第20話 筋肉聖女、剣技を披露する!
魔法試験を終えたアナスタシアは、続いて騎士コースの攻撃の型の試験会場へと向かった。
試験は十人一組。
大学が用意した同じ大きさの剣と盾を使って行われる。
攻撃の型は、基本的な騎士教育を受けていれば、誰もが身につけている基本動作だった。
だからこそ、基本動作をどれだけ正確に再現できているか、そして、準備動作や所作まで無駄なく仕上げてきているか――そこが点数を分けるポイントだった。
大学側が用意した鉄製の剣と盾は、全受験生が同じものを使う。
集団戦を想定し、また、公平さを期す仕組みでもあったが、体格によっては有利・不利が出てしまう試験でもあった。
受験票を受付の水晶にかざし、アナスタシアは列に並んだ。
受験生たちに剣と盾が配られる。
「装備に不具合がないか確認しなさい。問題があれば交換するので申告して――」
受験生たちは、実戦用と同じ重さの剣と盾に少し戸惑っていた。
しかし――
「……あら、かなり軽いのね」
アナスタシアだけは、まるでペンでも扱うように、剣と盾を軽々と扱っていた。
その言葉を聞き、受験生の中には「ギョッ」とした表情でアナスタシアの方を見る者もいた。
担当者の言葉に従い、一通り装備を確認した後、白線の前に並ぶ。
前の受験生の審査が終わったタイミングで、審査場に出るように指示がなされる。
そして、開始の合図とともに、攻撃の基本の型の試験は始まった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「エイッ! オーッ!」
指示された剣の型を、掛け声とともに披露していく。
試験官は大学の騎士の教官たちと、国の騎士団から出向してきた騎士たちによって構成されていた。
通常であれば、試験官の好みや判断基準の違いにより、採点者全員から満点をとることは非常に難しかった。
――あの娘は何者だ……?
採点中のため口には出さないものの、多くの試験官が同じように思っていた。
試験が集団で行われているために、上手すぎる人間はどうしても目を引いてしまう。
その上手すぎる人間が、アナスタシアだった。
軽々と剣を操り、何よりもそのキレが普通ではない。
その剣を振りきった姿は、見ている者に切り伏せられた敵の存在を想像させてしまうほどの出来栄えだった。
正確な剣筋。
無駄のない足運び。
そして、振り切った直後の静止。
動と静の切り替えがあまりにも美しく、そして鮮やかだった。
アナスタシアは、実は剣技にも相当の自信を持っていた。
小さなころから、騎士でもあるじいやから、剣の手ほどきを受けて育ってきたためだ。
それでもアナスタシアは、自らの武器にウォーハンマーを選んだ。
理由はシンプルだった。
剣で斬ると、治癒魔法を使うときに身体を繋ぎ直さなければならない。
――それが、めんどくさい。
そんな理由だった。
攻撃の型の試験が終わり、アナスタシアも「ふぅっ」と緊張の糸を解きほぐすと、試験官だけでなく、次に控えている受験生たちまでも、自分に注目していたことに気付いた。
――あれっ? みんな私を見てる!? ……分かった! これが見たいのね!
アナスタシアは受験生たちに、斜め正面から腕や胸の筋肉で魅せるポーズを決めた。
「……フゥッ、サイドチェスト!」
その途端に、受験生たちは一斉に目を逸らした。
「えぇっ? なんでぇぇぇ!?」
誰も答えない。
むしろ、受験生たちは急ぎ足で去っていく。
彼らは心の中で同じことを考えていた。
――この人には、絶対に関わってはいけない、と。
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