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部屋。
殺風景で、よく言えばすっきりした部屋。
2段ベッドがたくさん並び、窓がひとつだけある。
人数の割に、ベッド多くね?
それに。
使われてないのに、妙に“整いすぎてる”。
俺とスズメ。
二人だけにしては、明らかに広い。
まるで、"今まで"。そして"これから"。たくさんの人が居た。或いはやってくる。
そんなことを感じさせる異様感。
そそくさ。
慣れたように。スズメは身近のベッドに座る。
二段ベッドの下段へと。
そして。
「変なことしたら、マリアさまに報告します」
じっと俺を見つめ、そんなことを言いやがる。
このメスガキ。
俺をそこら辺の獣かなにかと思ってんのか?
「変なことってなんだよ。言っておくが、俺はてめぇみたいなちんちくりんに興味なんてねぇから。くだらねぇこと言ってんじゃねぞ」
「なんですか? その物言い。一応、言っておきますけど……わたしはマリアさまに嫌われたくない。その一心であなたと組んだんですから」
「そりゃ俺もおんなじだ。愛しの人に嫌われたくねぇもん」
「愛しの人? わたしのほうがマリアさまを愛し、愛されています」
「は? 俺のほうが愛されて。愛しているぜ」
「わ、わたしのほうが」
「お、俺のほうが」
「わたしのほうが!!」
「俺のほうが!!」
「「愛しッ、愛されてる!!」」
響く、俺とスズメの思い。
…バカみてぇだな。
互いに威嚇し、そっぽを向く。
だが、そんなことをしてもこれっぽちも意味がない。
仕方ねぇ。
ここは俺が折れてやるか。
年上の余裕ってもんを見せてやるぜ。
「はぁ。こんなことしても意味がねぇ」
「そんなわけで提案だ」
「提案?」
訝しむ、スズメ。
完全に俺を嫌ってやがる。
しかし、そんなことはどうでもいい。
「ここはマリアさんのことが好き者同士。マリアさんを困らせるようなことをしないってことで手を打とう……どうだ?」
しばしの熟考。
そして。
「わかりました。それなら大丈夫です」
それなら。
ってなんだ、それならって。
まるでそれ以外の提案をしたら、拒否るみたいな感じ。
「あのな。そもそも、俺とお前が組むことを提示したのはマリアさんだぞ?」
「その提示を不愉快に思うってことは。お前、マリアさんのこと」
しかし俺はそれ以上のことは言えなかった。
「マリアさまのこと。マリアさまのことを。なんですか?」
口調は変わらない。
しかしその身は微かに震え、俺を見つめるその瞳にも先ほどまであった光は無い。
その姿。
それに俺は、
「な、なんでもねぇよ」
と返し、でかかったーー
【好きじゃないだろ】
という言葉をぐっと飲み込む。
もし、その言葉を吐いたのなら。
多分。
いやおそらく。
俺は、スズメに一生、口を聞いてもらえない。
そう直感してしまったからだ。




