第23話 筋肉聖女、賄賂を要求される!
注意事項やルールの説明を受け、奥にある会場へと進むと、冒険者のような中年の男性騎士が待っていた。
「待ちくたびれたぜ。名前と身分は?」
――身分? 今までの試験では名前以外は聞かれなかったけど……?
違和感を覚えつつも、アナスタシアは正直に答える。
「アナスタシア・ルクサリス。ルクサリス侯爵家の当主です」
「へぇ、その若さで跡目を継いでるのかい? 立派なもんだ!」
「ありがとうございます」
「じゃあ、路地裏での募金活動は済ませてきてるよな?」
「???」
「うちらみたいな貧しい平民に、施す気があるかどうかってやつだよ」
「何のことでしょう? 路地裏で募金活動が行われているのですか?」
「……お前、本当に何もしらないのか?」
「はい。どういうことなのでしょうか?」
「ああ、若くして跡目を継いだから、他の貴族たちから教えて貰ってないんだな……」
「すみません。本当に何も知りません」
「……しょうがねぇ、特別に教えてやるよ」
「金を持っている貴族さまたちは、大学正面の裏路地で行っている募金活動で、まず寄付を済ませる」
「そこで『お礼の言葉』を聞く。そして、対戦実技試験では一番左に並ぶ」
「対戦の前に『お礼の言葉』を言うかどうかで、試験の難易度が変わるっていう仕組みだよ」
「……はい???」
「まあ、お嬢さんは知らなかったようだし、あとで絶対に10金貨を寄付すると約束さえしてくれれば、今回はそれでやってやるよ」
「……つまり、分かりやすく言い換えれば、手心を加えて欲しければ賄賂を寄越せということですね?」
「おい、おい、おい、そんなことをしたら不正になっちまうだろうが!」
「明らかに不正でしょう!」
「違うぜ。どんな騎士でも、体調がいいときもあれば悪いときもある」
「その巡り合わせの運が、ほんの少しだけ変わるってだけさ」
「分かりました! そんな体調の変化は不要です! 全力できてください!」
「……ふっ、馬鹿だな。何で試合があっという間に終わっていたか、教えてやるよ」
「わざと、すぐに負けていたからでしょう?」
「違うぜ。平民や、お前みたいな融通の利かねぇ奴には、容赦をしなかったからだ!」
その言葉を聞き、アナスタシアは怒りに震えた。
「身分の差で、公平な試験を穢すような真似は絶対に許しません!」
「……後悔させてやるぜ!」
こうして、実技試験ではあるものの、お互いに本気での「対戦」が始まろうとしていた。
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