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筋肉聖女 ~神聖魔法より筋トレを選んだ侯爵令嬢、ウォーハンマーで無双する~  作者: みーしゃ


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第9話 筋肉聖女、傲慢を粉砕する!

「……ご……め……ん――」


 屈服させたと確信した司教は、満足そうに口の端を吊り上げていく。


「ふんっ、早く素直になれば良いものを――」


「ご……め……ん――こうむります!!!」


――バキィィィィィンッッ!!!!!


 激しい破壊音とともに、光の拘束の輪が粉々に粉砕された。


「ば、ばかな……!」


「筋肉は全てを解決するッ!」


 アナスタシアがくるりと背中を向ける。


「……フンッ!」


――ビリビリビリッ!


 アナスタシアの筋肉に耐え切れなかった服が一気に裂ける。


 そして、両腕で力こぶしを作るポーズを決めた。


――バーーーーーーンッ!


 大陸のように広い背中。


 両肩に載せている巨大な岩石。


 いや、その両腕の盛り上がりへ連なることも考えれば、そびえ立つ大山脈と言うべきか……。


「…………。」


「…………。」


「…………。」


「…………。」



「…………あれ?」


 皆が沈黙し、呆然としている中、アナスタシアは首をかしげた。


「うーん。『鍛え抜かれた背中を見れば、誰もが屈服する』と言っていたじいやの言葉は、やはり間違いではないのでしょうか?」


「う、う……ありえん!」


「……拘束の輪、拘束の輪、拘束の輪ァァァ!」


――ビシュン、ビシュン、ビシュン!


 今度は三重になった光の輪が、アナスタシアを縛り上げる。


――ギリギリギリギリギリギリッ!!


 光の束が容赦なくアナスタシアを縛り上げる。


「……フンッ!」


――バキンッ!バキンッ!バキンッ!


 今度もあっさりと拘束の輪が砕け散った。


「ありえない! な、なぜだ!?」


「筋肉を限界まで鍛え上げれば、そこに神の息吹が宿るのです」


――!!!


 高位の司教には見えた。


 アナスタシアの筋肉には、神の加護が与えられていることを。


「わ、私は間違っていない!」


「どこがです?」


「ま、魔力(オド)は神が与えてくださったものなのだ!」


魔力(オド)が無い者は、魔力(オド)がある者に仕えるために存在しているのだ!」


 アナスタシアはゆっくりと一歩ずつ司教のもとへ歩み続ける。


「……平民の方にも少しは、魔力はあるでしょう?」


「て、訂正する! 魔力が多い者は、魔力の少ない者には何をしてもいいのだァッ!」


「――光の矢ーーーッ!」


 動揺した司教は空中に無数の光の矢を作り出す。


 そして、狙いも定まらないまま、無差別に光の矢を発射した。


――ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ!


――まずいっ!


 アレセイオス司祭も慌てて魔法の『聖域の盾』を発動する。


 しかし司祭の魔法の力では、自らと隣にいた従者を守るだけで精一杯だった。


――バシンバシンバシンバシンバシンッ!


 広い室内全体に白い煙が充満する。


 周囲は何も見えない。


 白いもやが少しずつ晴れていくと、そこには跪いたアナスタシアの姿があった。


「……やったのか?」


 司教は一瞬安堵した。


 しかし、その思いはすぐに覆されることになった。


 そこに見えた姿は、自らだけでなく、離れた場所にいた従者全員に聖域の盾の魔法を施しているアナスタシアの姿だった。


「……ひぃ!」


 司教は戦慄した。


 アナスタシアの目が怒りに燃えていたからだった。


「……どういうつもりですか? 無差別に従者まで殺すつもりですか?」


「じゅ、従者などいくらでも代わりはいるだろうがっ!」


「それよりも、お前だ! この化け物めっ!」


 司教が次の魔法を唱えようとした瞬間だった。


「――完全なる沈黙!」


 アナスタシアは相手に魔法を唱えさせないようにする神聖魔法を発動した!


 それを見ていた司祭は驚いた。


「複数の聖域の盾のみならず、こんな高度な神聖魔法まで使えるとは……!」


 司教は必死に呪文を唱えようとしたが、モゴモゴするだけで一切の魔法が発動できなくなっていた。


「あなたは言いましたね。魔力が多い者は、魔力の少ない者には何をしてもいいと」


「あ、あぁ……」


 司教は尻もちをついた。


「あなたの体内魔力はどのくらいですか?」


「せ、1,500くらいだ。一桁台の平民の100倍以上の価値があるッ!」


「そうですか……なるほど」


「わ、分かってくれたか!」


「私の体内魔力は53万です。あなたの100倍以上の価値があることになります」


「えっ!」


「あなたは先ほど言いましたね――」


「魔力が多い者は、魔力の少ない者に何をしてもよいと」


 アナスタシアは美しい笑顔でにっこりと微笑む。


「私は、その考えが間違っていることを教えます!」


――次の瞬間


――ドーーーーン!


「ぎゃあーーーっ!」


 アナスタシアの鉄拳が、司教の膝を粉砕した。


「痛いーっ! 痛いーーーっ!」


「いえいえ、私の虫様筋(ちゅうようきん)骨間筋(こっかんきん)の方が痛いのですよ」


「えっ? 聞いたこともない筋肉の名前……」


「分かっていないようですね――では、もう一発!」


――ドーーーーン!


「ぎゃあーーーーーーーっ!」


 アナスタシアの二発目は、司教のもう片方の膝を粉砕した。


 司教は太った丸い身体で左右に転げ回り続けた。


 そして――


――フゥゥーーーーーン


「あれ? 痛くない?」


 アナスタシアは司教の膝を治癒魔法で治療していた。


 彼女が再び笑顔を見せる。


「これで……分かってもらえましたよね?」


 司教は黙ったまま、猛烈な勢いで何度も首を縦に振る。


「分かっていただけたのですね! 本当に良かった!」


「――では続けますね」


「えっ!?」


「次は、深指屈筋や総指伸筋の痛みの分です!」


「……ち、違う。そういう意味じゃないっ!」


――ドーーーーン!


「ぎゃあーーーっ!」


 アナスタシアの鉄拳が、再び司教の膝を粉砕した。


皆さま、読んで下さり本当にありがとうございます!

毎日20:00頃、更新予定です!


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