第41話 筋肉聖女、友達に相談する!
アナスタシアとヨルは、受験生たちから少し離れた場所へと移動した。
そして、周囲を一通り確認してから、アナスタシアは小さな声で話し始めた。
「実は……今回の実技試験の不正の件だけど――持ちかけたのは、王家の人らしいの」
「なるほどね」
「えっ!? ヨルは驚かないの?」
「うん。上位の貴族が不正をしていたようだから、王家の人が関わっていても不思議じゃないと思っただけだよ」
「そうなんだ」
アナスタシアは少し考え込んだ。
そして、意を決して話し始めた。
「私、国王陛下に直接報告をしようと思っているの」
「でも……不正をしたのかどうか分からないのに、王族の方を疑うようなことを申し上げていいのか悩んでしまって」
「アナらしいね」
「え?」
「手続き面から考えているんだね」
ヨルは優しく笑った。
「でも、それって……アナが貴族だからじゃないかな」
「貴族……?」
「アナは小さい頃から、正しい振る舞いや、正しい手続きを教えられてきたんだよね?」
「うん」
「だから、何か問題が起きたら、まず正しい手続きで解決しようとする」
アナスタシアは黙ってヨルを見つめた。
「でもね」
ヨルは少しだけ表情を変えた。
「世の中の人が、みんなアナと同じように考えるとは限らない」
「――正しいことより、自分の利益を優先する人もたくさんいるんだ」
「……そうなのね」
「だから、物事の見方を変えてみようよ」
「見方を?」
「うん」
ヨルは、アナスタシアを真っ直ぐに見つめた。
「『どうやって、この問題を正しく解決するか』じゃなくて――」
「『どうして、その人は不正をしたくなったのか』って」
アナスタシアの瞳が大きく見開かれる。
「……そして、その不正で得をするのは誰かを考えればいいんだよ」
「!!!」
アナスタシアは、初めてそのような視点から、今回の事件を考え始めた。
ヨルはそんな彼女を見て、優しい眼差しを送る。
――アナは頭が悪いんじゃない。ただ、あまりにも純粋すぎるんだ。
アナは、恐らく筋力も魔力も、常識をはるかに超えた力を持っている。
それなのに、自分の力を誰かのために使うことしか考えていない。
だからこそ、そんな彼女を利用しようとする人間が現れるかもしれない。
――だったら、僕が支えてあげたい。
アナが困ったときには、僕が力になる!
たとえ、それがほんの小さな力だったとしても――。
ヨルは、そんなことを考えていた。
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