第32話 筋肉聖女、冒険者の戦い方を受ける!
「おっしゃる通りです。冒険者の世界は、厳しいのだと思います」
「やっと分かったか。だが、もう遅いがなっ!」
「ですが、冒険者の世界が厳しいからといって、平民の方々をいじめてよい理由にはなりません」
「何だと?」
「冒険者の戦い方で構いません。どうぞ来てください」
アナスタシアは、片手の手のひらを数度曲げて、「来い」というアピールをした。
それを見て、教官役の男の顔が真っ赤になった。
「貴ッ様ァーーッ!」
怒りをあらわにし、怒涛の連撃を繰り出してきた。
突きも駆使し、目や喉、脇の隙間など、鎧で守られていない急所を容赦なく狙ってきた。
――シュッ、シュッ! カキン、カキン!
アナスタシアは、冷静かつ確実にその攻撃を受け流していく。
「まだまだァァーーーッ!」
教官役の男は、剣による攻撃だけでなく、フェイントを入れたり蹴りを繰り出したりと、まるで実戦のような戦い方をしていた。
「――騎士の実技試験とは、とても思えないような戦い方ですね!」
「今頃後悔しても遅いわ! 徹底的に痛めつけてやるッ!」
――シュッ! ブンッ! カキン、カキン、カキン!
教官役の男の攻撃は、初見では対応しにくい意表を突くようなものだったが、アナスタシアはことごとく受け止めるか、躱していた。
「お前、凄い対応能力だな。褒めてやるぜッ!」
教官役の男は攻撃を緩め、アナスタシアと少し距離を取った。
そして一瞬背を向けたかと思うと、両手で持つ剣の柄を顔に当て、祈ったかのように見えた。
――ん?
アナスタシアが疑問を持つと同時に、再びフェイントや蹴りを混ぜた剣を、教官役の男が繰り出してきた。
そして、下腹部を狙った斬撃を、アナスタシアが剣で受けた瞬間だった。
――ブフゥゥゥゥーーーーッ!
男の口から、大量の粉末が、アナスタシアの顔面に向かって吹きかけられた!
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