第27話 筋肉聖女、重騎士に突撃する!
「突撃ーーーッ!」
アナスタシアは開始と同時に、完全装備の重騎士に向かって突撃する!
「なっ!」
重騎士は驚き、咄嗟に相手の攻撃を盾で受け止めようとした。
むしろそれは、訓練と経験によって身体が自動的に動いた防御の動作であり、セオリー通りの動きであった。
――バッゴォォォーーーーーーン!!
「うがっ!」
アナスタシアの攻撃は、踏み込みの勢い、ハンマーの質量、そして超高速の遠心力――そのすべてが乗った凄まじい一撃だった。
巨大なウォーハンマーは、盾をまるで紙のようにへこませ、その勢いを失わないまま、兜と肩のプレートアーマーまで、ぐにゃりと変形させていた。
――ガッシャ―ン
ダメージが身体にまで達し、騎士は気を失ってそのまま倒れた。
審判が近寄って確認するが、騎士はぴくりとも動かなかった。
「受験生の勝利!……担架だ! すぐに運んでくれ」
その声を聞き、サポートの人間たちが、担架を持って急いで駆け寄って来る。
「あ、あの私も、治療ができますけど、お手伝いしなくてもよろしいですか?」
「ああ、大丈夫だ。知っての通り試合会場は魔法が封じられているので使えない」
「場外で神聖騎士団の騎士が、治療のために待機しているから、彼らに任せるんだ」
「わかりました」
――神聖騎士団か……
アナスタシアは考えた。
神聖騎士団の騎士は、同時に神官でもあった。
さまざまな神聖魔法を駆使しながら、騎士としても戦う。
――私に合っているかも!
そのように考えていると、審判から声をかけられた。
「この試合は、騎士の戦闘不能により、君の完全勝利で終了だ」
「では、二本目の試合はしなくてもよろしいでしょうか?」
「……ああ、そうだ。我々は君の実力を完全に見誤っていたよ。おめでとう」
対戦実技試験は三本勝負、二本先取が原則だった。
ただし、相手が戦闘不能になった場合は、その時点で勝利が確定する。
アナスタシアが試合場から出てくると、複数の受験生たちが、目を輝かせながら待っていた。
「試合が終わるのが早すぎます!」
「あの衝撃音、どんな戦い方をしたのですか?」
「もしかして……」
アナスタシアは少し照れながら答える。
「ええ、勝ちました」
受験生の間から歓声が起こった。
「凄い、凄すぎる!」
「教官相手に勝てるものなんだ!」
「これは、トーナメントに進出決定だな!」
アナスタシアは、周囲の興奮気味な雰囲気とは対照的に、少し困ったような顔をした。
そして、意を決するように話した。
「皆さんすみませんっ! お詫びしなければならないことがあります!」
――なんだ、なんだ?
急に受験生たちも静かになっていく。
「相手の騎士の方が戦闘不能になってしまいましたので、この列もしばらくお休みです!」
――シーン
受験生たちの間に、一瞬の沈黙が流れた。
そして、受験生の一人がポツリと呟いた。
「勝っただけじゃなく、戦闘不能にまでしたのかよっ!」
その直後、大歓声が上がった。
「えっ?」
アナスタシアは、戸惑った。
彼女には、他の受験生たちに迷惑をかけてしまったという思いしかなかったからだ。
アナスタシアに、新たな伝説が付け加えられることになった。
一つ目は、二戦連続で教官相手に勝利したこと。
二つ目は、その内容が、二人とも一撃で戦闘不能にしたというものだった。
この前代未聞の勝利により、受験生たちはアナスタシアに対し、尊敬の念を抱くようになっていった。
そしてこの勝利は、彼ら自身の心の中にも、「自分たちにもできるかもしれない」という「自信」や「勇気」を芽生えさせるきっかけへとなっていた。
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