表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
筋肉聖女 ~神聖魔法より筋トレを選んだ侯爵令嬢、ウォーハンマーで無双する~  作者: みーしゃ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/24

第5話 筋肉聖女、失われた光を取り戻す!

「……くっ、殺せ!」


 頭目の男は呟いた。


「いいえ」


 アナスタシアは首を横に振った。


「私は、誰一人犠牲にしないと言ったはずです」


「ふっ、拷問でもしようってか? それとも人質の家族に引き渡すのか?」


「違います。あなたには、生きて罪と向き合ってもらいたいのです」


 頭目は顔を上げる。


「なぜ……俺みたいな奴に……」


 アナスタシアは静かに問いかけた。


「あなたは、なぜ盗賊になったのですか?」


 男は黙った。


 そして――ゆっくりと語り始めた。


「……昔は平凡な農夫だったんだ」


「仲間と、家族と……平和に暮らしていた」


「だが……ある日、村が盗賊の集団に襲われたんだ!」


 頭目の男の言葉に力が入る。


「家も、畑も……妻や子も……この目まで失ったんだ」


 頭目の男は自らの眼帯を指さす。


「この世界は誰も助けてくれない……だから俺たちは思ったんだ」


「奪われるくらいなら……奪う側になってやろうってな!」


「……俺たち?」


 隊長の騎士が説明を補足する。


「ええ、この男は我々に囚われた盗賊である弟の解放を要求して、立てこもったのです」


 アナスタシアは目を伏せる。


「……そうだったのですね」


 そして。


 彼女は頭を下げた。


「申し訳ありません」


「なんで、おまえが謝る?」


「あなたの村を守れなかった領主の責任です」


「俺らはルクサリス領の出身じゃねぇ」


「では、その貴族に代わってお詫びいたします」


「……けっ! 甘ちゃんのお嬢様だな」


「ですが……」


 アナスタシアは真っ直ぐ彼を見る。


「あなたが受けた苦しみは、他の誰かを傷つけていい理由にはなりません!」


「罪は償う必要があります」


 その言葉の迫力に、頭目の男は一瞬たじろいだ。


「……ですが、人は変わることもできるのですよ」


「その目を見せていただけますか?」


 アナスタシアは頭目の眼帯を優しく外す。


「……やはり、感じていた通りですね」


 アナスタシアは微笑む。


「……俺は恵まれたお前なんかと違い、汚い世界しか見てこなかったんだ!」



「だからです」


 彼女は優しく告げた。


「あなたは、片方の世界だけを見てきたのです。奪い、奪われる世界だけを……」


「しかし、もう片方には――手を差し伸べる人々もいるのです」


「これからは両方の目で、この世界を見てください」


 アナスタシアの手が、傷ついた盗賊の目に触れる。


「女神ユースティリアさま……失われた光を、再びこの者へお与えください」


 優しい光が広がった。


 温かな魔力が、男の傷を包み込んでいく。


「こ、これは!」


 同席していた隊長が思わず声を上げる。


 アナスタシアは手を離した。


「……ゆっくり目を開けてみてください」


 男が目を開くと、その先には震える両手がしっかりと映っていた。


「……み、見える。奇蹟だ……!」


 その男の両目から、涙が滝のようにこぼれ出した。



   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 数日後。


 盗賊たちは裁きを受けることになった。


 アナスタシアは領主として罪一等を減じ、彼らに罪を償う機会を与えたいという意見を述べた。


 そして、彼女が用意したのは、自ら神聖魔法を施した特殊な魔道具だった。


「制約の首輪です。これにより、悪いことはもちろん、逆らうこともできなくなります」


「この首輪は女神ユースティリアさまの名のもとで私が作りました」


「犯した罪以上の功徳を積み、心から改心し、人々から許された者だけが外れる仕組みです」


 民衆の間からざわめきが起こった。


「……処刑するのは簡単です。ですがそれでは、被害に遭われた方々への賠償になりません」


 アナスタシアは続ける。


「そこで、この罪を犯した者たちに制約の首輪を付け、被害者のために働いてもらうことで罪を償わせたいのですがいかがでしょうか?」


 民衆たちの間に一瞬の沈黙が訪れた。


 その直後、皆が喝采をあげて賛同し始めた。


 そこには、アナスタシアが盗賊を討伐し、人質を傷一つなく救出させたことに対する恩義があったかもしれない。


 しかし、反対する者が出なかったため、アナスタシアの案は了承されることになった。


 盗賊たちは言葉を失った。


 そんな未来は、誰も想像していなかった。


 しかし、盗賊たちの中には、自分たちのような者にも居場所が与えられ、他人から必要とされることに、安堵や嬉しさを抱いている者たちもいたのだった。




   ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 後日、アナスタシアは自らの用事の途中で、再びこの村を訪ねる機会を得た。


 騎士の隊長が出迎えを行う。


「どうですか、村の様子は?」


「はい、おかげさまで、以前よりかなりの発展を遂げております」


「確かに。村に活気があるというか……豊かになったように見えますね」


「はい。あの元盗賊たちが荒れた土地を開拓したり、治水工事で未然に災害を防ぐなど、大活躍でしたよ」


「奪われた以上のものを、この村へ返してくれました」


「それはよかった!」


「あ、ちょうど、あそこの家に頭目だった男がいますよ」


 騎士がその家を案内し、アナスタシアたちが下馬すると、中から頭目だった男が飛び出してきた。


 その男は地面にひれ伏しながら答えた。


「アナスタシアさま! 私どもの、私どもの……命だけでなく、心まで救っていただき、本当にありがとうございました!」


「どうか頭を上げてください。そして私ではなく、ユースティリアさまの御慈悲に感謝を」


 顔を上げた盗賊の頭目だった男の両目からは幸せと感謝の涙が溢れていた。



「あっ、首輪が外れている。許しを得られたということですね! おめでとう!」


「はい、特にそれは妻から……」


 家の中から慌てて身支度を整えたと思われる女性が出てきた。


「アナスタシアさま! 本当に、本当にありがとうございました!」


 その姿を見てアナスタシアは驚いた。


「あっ! あなたは!」


 その女性は、盗賊の男たちに捕らわれ、まさに隣にいる頭目だった男に殺される寸前だった娘だった。


「……実は、私はこの子の家にあてがわれて働くことになったのです」


「最初は誰も私たちのことなんか、信じてくれなかったのですが……」



 黙ってしまった男の代わりに、娘が代弁を始めた。


「この人が休まずに償い続ける姿を見て……」


「私が両親に言ったんです。もう、許してあげたらって」


「アナスタシアさまが導いて下さったおかげで、新しい希望の光が差した世界を見ることができました」


 アナスタシアが娘の方に目をやると、こころなしか娘のお腹が膨らんでいるようにも見えた。


「それはよかった! どうか、その子にも女神ユースティリアさまの祝福を……」


 アナスタシアの優しい神聖魔法が二人を包み込む。


 その暖かい光に包まれた二人は、跪いて手を合わせ、感謝の意を表した。


 アナスタシア一行が立ち去るときも、二人はいつまでも頭を下げ続けていた。


「アナスタシアさま……。あなたが許す判断を示されたとき、何でこいつらなんかを助ける必要があるのだろうと思っておりました」


「あら、そうだったのね」


「でも今は、今は……本当に心から敬意を示しております!」


「それは、ありがとう。良い結果になって、私も安心できたわ」


 この騎士の隊長は思った。


 この方が未来の聖女だと噂される本当の理由を。


 それは、とてつもない『筋力』でもなければ、膨大な『魔力』でもなかった。



 何より先に、この方の『心』こそが、聖女なのだということを。


皆さま、読んで下さり本当にありがとうございます!

毎日20:00頃、更新予定です!


もし、面白かったり楽しんでいただけたり、また、続きが気になりましたら、下にある【評価用の星(★★★★★)】をポチッと押して応援していただけると、作者の励みになります!

一言だけでもよいので、感想やレビュー、応援の星をどうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ