第39話 筋肉聖女、試験の裏に王家の影を見る!
口を塞いでいる側の冒険者が、焦って取り繕うように返事をした。
「な、なんでもありませんっ!」
それでも押さえつけられている男は、何かを必死に語ろうとしていた。
「……言ってもいいことと、絶対に言ってはならないことがあるだろうがっ!」
「で、ですが、このままじゃ、俺たちだけ悪者にされちま……」
「馬鹿がッ! 俺たちだけが『悪者』になれば、それで済むんだ! そこで留めておかないと、その後がどうなるか想像ができないのかっ!」
その言葉を聞き、押さえつけられていた男も、ハッと何かに気付いたように黙ってしまった。
「どういうことですか? 説明をしてください」
「…………」
冒険者たちは口をつぐんだまま、何も語らなかった。
再び、強い口調で彼女は声を上げた。
「黙っていないで、どうか本当のことを言ってくださいっ!」
「……あんたですら、あいつには何も言えないんだよ」
冒険者の誰かが、ぼそっと小さな声で不満を言った。
「それは、誰のことを言っているのですか? 私は我が家の名誉を賭けて、そのような不正を明らかにし、是正していきたいと思っていますよ」
すると、審判役の冒険者の男が強い口調で言った。
「あなたは受験生であり、今は試験中だ! 試験の中身について、意見することは許されていないっ!」
「ただ、もしあなたが不正を受けたと感じたのであれば、大学の受付にその旨を申告することができます」
アナスタシアは、黙ったまま聞き続ける。
「――あなたの姿勢は立派だと思いますよ。ただ、あなたの試験結果はすでに満点なのです」
「その状態でリスクを冒し、触れない方がいい部分にまで踏み込むのは――正直、避けた方がいいと思います」
アナスタシアは表情を変えないまま、静かに質問をした。
「……それは、あなた方の保全のためですか?」
「いいえ違います。すでに不正防止の水晶が反応してしまった以上、私たちは何らかの処分を受けるでしょう。それは、私たちではなく……あなたのためです」
アナスタシアは、ニコリと表情を変え笑顔で答えた。
「心配してくださってありがとうございます。でも、私は大丈夫ですよ」
すると、審判役の男が真剣な表情へと変わり、必死に説得をしてきた。
「いいえ、大丈夫ではありませんっ! あなた様は大貴族ですが、それより高い身分の方もいるのです!」
「あら、私は国王陛下と直接お話した結果、今回の試験を受けることになったのですよ」
「そうですか。しかし、それは現在の国王陛下と話されたのであって、未来の国王陛下ではありません」
「!!! それって、どういう意味……」
審判役の男はアナスタシアに最後まで語らせないように、言葉を被せて言い出した。
「とにかくッ! ……どうかお察しください。私は、あなたに不利益なことが、起こって欲しくないのです」
そして、そう言い切ると、出口の方を指し示した。
「今は試験中です。我々にはやるべきことがたくさんあります。試験を円滑に進めていくためにも、どうぞご退室ください!」
そこまで言われてしまったため、アナスタシアは沈黙したまま頭を下げ、試験会場を後にした。
――王家の人が関わっている? 一体誰が?
これで試験科目を全て終了したアナスタシアだったが、一連の不正に関する事柄が、ずっと頭の中でぐるぐると回り続けていた。
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