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足が軽かった。
なぜだがわからない。
視線の先には、ナイフをもつ数人の連中。
その目には明らかに殺意が宿っている。
だが、怖くはなかった。
なぜなら。
「だって、俺。再生るし」
気づけば口に出していた。
奴等の眼前で、楽しそうに。
きっと、俺は笑っていたに違いない。
いつもの不器用な笑み。それを浮かべていたに違いない。
奴等は反応する。
なにかを叫びーー
俺にナイフを突き立てようとした。
その時。
俺はまた言ってやった。
「俺、再生るよ?」
と。
当たり前のようにナイフが突き刺さる。
肉を抉る音。それが、うちに広がる。
痛い。いたい。イタい。
いたく、ない。
ナイフが抜かれた瞬間。
傷口は瞬時に塞がる。いや、再生っていく。
血も止まる。
奴等は、しかし引かない。
「はははッ、やっぱりてめぇを手放すわけにはいかねぇな!!」
「金ッ、金ッ、金ぇ!! てめぇがいれば国家予算どころの騒ぎじゃねぇからな!!」
焦点があっていない。
欲にまみれ、その表情はもはや人の皮を被ったなにか。
それを見て、俺は思う。
金よりもっといいもんあるんじゃねぇの?
こいつら、どんだけ金が欲しいんだ?
と。
太陽はあったかい。
風も心地よい。
空気もうまい。
普通に歩けて、普通に飯が食えて、普通に生きれて、普通に名前を呼んでもらえて。
そっちのほうがいいんじゃねぇの?
とも思ってしまう。
しかし。
「お前の次はあの女だ!! 面はいいからなぁ!! そうだなぁ。てめぇと同じようにッ、俺たちの金ヅルになってもらおうか!!」
響いてしまったその言葉。
それを聞いた時。
俺の理性は消し飛んだ。
"「好きだな」"
そう言って、俺に微笑んでくれたはじめての女性。
そのヒトを侮辱された。
侮辱すんじゃねぇ。
侮辱すんじゃねぇ!!
ブチ殺すぞぉ!!
「刺せよッ、刺せッ、刺せッ、刺せぇ!!」
「再生るッ、俺はぜんぶなおっちまうからなァ!!」
叫び。
奴等に刺されながら。
俺は、奴等をぶん殴っていく。
拳ひとつで。それこそ、壊れたように。
「金ッ、金ッ、金ぇ!!」
「んなもんよりッ、俺はマリアさんのほうが大好きなんだよ!! わかったか!? わかったならッ、黙って俺に殴られてろォ!!」
「金ッ、金こそがこの世の全てだ!! 全てッ、全てッ、全てぇ!!」
「俺の全てはマリアさんだ!!」
散る鮮血。
呼応し、反響しあう奴等の欲にまみれた叫びと俺のマリアに対する思い。
その光景。
それは、あまりにも歪だった。
しかし。
マリアの顔に宿るのは、無機質な笑み。
そして。
「ノアくん」
「ご褒美に。わたしがお昼ご飯を食べさせてあげる」
呟かれたその言葉にもまた、一切の感情も宿ってはいなかった。




