第29話 花魁、スーパーへ行く
「じゃあ、行こうかね。まだ二月だ。今年は雪は降らないから足下の心配はないが、その履物だ。段差とかがあるから気を付けておくれよ」
店の奥に消えたレイチェルが黒いストールを頭に巻き、大きなサングラスで顔を隠して現れ、店の奥から持ってきた毛皮のコートを着るのを見てお蔦は驚いた。
「随分とハイカラな身なりになっちまって……ゲルパルトの映画女優が出てきたのかと思ったよ……本当にアンタは元スパイ……ああ、スパイって言うのは色仕掛けで相手の国のお偉いさんをころりとだますのが仕事だって新さんも言ってたからね。だったらその姿も納得だ。ただし、映画で主人公の洋風のかっこいいスパイを騙すのがアンタみたいなスパイの仕事だろ?それが正直アンタの旦那の見てくれは……そもそもあのデブとなんでアンタがそんな仲になったんだい?同じ境遇で意気投合したって言うけど、東和で戦争があったなんて話はアタシは聞いたことが無いよ」
着飾ったレイチェルを見てお蔦は本心からそう言った。そしてどう見てもレイチェルとは釣り合わない楠木とお蔦も甲武で見たゲルパルトの洋風の映画に出てきてもおかしくない姿のレイチェルを見て素直な感想としてそう言った。
「あの人のことを悪く言うとアタシもいい気分はしないね。そんなことに理屈なんて無いのは甲武の花街の花魁だったアンタの方がよく分かってるんじゃないのかい?それに映画のスパイと本当のスパイ。まあ、結果は同じなんだがすることはまるで違うのさ。アタシがしていたようなことを映画や小説にしても誰も見向きもしないだろうからね。それにこれは別におしゃれのつもりでこんな格好をしてるんじゃないよ。これでも私が裏切ったゲルパルトの情報部には今でも追われる身でね。こうして顔を隠してないと不安でならないのさ……それじゃあ行くよ」
そう言ってレイチェルは戸惑うお蔦の手を引いてうどん屋を後にした。
「レイチェルさんとやら……アンタもアンタの亭主と同じように追われる身なのかい?辛くはないかい?」
お蔦は不安に駆られてそんなことを口にしていた。
「なあに、諜報関係なんて言う後ろ暗い仕事を元々していたんでね。覚悟して選んだ道だ、辛くなんかないよ。それに女の過去はあまり詮索しないもんだよ」
そう言ったレイチェルの顔はそれまでの笑顔ではなくどこか冷たさをはらんでいてお蔦をハッとさせた。
「アンタも自分の過去をあまり人には言わない方が良い。このそう言う仕事の女には偏見まみれの東和ではただ誤解を受けるだけだからね、この国では。この国は地球人の国と違って遼州人の国だ」
鋭いレイチェルの指摘にお蔦も静かにうなずいた。東和の人間は男も女も妙に身持ちが固い。お蔦もどう見てもお蔦から見て恥ずかしげもなく下着にしか見えない格好で歩いている若い男女が必ずある程度の距離をとって歩く様を甲武の観光客でもここ東和に来てからもずっと不思議に思っていた。
「この国じゃ色恋沙汰を大っぴらに話すだけでも白い目で見られる。甲武とは真逆だと思っときな。甲武はお国が風紀が乱れると上からのお達しでそういうのを抑えているが、その張本人の偉い人は金で遊び歩いても何にも言われないが、この東和は遼州人の国で人の色恋沙汰は意地でも邪魔に入って台無しにしてやろうと考える『モテない宇宙人』である遼州人の本能が社会を動かしているんだ。だから、そんな他人の嫉妬に負けない面の皮の厚い人間しか恋人なんて作らないし、国民のほとんどが生涯未婚だから子供も少ない。隊長も時々それで甲武の遊び慣れた昔を思い出した気分で露骨にそう言う言葉を口にして周りから白い目で見られることが多いと聞いてるよ」
そう言うとレイチェルは車通りの多い国道へと路地を歩いた。
どの光景も甲武の大正風の風情溢れるような雰囲気ではなく、二十世紀末の日本を模した機能重視の建物ばかりでお蔦は見るものすべてへ好奇の目を向けたには十分なものだった。
「とりあえず……あれかい。その目立つ日本髪と和服をなんとかしようかね……何も髪を切れとは言ってない。ほどいて普通に結うだけでもいいんだ。そしてここから十分ほど歩くとマルヨと言う総合スーパーがある。そこで洋服を……」
レイチェルのそんな言葉を聞くとお蔦は急に立ち止まった。
「どうしたんだい?洋服ぐらい着ておいた方がこの国じゃあ目立たないんだ。目立っていい事なんて何も無いよ」
そう言ってレイチェルは柔らかい笑みを浮かべた。
「この髪は……女の髪は命だよ!それにこの髪はアタシがアタシである証だ。それに洋服なんてあんなチャラチャラしたものを着るなんて野暮なことをアタシにしろって言うのかい!いい加減におし!絶対嫌だね!ああ、死んでも嫌だ!この髪と着物は絶対に譲れないアタシの大事な一線なんだよ!」
お蔦は怒りをあらわにしてレイチェルに向けてそう啖呵を切った。
レイチェルはお蔦の様子を見て諦めたように肩をすくめた。
「そうかい、まあそれも良いさね。好き好きって奴さ。東和にも珍しいのが価値があるってことで三味線とお酒の相手をするだけというアンタのいた花街ほど何でも求められる仕事じゃない日本髪にしている芸者は居るからね。まあこの豊川にはそんな女は一人も居ないけど。変な目で見られるのは覚悟の上なんだろ?それもまた人の生き方さ。でも、甲武の古風な百貨店より東和の総合スーパーの品揃え……見てみたいとは思わないかい?」
レイチェルはそう言ってお蔦の好奇心を刺激した。
「そりゃあ、この国の庶民とやらが何を買っているのか見てみたいことは無いでは無いけど……」
お蔦はうつむきながらそう言った。
「じゃあ決まりだ。あと8分も歩けば見えてくる。まあ、チェーン店で東和の国内のそれなりの人口の街に行けばどこでも見られる店なんだが、甲武生まれのアンタにゃたぶん楽しめる場所だとは思うんだがね」
レイチェルはそう言ってお蔦の手を引いた。そのレイチェルのどこか悪戯めいた笑みを見て身構えるお蔦だが、この街について何も知らないお蔦にはただついていくほかに選ぶ道はなかった。
そうして歩くと目の前にひときわ大きな建物がお蔦の目に飛び込んできた。その屋上には店名の大きな文字と赤い商標が描かれた箱形看板何かがある。お蔦にはその建物が何のために建てられたものなのか分からずに不安になってレイチェルに尋ねた。
「あれかい?鏡都でもお役所や大きな会社以外では見ない高さの建物……さっきから勤め人の姿は見てないから役所か何かじゃないのかい?それにしちゃあ派手だねえ……あの屋上の四角い箱……なんであんなにいろんな模様がついているんだい?」
お蔦は目の前に現れた三階建ての大きなマルヨのコンクリート造りのビルに少し引き気味にそう言った。
「こんなの東和じゃそれなりに栄えた街ならどこにでもある店だよ。別に珍しくもない光景さ。この街豊川は東都の周りじゃまったく個性のない田舎町なんだ。さあ、入るよ」
レイチェルはマルヨの建物の隣の東和では珍しくもない立体駐車場にも、お蔦は目を奪われた。甲武で見かける自動車と言えば、殿上貴族の運転手付きの車か、軍や役所の公用車、それに勤め人が使う円タクくらいのものだった。
「あら?ドアが勝手に開いたよ……どういう仕組みになってるんだい?」
お蔦はこれまで東和に来て自動ドアを何度か通過していたがその度にその仕組みが気になっていた。
「まったく、アンタを見ているとうちの人と初めて東和に来た時を思い出すよ。要は足元の踏み板や人を感知する装置がスイッチに……いや、あの時もそんなことを説明してもあの人は理解できなかったから自動ドアがどういう仕組みで動くのかは知りたかったら隊長に聞きな。まあ甲武じゃ都心部以外は電気なんかろくに通っちゃいないからね。あれは電気で動いてるのさ……たぶんアンタは知らないだろうけど生存プラント稼働にはそれぞれ核融合発電機が設置されてるね。それと贅沢な貴族連中の家や一流企業なんかはそこから高い金を国に払って電気を買ってる。アンタも知っている甲武の鏡都の街を行く路面電車もそのプラントを維持する発電所から電気を買っていてその値段がアンタがこれまで払ってきた運賃の一部ってわけさ。まあ、その電気の値段が甲武と比べると馬鹿みたいに安いから東和じゃどこでも電気を使った機械があふれている訳なんだよ」
レイチェルは説明するのも面倒くさいと言うようにそれだけ言うと午後の買い物客でにぎわうマルヨの店内に足を踏み入れた。
「ああ、レイチェルさん。アタシはまず呉服屋に行きたいんだ。新さんに新しい着物を作ってあげないと……新さんは甲武に行くときもトランクひとつですべての着物が収まる程度しか着物を持っていなくって、しかもその中の最後に作った着物がアタシが繕ってあげた着流しだって言うじゃないのさ。三十年近く着物一つ買えない貴族様なんてアタシはみじめで仕方がないよ」
お蔦の言葉にレイチェルはため息をついた。
「同じような言葉をうちの人もアタシに言ってきたのが思い出されるよ。そんなもんこんな電車で一時間も行けばお金持ち御用達の呉服屋がある駅の前の地方都市のスーパーにあると思ってるのかい?周りの人を見てごらんよ。誰も和服なんて着てないじゃないのさ。確かにこの豊川じゃなくって千要まで行けば呉服屋と呼べるものはあるけど冠婚葬祭用の既製品はあっても、甲武四大公家の前当主の隊長にアンタがふさわしいと思えるような着物を仕立てる店ではないよ。アンタが気に入るような呉服屋なんてものが入ってるのはそれこそそう言う着物の為には多少の時間や金を惜しまない人間が行く東都の名門百貨店くらいのものさね。周りを見ての通りここ東和の庶民は普段は洋服で生活しているもんなんだ。そう言えば……アンタ下着を履いていないだろ?甲武の庶民が着物の下に何もつけないくらいの知識はアタシも知ってるんだよ」
レイチェルは『下着』に関するところだけは少し声を落として笑いかけるようにお蔦に向けてそう言った。
「下帯かい?あのズロースとか言ったのは甲武でも売ってはいるが、あんなもの無粋な人間のつけるもんだよ。またアンタはアタシを無粋にしたいのかい?良い度胸じゃないのさ!」
せっかくレイチェルが小声でささやいたというのにお蔦がムキになって大声を張り上げるのを見て、レイチェルは現代式の下着を勧めることを諦めてとりあえず下着コーナーに向かおうとした方向を変えて、そのまま春物の新作が並ぶ婦人服売り場にお蔦を導いた。
「こういう服が東和の最近の流行りなんだ……まあ、私はゲルパルト生まれだから東和の流行とかにはあまり関心は無いけどね」
レイチェルはそう言って珍しそうに軽快な春服に見とれるお蔦に目をやった。
「そうかい……ずいぶんとお腹が見えていたり、袖がやたら短かったり、裾も……春だからってずいぶんと肌の見える部分が多い派手な衣装じゃないのさ。東和の女はみんなうぶだって言うのはあれは嘘で結局そう言うことをしたいんだねえ、本心では」
そんな含み笑いを浮かべるだけでお蔦は特に春服を手に取ることもしなかった。
「アンタは東和の洋服には関心が無いみたいだね。要するに着るものではアンタは甲武風を隊長の前でも通すつもりなんだ。まあ、隊長もそのあたりは嫌いじゃないみたいだからそれで良いけどね。じゃあ、食べるものはどうなのかな。この下が食品売り場になっている。エスカレーターに乗るよ……乗れるかい?その草履で」
レイチェルは呆れたようにそう言うとお蔦の手を引いてエスカレーターの広場に向かった。
「馬鹿にするんじゃないよ。甲武にもエスカレーターのある百貨店くらいあるんだよ!しかし、地下かい……身請けされてから西園寺様のお屋敷にあった戦時中の避難壕を思い出すねえ。なんだって戦争の無い東和でそんなものを作るのさ」
お蔦はそんなことを言いながらレイチェルにつられてエスカレーターで地下の食品売り場に向かった。
「なんだい、こりゃ?東和が豊かだとは聞いていたけどこれはちょっとまるで天国にでも来たみたいじゃないのさ」
食料品フロアに入った途端にお蔦はそう叫んでいた。その様子をレイチェルは懐かしそうに答えた。
「そうかい、確かにねえ……アタシもゲルパルトから来た時は驚いたもんさね。この星は人が普通に暮らしていけるような環境がある。水もタダみたいなもの、当然空気もタダ。海に行けば魚がごく普通に居る……テラフォーミングのおかげで海が出来たけど400年しか時間の経っていないゲルパルト出身のアタシには山や川の魚は普通だったけど海の魚がこれほど多いのは魚好きのフランドル地方の南部やロンバルディア地方ばかりでゲルパルトのアタシはニシンくらいしか見たことがなかったから驚きだったね。ああ、肉はゲルパルトの方が充実してたね。特にソーセージは東和のそれは私に言わせるとただの肉の塊であんなものを買うだなんてどぶに金を捨てるようなもんだね。ゲルパルトのソーセージやウィンナーには豚を丸ごと使うのさ。それぞれの部位や臓物をそれぞれに見合った香辛料で味付けしてそれぞれに会った時間寝かせて食べる。ただ豚肉を腸に詰めて煙でいぶせばソーセージやウィンナーを名乗れるなんて言うところがいかにも東和だね。さっきのアンタの日本髪じゃないが、アタシにはそれが許せないよ。ゲルパルトに生まれたアタシにも甲武に生まれたアンタほどじゃないがこだわりが有ってね。加工肉だけはゲルパルトから取り寄せてる。ソーセージやウィンナーはやはりゲルパルトに限るよ」
サングラスを直しながらそう言うレイチェルを見るとお蔦はそのまま鮮魚コーナーに足を向けた。
日本髪の和服の若い女性が興奮した様子で鮮魚コーナーを目指す姿に違和感を感じている客たちはお蔦に道を譲った。
そこには数々の鮮魚が並んでいた。その様にお蔦はため息をついた。
「お魚って……お座敷で切り身か小料理屋をやってた時は缶詰か冷凍加工品しかないと思ってたけど……」
そう言いながらお蔦は鮮魚が並ぶ冷蔵ケースの前に立ちとりあえず目の前の開きは見慣れたアジを手に取った。
生れて始めて見る干していない生のアジ。そしてその値段が旅館から千要のタクシー代の半分という値段に再びお蔦は目を丸くした。
「生のこんなにぴちぴちしたアジがこんなに安いのかい?手間がかかってるからって甲武の半分もしない値段じゃないのさ」
次に手に取ったのはこちらは花魁時代もよく見かけた鯛だったが、義基が好んだ大ぶりの鯛よりは一回り小さいが値段はアジよりもはるかに高い。
さらに横を見ると見慣れない魚が、そしてその横に見慣れない魚があり、そうして歩いていった先にお蔦も見慣れた小料理屋でも定番だったホッケの干物を見てようやく一心地着いた。
「レイチェルさんとやらこんなに魚がいたらどれから新さんに食べさせればいいのか分からなくなるよ。甲武の金持ち連中は魚が好きでね。この星からわざわざ高い金を払って取り寄せるんだ。アタシは太夫だったからその度に魚自体は食べたことはあるが……ただ魚の形をした魚がこんなにたくさん並んでいるなんて……これがどこでもある光景だなんて……」
ため息をつきながらお蔦はそう言った。
「そんな甲武の金持ち貴族が好んで食べてる……ああ、たぶんアンタが座敷で食べたのも恐らくそれだろうけど……冷凍ものの魚なんて東和に住んでいる人間から言わせるとマグロ以外は食えたもんじゃないね。甲武じゃ初物を珍重するらしいじゃないか。特に初ガツオ……東和の漁師は甲武向けのは釣れたら即瞬間冷凍で味はたいして変わらないというけど、どっちも食べたことのあるうちの人に言わせると甲武の初ガツオはあれは東和の鮮魚コーナーの隅の売れ残りの初ガツオの味だっていうね。そんな味の初ガツオでも甲武でも一匹数百円……東和の円に直すと数万円するらしいが……今の公定相場じゃ甲武一円が東和三百六十円なんて制度は誰が決めたんだろうねえ……でもまあここの東和じゃ庶民でも買える普通のものさ。それも甲武の初ガツオは獲れて一週間も経ったカツオだけど、東和じゃその朝に獲れたものが店に並ぶんだよ。カツオは隊長も好きだから覚えておくといいよ」
息をのむお蔦にレイチェルはそう言って笑った。
「じゃあ、肉も凄いんじゃないのかい?アタシは花街で太夫をしていた時は大豆となんだかよく分からないものを混ぜた人造肉なんかじゃなくってちゃんとした肉を食べていたが、西園寺様に身請けされて一人で小料理屋を始めた時には店で出していたのはこれも材料はよく分からないが花魁時代の本物の肉とよく似た人造肉ばかりだったけど……」
お蔦は今度は肉コーナーに向かった。レイチェルはまるで子供のように食料品コーナーを歩き回るお蔦をその保護者の様について回った。
「これが全部天然の肉かい?信じられないねえ……」
お蔦は牛、豚、鶏やその他人造肉ではない肉がこれほど多く冷蔵庫に並んでいる様を見たことがなかった。
「肉について言やあ、さっき言ったようにゲルパルトの方が充実してるよ。あの国では魚は港町以外では食べないもんだから、こんな内陸部のスーパーには缶詰しかないのが普通で全部肉の売り場なんだけどね。特にあの国は豚肉にこだわる国だ。でも東和じゃ肉と言えば牛肉が一番人気。次が安いから鶏肉で、豚肉は……牛肉の代用品だとか言っている隊長のかわいがっている整備班長がいるとかいないとか……あの若いのはいっぺん締めておきたいね。うちの店に来るたびに食い逃げをしようとするもんだから何度うちの人に怒鳴られたことやら……」
レイチェルはそう言うと鶏肉のパックを手に取った。
「甲武じゃ肉屋はこんなもんじゃない。本物の肉はそれはもう厳重に包まれて中身を見るなんてのはアタシらには無理な話だったんだ。花街に居た頃にはそんなことは知らなかったが西園寺様の御所の中の長屋で暮らし始めてからは天然の肉なんて口にしたことが無いよ……まあ、西園寺様は外では遊ぶけれども御所では一切贅沢はしないお人でね。ご自身も普段は肉自体を滅多に口にされない人だったし。年に一度伴天連冬至の時に人造肉を長屋の住人全員に配るんだから太っ腹とは言えるんだけど……まったく……東和って国はどこまで豊かなんだろうねえ……」
お蔦はただ甲武と東和の貧富の差とあの懐かしい西園寺御所での貧しいながらも強く生きていた長屋の住人の顔、そしてそれを見守りそんな居場所をお蔦に与えてくれた西園寺義基のことを思い自然と涙があふれてくるのを感じていた。




