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筋肉聖女 ~神聖魔法より筋トレを選んだ侯爵令嬢、ウォーハンマーで無双する~  作者: みーしゃ


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第8話 筋肉聖女、歪んだ信仰に怒る!

 司教の言葉を聞き、アナスタシアの表情が曇った。


 しかし、自らの主張が正しいと信じて疑わない司教は、アナスタシアの表情の変化も別の意味で捉えていた。


 司教は穏やかな笑みを浮かべる。


「おやおや、長旅の疲れが出てしまったようですな」


「まずは、一服いたしましょう」


 しかし――


 誰も動かなかった。


 すると、司教が従者に鋭い視線を向け、声を上げた。


「一服するといっただろうっ! 早くお茶の準備をせぬかっ!」


 従者たちは慌てて動き出した。


「命じなければ、動くことができないのか!」


「あの……」


 アナスタシアは、これまでの言動に我慢できず、たまらず声をあげた。


 しかし、その言葉を遮るように、司教が言葉を被せる。


「申し訳ございません。気の利かない連中でして」


「いえ、あの……」


「彼らのためを思い、強い言葉で躾けませんと」


「あ……あぁ、そうですか」


 聖白教会は、他国にもまたがって活動しているいずれの国家にも属さない独立した組織だった。


 そのためアナスタシアは、口を挟むのを躊躇してしまった。


――うーん。それぞれの事情や、やり方があるのかもしれないし……


 そもそも、私に口を挟む権利はないか……。


 しかし、アナスタシアは心に何か引っかかっていた。


 それは、父や母が教えてくれた、人に対する考え方が違っていたからだった。



   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 しばらくして――


 一人の若い従者の女性がお茶を運んできた。


 しかし、その身体は見るからに震えていた。


「し、失礼いたします……」


 カップを置こうとした瞬間。


 ガチャン。


 手が震え、紅茶をこぼしてしまった。


 司教の白い法衣に茶色い染みが広がっていく。


 次の瞬間。


「何をしているか、この愚図がぁぁぁ!」


 司教は激高した。


「も、申し訳ございません!」


「この法衣はいくらすると思っているっ! 貴様の給金では何年働いても払えるものではないわ!」


 従者はひれ伏したまま震えていた。


「私たちの貴重な時間まで奪いおって、この役立たずめがっ!」


 しかし、従者は萎縮し、何を語ることも、動くこともできなかった。


 それがかえって、司教の怒りの火に油を注ぐ結果となった。


「貴様――! 満足な謝罪もできない上に、何をすればよいのかすら判らんのかぁ!」 


――ガン!


 司教が従者の身体に蹴りを入れ、軽い従者は吹き飛び、テーブルの足に頭をぶつけた。


 従者が顔を上げると、頭から血を流していた。


「ふん、痛いか? 言っておくが、こちらの足の方が痛いのだからな!」


「貴様の代わりなど、いくらでもいるのだぞ!」


 その言葉を聞き、従者は恐怖を感じたのだろう。


 あわてて再び床にひれ伏した。


「愚か者め! 貴様の汚い血で部屋の床を汚す気か!」


「その心配はありませんっ!」


 アナスタシアは咄嗟に神聖魔法で従者の傷を癒していた。


 そして、司教を睨みつける。


「おお、すみません。いささか興奮してしまいましたな」


 神聖魔法を使い続けるアナスタシアを見て、司教が口を挟む。


「……そんな女に貴重な神聖魔法を使う必要などありませぬぞ!」


「あなたはそれでも本当に聖職者ですか?」


 司教から笑みが消え、彼の眉がピクリと動いた。


「……何ですと?」


 同席していたアレセイオス司祭もその場の空気を感じ取り、あわてて両者の仲を取り持とうとする。


「まあまあ、お二人とも、どうぞ落ちつ……」


「あなたの行為はユースティリアさまの教えに反していますっ!」


「……丁寧に接していれば図に乗りおって!」


「生まれてから十年ちょっとの小娘に、一体何が分かるっ!」


「あなたは何十年も聖職者をやっているのに、そんなことも分からず生きてきたのですか?」


――言ってしまった!


 司教の性格をよく知っていた司祭は、その決定的な言葉を聞き顔が青くなった。


 一気に部屋の空気が凍り付く。


「この小娘がぁ! では、数十年の聖職者の力を見せてやろう!」


「……拘束の輪!」


――ビシュン!


 白い光の輪がアナスタシアの身体を包む。


「こ、これは!?」


 光の輪がアナスタシアの両腕と胴を縛り上げ、彼女は身体を動かせなくなった。


「ふん! これが長年魔法に携わってきた者の力だ!」


――ギリッッ


 司教の魔法が徐々にアナスタシアを締め上げていく。


「どうだ、苦しいか? 自分の非を認め、素直に謝れば許してやろう!」


「わ、私に非はない! 謝るならあなたが従者に謝るべきだっ!」


「愚かな! 意地を張っても、その輪は決して外れぬぞ!」


――ギリッギリギリッ!


 拘束の輪の締め付けが一気に強くなった。


 強力な締め付けに、司祭がたまらず声をあげた。


「司教様! さすがにこれ以上は……」


「どうだ、謝る気になったか?」


 アナスタシアは、絞り出すように声を出し始めた。


「……ご……め……ん――」

皆さま、読んで下さり本当にありがとうございます!

毎日20:00頃、更新予定です!


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