第15話 筋肉聖女、返答する!
「陛下……ありがとうございます!」
「おお、受けてくれるか!」
「私は騎士になりたいと思っております!」
「その魔力量じゃ。てっきり魔導師を目指すものと思っていたが……」
「だが、めでたい話じゃ!」
貴族たちの間から歓声が沸いた。
「ですが、陛下。私は王国の騎士として本当にお役に立てるように、宮廷大学で学んだ後に自らの力で騎士になりたいのです!」
「宮廷大学か」
国王は宰相の方をチラリと見る。
――王国の騎士になるために大学へ行きたいと言われてしまうと、それは拒絶しにくい。
宰相は少し残念そうな顔のまま、王に対しゆっくりと頷いた。
「亡き父も宮廷大学で学んだ後に叙任されました。私も父と同じように学びたいのです!」
その言葉は決定打となった。
アナスタシアは、王国の騎士になることを拒んだわけではない。
むしろ、誰よりも王国の騎士になる意思を示している。
ただ――宮廷大学でしっかりと学んで騎士になりたいと言っているだけだ。
それを国王が無理に覆せば、今度は「なぜそこまで急ぐのか」と、貴族たちに疑念を抱かせることになる。
それを説明できる理由を国王は持っていなかった。
国王が再び宰相に目を合わせると、苦虫を押しつぶしたような顔をしたまま、再び頷いた。
「それは立派な考えだ! ルクサリス侯爵!」
貴族たちからも感嘆の声が上がった。
「余もそなたを応援したい! ただし、不正入学の相談は断るぞ」
王のジョークに対し、貴族の間からどっと笑いが起きる。
「では、あらためて今回の功績に対しては、勲章と金貨を授けることとする!」
貴族からは、アナスタシアと国王の両方に対する感嘆の声が上がった。
その後、別の貴族の表彰等が続き、アナスタシアの謁見は終わった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
謁見を終え、アナスタシア一行は王都の宿泊先の宿まで戻ってきた。
「お疲れさまでした、お嬢さま」
「ありがとう、じいや。一緒にお茶でも飲もうよ」
「承知いたしました」
じいやも席に着き、メイドがお茶の準備をし始めた。
「ところで、お嬢さま。陛下への切り返し、実に見事でしたぞ」
「よかった! あれで正解だったのね」
「正解も何も、まさにあの答えしかないという満点の回答でしたぞ」
「私も考えてみたの。陛下に恥をかかせることなく、お互いに納得できる答えを」
「すると、宮廷大学で学びたいと言うしかないなって」
「いやいや、咄嗟にあのような切り返しが思いつくとは……とても十四歳の少女にできることではありませんぞ」
「まあ、上手くいかなかったときのために、もう一つの返答もあったし」
「なんと! 他にもあったとは、ぜひ、その『もう一つの答え』をじいやにも教えてください」
二人は紅茶を飲みながら話を進める。
「いいわよ」
「それはね……」
「ドレスを破り捨てて、鍛えてきた広背筋や上腕二頭筋を見せることよ!」
――ブーーーーーーーーーーーーーーーッ!
じいやは勢いよく紅茶を噴き出した。
「えっ? 何で吹くのよ! じいやが教えてくれたんじゃない!」
「鍛え抜いた背中を見せれば、誰もが屈服するって!」
「う、上手くいかなかったときは……あの場で、筋肉を披露するつもりだったのですか?」
「もちろん、そうよ!」
――ブフッ!
再び、じいやが噴き出す。
「だから、何で笑うのよ!」
「いや、想像しただけで、つい」
アナスタシアはぷぅっとふくれっ面になる。
「……いや、それでよいのです。お嬢さまが鍛え上げてきた筋肉こそが、お嬢さまに自信と結果をもたらしているのです」
「……そうなの?」
「はい、自分の道を信じて進んで下さい!」
「分かった!」
こうして、アナスタシアは教会にも国王にも縛られることなく、自らの意思で宮廷大学を目指すこととなった。
彼女が大学時代に残していく数々の伝説は、実は謁見のときから始まっていた。
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