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筋肉聖女 ~神聖魔法より筋トレを選んだ侯爵令嬢、ウォーハンマーで無双する~  作者: みーしゃ


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第2話 筋肉聖女、出撃!

 ルクサリス領の田舎にある小さな砦。


 本来ならば、領民を守るための防衛拠点であるはずの場所が、今は恐怖に包まれていた。


「状況を説明せよ!」


 家令のじいやが、責任者に説明を求めた。


 警備隊長の騎士が頭を下げ、険しい表情で答える。


「盗賊団の人数は、およそ三十名ほどです」


「こちらの警備兵と冒険者たちを合わせれば、戦力では上回っています」


「しかし……」


 隊長は丘の頂上にある砦を見上げる。


「盗賊たちは数名の若い女性を人質に取っています」


 その言葉に、周囲の騎士たちの表情が曇った。


 普通に攻め込めば、盗賊を倒すことはできるかもしれない。


 しかし、人質の命に危険が及ぶ。


 それが、この状況の難しいところだった。


「国の騎士団へ救援要請は?」


「すでに送っています。しかし、ここからですと、最短で三日はかかると思います」


「三日か……」


 騎士たちの皆が沈黙した。


 三日もあれば、盗賊たちが何をするか分からない。


「だから、私を呼んだのですね?」


 美しい声が響く。


 声の主に顔を向けた騎士たちは、思わず息を飲む。


 輝く金髪。


 透き通る青い瞳。


 誰もが振り返る美貌。


「アナスタシア・ルクサリス様……」


 ルクサリス侯爵家の若き当主。


 そして――。


 将来、聖女の称号を授かるのではないかと噂される、神聖魔法の使い手だった。


 騎士隊長は改めて深々と頭を下げた。


「どうか、侯爵さまのお力をお貸しください」


 アナスタシアは優しく微笑む。


「もちろんです」


 その笑顔に、騎士たちは安堵した。


 さすが聖女候補。


 きっと神聖魔法で盗賊たちを無力化してくれるに違いない。


 しかし――。


 アナスタシアの背後には、巨大なウォーハンマーがあった。


「作戦を説明します」


 警備隊長が地図を広げる。


「夜になり暗くなりましたら、アナスタシア様には神聖魔法をお願いしたいと思います」


「邪心を持つ者の動きを制限する神聖魔法です」


「そして、盗賊たちの動きが鈍った瞬間に、我々が突入します」


 完璧な作戦だった。


 盗賊を倒し、人質も守るためには、これしかない。


 隊長は頷く。


「いかがでしょうか?」


「なるほど」


 アナスタシアは真剣な表情で考える。


「今すぐ突撃しましょう!」


 隊長の笑顔が固まった。


「いや、アナスタシア様……」


 隊長は困ったように説明する。


「相手は三十名以上おり、人質までいるのです」


「ですから、まずは神聖魔法で――」


「うん、うん」


 アナスタシアは大きく頷いた。


「ですから、突撃です!」


「……はい?」


「人質の方々が怖い思いをしているのでしょう?」


 その瞳には迷いがない。


「一刻も早く助けなければなりません!」


 隊長は一瞬、心を打たれた。


 さすがは将来の聖女候補。まずは人質となっている領民のことを第一に考えているのだと。


「しかし、明るいうちから真正面への突撃はあまりに危険です。まずは神聖魔法を使用していただいてですね……」


「今すぐ突撃しましょう!」


「……あの、すみませんが」


 隊長は恐る恐る尋ねる。


「話を聞いておられましたか?」


「もちろんです!」


 アナスタシアは胸を張った。


 そして、持参したウォーハンマーを肩に担いだ。


「あの、アナスタシア様!?」


「安心して。人質は必ず全員救い出します」


 アナスタシアは、迷いなく微笑んだ。


 その笑顔には、恐怖も不安もなかった。


 あるのはただ――必ず救うという確信だけ。


 次の瞬間。


――ドォォォン!!


 大地が揺れた。


「突撃――!!」


「えーーーーっ!?」


 彼女は一人、盗賊の砦へ駆け出した。


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