第24話 筋肉聖女、不正を吹き飛ばす!
冒険者風の教官役の男は、まるでカードを扱うかのように、剣を左右の手の間で高速で行き来させていた。
「……お嬢さん、型通りの剣技で来ると思ったら大間違いだぜ」
「お構いなく。私は相手がどのような戦い方であろうとも、この武器で戦いますので」
アナスタシアはウォーハンマーを片手で軽々と持ち上げる。
「ぷはっ! ハッタリは通用しないぜ! さあ、早く剣を出しな!」
相手の男は笑いが止まらなかった。
少女が似つかわしくないハンマーを持つ姿が、男には必死のハッタリにしか見えなかったためだ。
「ハッタリなんかではありませんよ。私はこの武器が一番好きなのです」
「くくっ! 最後まで意地は貫き通すって訳だ」
「……でも、大学が用意した癒し手までいるんだ。どんなにケガをしようが、容赦はしねえぜ」
「それは助かります! 私はあなたを治療する必要がないということですね!」
「……てめぇ! 言ったことを後悔させてやる!」
男の顔が薄ら笑いの顔から、本気の顔へと変わった。
お互いに礼を交わし、構えたところで審判から声がかかった。
「始めぇッ!」
教官役の男は剣をやや上に持ち上げた独特の構えから、牽制の突きや振りを繰り出す。
その戦い方は、決して油断をしないプロの戦い方だった。
そして、じりじりと距離を詰める。
一方のアナスタシアは、ウォーハンマーを斜め下に構えたまま動かない。
しかし、相手の男が、一歩距離を詰めた瞬間だった。
アナスタシアも一歩踏み込み下からすくい上げるようにハンマーを振り抜く。
教官役の男は、咄嗟の反応でハンマーによる攻撃を剣で受けようとしてしまった。
――ガッキーーーーーーーーン!!!
「へぶしっ!」
アナスタシアの攻撃により、教官役の男は七メートルほどの高さまで吹き飛ばされ、そのまま回転しながら場外へと落下していく。
――ドシンッ!
審判が慌てて教官役の男の傍へと駆け寄る。
審判は男の状態を確認し、すぐに手で合図をし、声を荒げた。
「担架だァ! 急げっ!」
そして、アナスタシアの元に戻り、大きな声で告げる。
「教官役、場外、及び戦闘不能状態により、受験生の勝利!」
採点役の騎士は、苦そうな顔をしたまま、結果を書き込む。
試験会場の外はざわついていた。
「おい、見たか?」
「見たっ!」
「上空に吹っ飛んでた人って、やっぱり教官役だよな?」
「う、うん。それ以外は考えられないよ」
受験生たちは幕で覆われた試合会場の様子を見ることは出来なかった。
しかし、大きな打撃音と共に、人が宙に舞い上がる姿だけは見えていた。
しばらくすると、左の会場からアナスタシアが出てきた。
受験生たちは恐る恐る彼女を見た。
その複数の視線に気づいたアナスタシアは、笑顔で答えた。
「……この列は少しだけお休みになったみたい」
その言葉を聞いた瞬間、受験生たちはアナスタシアの底知れぬ恐ろしさに硬直した。
しかし、先ほど彼女を馬鹿にしていた者たちだけは、膝から下がガクガクと震えていた。
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