第17話 筋肉聖女、入学試験を受ける!
宮廷大学を目指すと決意した日から、アナスタシアは必死にトレーニングと学習を続けてきた。
そしてついに、受験初日である筆記試験の日を迎えた。
前もって泊まっていた王都の宿から、じいやとお付きの人間を連れ、大学内の会場へと向かう。
そして、大学の窓口で手続きを行った。
「ここで、しばしのお別れですな。ご武運をっ!」
「何だか今日は身体が軽いの。何か上手くいく気がするわ!」
アナスタシアは笑顔で答える。
――今日はあの巨大なウォーハンマーを持っていないのだから、そうでしょうね……
お付きのメイドが心の中で軽くツッコミを入れる。
ただ、お嬢さまがリラックスして試験に臨めそうなことに、喜びを感じていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
筆記試験が終わり、アナスタシアが大学から出てきた。
「お嬢さま、いかがでした?」
「それがね……」
「はい」
「全問解けたの!」
「そうですか! 筋肉に覚えさせた甲斐がありましたな!」
――いや、筋肉から刺激を受けた脳が覚えたんだと思います!
メイドは口には出さないものの、試験が上手くいったことにホッとしていた。
「口頭試問はいかがでした?」
「簡単な所から、かなり細かいところまで聞かれたのだけど――」
「数問だけ、かなり難しい質問が出されたの!」
「なるほど。あえて点差をつけるために、少し難問を混ぜているのですな」
「でもね、長母指屈筋の盛り上がりを見たら、全て思い出せたの!」
「それは凄い! 筋トレを続けてきて良かったですな!」
「やっぱり、筋肉の中から答えが湧き上がってくるのね!」
――いやいやいや、時間をかけた努力の積み重ねと、お父さまお母さまの子だからでしょう。
メイドは、アナスタシアの両親が、勉強家で知識が豊富にあり、非常に優秀な方だったことをよく知っていた。
そして、アナスタシアも、幼少の頃から非常に頭が良い子だったことも知っていた。
しかしメイドは、何でも筋肉の方向へと進んでしまうことだけが少し心配だった。
「では、明日が本番ですな」
「そうね!」
「では、軽く準備運動でもしておきますか」
「ふふっ、そうね!」
アナスタシアは、明日の実技試験が楽しみで仕方がなかった。
そこには、受験生特有の緊張感というものは全くなかった。
――ふふ、お嬢さまらしい。
旦那さま、奥さま。お嬢さまは立派に育っていらっしゃいますよ。
メイドは空を見上げ、今は亡き侯爵夫妻に報告をするのだった。
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