第35話 筋肉聖女、三角筋で防具を吹き飛ばす!
教官役の男は、絞り出すように声を出した。
「な、なんで、こんなに強ぇんだよ……」
「幼いころから徹底して学んできたので、剣も得意なのですよ!」
その言葉を聞き、教官役の男は審判に視線を移す。
「……あれ? 一本の判定はまだでしょうか?」
アナスタシアが審判の判定を確認しようと振り向いた、その一瞬――
――チャッ!
教官役の男はアナスタシアの剣の下を潜り抜け、剣を拾ってすり抜けていく。
「えっ?」
アナスタシアはあっけに取られた。
「へへ、油断したなっ!」
「ちょっと待ってください! 相手の剣を奪い、余裕を持って『止め』までしたはずです」
「……その『剣』とやらはここにある。奪われてなんかいねぇぜ」
アナスタシアは審判の方を見た。
すると、審判は無表情のまま何も答えなかった。
「隙ありだな。戦うときは、最後まで気を抜かねぇようにしなくちゃな!」
すると、周囲から笑い声が起こった。
アナスタシアはやや俯き、怒りで身体を震わせながら声を出した。
「……先ほどの目つぶしといい、あなた方はいったいどこまで卑怯なのですかっ!」
「卑怯? これは心外だな。甘ちゃんのヒヨッ子どもが将来死なないように、俺らは実戦の剣で教えてやっているだけだぜ?」
「この宮廷大学の入学試験の場でですかっ!」
「ああ、そうさ。この騎士コースは、将来の騎士を育てる場だ。本物の実戦形式の試験で一体何が悪いっ!」
「むっ!」
一応はスジが通った話に、アナスタシアは黙ってしまった。
「ほら見ろ。この首飾りの水晶は何も反応していねえ! 俺らの解釈は不正ではねえんだよ!」
「…………」
「ま、冒険者の戦い方に対応できず、お前には隙があった。…ただそれだけのことだ!」
「…………」
――バキンッ! ……カラン、カラン。
アナスタシアの両肩に付いていた防具の部分がはじけ飛んだ。
そして、まるでスイカのように盛り上がった両肩の筋肉が露になる。
「……な、なんだ!?」
周囲からもどよめきが起こる。
「……よーく分かりました。では、確実な勝利のため、私も冒険者の戦い方で行かせてもらいますっ!」
全身の筋肉が膨張し、アナスタシアの身体からは怒りのオーラのようなものが溢れ出ていた。
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