第44話 筋肉聖女、正義の実現方法を考える!
「これで、疑わしい人を絞り込むところまでできたね」
「うん」
「次が一番重要なところだね」
「一番重要?」
「アナ、正義を実現するためには、『実現力』も考えないといけないよ」
「実現力?」
「相手は王族だよ。確固たる証拠も必要だし、国王陛下に、王子を調査できるだけの権限を持たせて、調査を命じてもらわなければならない」
「つまり、『正義』って、声を上げるだけじゃだめなんだ。正義を実行するための『実現力』まで備えて、はじめて成し遂げられるものなんだよ」
「確かにそうね」
「もし殿下が犯人だとしたら、まず間違いなく否定をすると思うよ。証人に口留めもするだろうから、証言はまず得られないと思う」
「証言を得られなければ、証拠は不正判定の水晶くらいになるけど、それらはアナに対しての不正であって、殿下に直接関係するものではないからね」
「うーん……」
アナスタシアは黙ってしまった。
「それにアナは同じ受験生だからね。ライバルである殿下を貶めようとしているとか……あまり言いたくはないけど、痴情のもつれから殿下の足をひっぱろうとしている――なんて主張までしてくるかもしれない」
「!!! 私が告発したことで、逆に私が疑われる可能性すらあるのね!」
「正義を実現するためには、告発という攻撃だけでなく、こちらの防御も考えておかないとね」
「……じゃあ、不正を見逃すしかないの?」
「そのために考えようよ。正義を実行するための『実現力』を!」
「国王陛下に内密にお伝えするだけではダメかな?」
「……実は、僕に考えがあるんだ」
ヨルはアナスタシアにそっと耳打ちをする。
「なるほど! それならばもみ消される心配はないわね!」
「うん。不確実性も高いけれど、僕は、意外と可能性が高いと思っているんだ」
「つまり、不正は試験だけには留まらないってことね」
「そういうこと。もし、殿下の不正の目的が単なる『合格』ではなく、『名誉』やその先のことまで考えているとしたら、それだけで終わらせるとは思えないからね」
「ん、その先?」
「うん。今は口に出すのは憚られるかな。まあ、まだ先のことだから、今は気にしなくていいよ」
「分かったわ」
「上手く当たるように祈っているよ」
「当たったときは任せて!」
アナスタシアは力こぶしを作って見せる。
「ふふっ」
ヨルの顔に笑顔が浮かんだ。
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