第16話 筋肉聖女、宮廷大学を目指す
自領へ戻ってきたアナスタシア一行。
王都で買い込んだ大量の蔵書を前に、さっそく宮廷大学の試験対策が始まった。
「お嬢さま、まずは試験内容の確認をしましょう」
「はい」
「カリスティア王国王立宮廷大学入学試験は、筆記試験と実技試験に分けられます」
「特に宮廷大学は、筆記試験の科目が多いのが特徴です。八科目の中から五科目を選択して受験します」
「多いのね」
「はい。神学、騎士学、魔法学、法律学、言語学、数学、地理学、歴史学」
「この八科目から五科目を選択します。そして、その後に面接試験がございます」
「面接試験?」
「正確には、口頭試問ですな。その場で出された質問に、口頭で答えていただきます」
「うわ、難しそうね!」
「いえ、問われるのは基本的な内容のため、しっかりと勉強をしていれば大丈夫のようです」
「……そうなんだ」
アナスタシアの顔が曇ったため、じいやは安心させる言葉をかける。
「大丈夫ですよ。何を聞かれても答えられるくらいにまで練習をしておきましょう。じいやも付き合いますので」
「うん!」
アナスタシアの顔が明るくなる。
「そして、実技試験ですが、騎士コースでは次のような構成になっています」
「魔法実技試験が一回。そして、騎士の攻撃の型と防御の型を確認する試験があります」
「さらに、教官との対戦実技試験が三回あります」
「たくさんあるのね」
「はい。さらに、実技試験には特別な加点要素があります」
「魔法以外の実技の合計点が高かった上位十六名は、受験者選抜トーナメントに進むことができるのです!」
「そうなんだ」
「……ちなみに、騎士の実技試験と選抜者トーナメントでは、魔法は一切禁止です」
「えっ!?」
アナスタシアは驚きの表情を見せた。
「……はい。仮に膨大な魔力を持っていたとしても一切使えません!」
「ということは……?」
アナスタシアとじいやが、ゆっくりと顔を合わせる。
二人の目が、同時に輝いた。
「筋肉で勝負できる!!!」
二人の声が、ぴたりと重なった。
お茶の準備をしていたメイドが、思わず転びそうになった。
――お嬢さまの桁違いの魔力が使えなくなったのに、かえって喜ぶのですかー!
メイドは声にこそ出さなかったものの、心の中でツッコミを入れていた。
「うわー、試験とトーナメントが今から楽しみになってきたなぁー」
「私もです。お嬢さま!」
――お二人とも、選抜者トーナメントまで、すでに出場するつもりなんですね……
メイドは二人の自信に頼もしさを感じ、顔から笑みがこぼれていた。
「では、そのためにも、まずは基礎の積み上げをしませんと」
「……そうね!」
――そうです! まずは学科試験ですよ、お嬢さま。
「スクワットからでいいかしら」
「はい! 足腰は基礎中の基礎ですからな!」
――そっちの基礎からですかーーーっ!
再びメイドは転びそうになったが、二人はトレーニング場へと消えていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
今日もルクサリス家の朝は早い。
ただし、日課のトレーニングの内容が少しだけ変わった。
いつも通りアナスタシアは、バーが大きくしなるほどの重量を載せたバーベルを持ち上げる。
しかしじいやは、掛け声の代わりに質問を行う。
「斜線陣とはどのような陣形か?」
「……自軍の左側に主戦力を配置し、――フンッ!」
「右側へ行くに従って少しずつ斜め後方に兵士を配置する陣形――ハァッ!」
「どのような相手に適しているのか?」
「……重装歩兵などによる密集した方陣――ウォーリャッ!」
知識を頭と筋肉の両方に刻み込む!
それが、アナスタシア独自の勉強法だった。
朝の日課をこなしたアナスタシアは、今日も朝日に向かって両腕を折り曲げ、背中で魅せる。
じいやも仕上げの声掛けを行う。
「デカい! デカいですぞ!」
「カーフもデカ過ぎですッ!」
「その腹斜筋なら、野菜をすり下ろせますゾォォォォォッ!」
そして、じいやが最後の決め台詞を叫ぶ。
「ナイスバルクッ!」
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