5
店の外。
幸せなひととき。とても幸せな時間。
それを過ごし、俺は天にも昇る気持ちだった。
サンドイッチ。
ココア。
また、食べて飲みたいな。
あんなうまいもん。この世界にあったなんて知らなかった。
「おいしかった?」
「はい!!」
「よかった。ノアくんにそう言ってもらえると私も嬉しいな」
笑ってくれる。
「あ、あの」
「ん?」
「俺。ま、また食べたいです。そ、その。マリアさんといっしょに。また!!」
「うん。今度はもっとおいしいもの。食べにいこっか」
もっとおいしいもの?
あ、あれよりもっとおいしいものがこの世界にはあるのか?
せ、世界ってひろっ。
俺の真正面に立つ、愛しの人。
そして。
「世界にはあるんだよ。ノアくんのはじめてを超えるはじめて。それがたくさん」
「でね。それは、食べ物だけじゃないんだ」
食べ物だけじゃない。
そう言った時の瞳。
そこには、宿っていた。
男の本能。
それを刺激する灯火が。
「食べ物。だけ、じゃ…ない」
「そう。しかもそれはね。ノアくんのココにとっても響くモノなんだ」
俺の胸。
そこに触れる、温かな手のひら。
どくんっ
「ノアくん」
「ま、マリアさん」
間近に迫る、顔。
なにもかもが完成された顔。
「これからもっとたくさん。わたしが教えてあげるね。ノアくんの」
「はじめてのはじめても」
「は……はい」
恍惚とするしかない。
にこっ。
離れ。
くるりと。
身体を反転させた、愛しの女性。
そして。
「じゃっ、ノアくん。いこっか」
「どどど。どこへでも」
笑ってくれる。
「俺。嬉しいです。ま、マリアさんみたいな綺麗な人に買われて」
歩きながら。
俺はつい、心の声を漏らしてしまう。
それに。
「わたしも嬉しいな」
前を向いたままーー
「とっても」
「いい【買い物】ができて」
マリアはそう、答える。
無機質な笑み。それをその顔に張り付けながら。
そう答えたのであった。
〜〜〜
どこかの外れ。
そこに佇む、デカい建物。
その中に、俺は居た。
書類。書類。書類。
本。本。本。
しかしそれらは綺麗に整頓されている。
「ノアくん」
「ここがこれからの君の場所」
「早速だけど部屋に案内するね」
「ノアくんとしばらく組んでもらうことになる【子】。その子も紹介してあげるから」
視線の先。
そこでマリアはそう声を発する。
えっ?
それ、やだ。
「お、俺。マリアさんとずっといっしょにいたいです!!」
当然のように心の声が出てしまう。
それに。
「ノアくん」
「ご褒美。その中にはあるんだよ」
「【わたしとずっといっしょにいる】っていうご褒美も」
それなら大丈夫です。
「俺ッ、誰とでも仲良くできます!!」
「よかった。じゃっ、早速入ってもらうね」
「はい!!」
ご褒美の為だ。
誰とでも仲良くなってやるぜ。
「入ってきて。スズメ」
がちゃっ
さて。どんな奴がーー
って。
「す、スズメです。よよよ。よろしくお願いします。しゅ、趣味は小鳥ウォッチング。す、好きなことはマリアさまに従うこと。ききき。嫌いなことは」
ちらり。
「しょ。初対面の人と組むことです」
ただの変な雌ガキじゃねぇぇか。




