてなしを。とびっきりのご馳走を用意いたしましょう」
「はい!」
シスター・ライラの言葉に修道女たちは頷くと厨房へ走る。
そんなに慌てなくても……
「ああ! この魚まだ生きてますわ!」
「お待ちになって! 今すぐこの魚を昇天させますわ!」
聞こえる物騒な声と魚が跳ねる音。魚が跳ねる音はズドン。と刃物が振り下ろされる音の直後消え
「やりましたわ!」
「さぁ、すぐに捌いて料理しますわ」
の声が聞こえた。
「あらあら……申し訳ございません。皆さん乱暴でして」
困った様な表情のシスターライラに言われ、私たちは首を横にブンブンと振った。
凄く怖い。この修道院。
「騒がしくないですか?」
「賑やかなくらいが丁度良いです」
ガッツポーズのミルフィが即答。
マジでビビってんだろうなぁ。
流石にカノンも怯えているだろう。と思い見る。カノンは何か腑に落ちない顔をしている。
「あら? ゴスロリの方……ご気分でも優れませんか?」
心配そうな顔のシスターライラに聞かれ、カノンは「いえ」と答えるとシスターライラに一歩踏み出る。
「シスターライラさん。失礼かもしれませんが……私、どこかで貴女とお会いした事があるような」
カノンが言うと「新手のナンパですか?」とミルフィが呟く。
一方、シスターライラは顔を真っ青にし
「も、もういけませんよ? 麗しい方とは思いますがその様に誘惑されるとは……お、オホホホホホホ!」
すっごく動揺してる。
一体全体どうしたんだ? 女性に誘われるのがそんなに嫌なのだろうか。
「いえ……シスターライラ、ライラ。どこかで接点が」
「あ、ああ! お飲み物は如何ですか? 美味しいココアが御座いますよ!」
その動揺っぷりに私とミルフィは頷く。相変わらずカノンはうーん。と唸りながら考えこんでいる。
正直、私とミルフィは付いて行けないので、大人しくしていた。
「週刊ローゼン通信だっけ?」
「ココアが入りましたぁッ!!」
どうやら、知られたくない事があるらしい。




