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やります!
そうは言ったものの。
具体的になにをすりゃいいんだ?
壊す側。
っつうことは--
「……っ」
あの既に限界のヨミとかいう奴を、一方的に蹂躙しろ。っつうことか?
マリアさんを見る。
笑っている。
相変わらずお美しい。
でも、その顔はどこか無機質。
それはまるで。俺の判断を待っている。そんな雰囲気を醸しているかのよう。
考えろ。
マリアさんが求めていること。
それはなんだ?
「“壊される側”じゃなくて」
「“壊す側としてどこまでいけるか”見てみたいな」
マリアさんの発した言葉。
それを反芻しながら、俺は詰める。
ヨミとの距離。
それを一歩ずつ。
立ち止まる。
見下ろす。
ヨミはこちらを見上げる。
そして、言った。
「はやくやれよ」
「俺を壊すぐらい」
「楽勝だろ」
「あぁ。楽勝だ」
けど。
壊す。壊す。壊す。
壊される。壊された。
思い出す。
壊れ、壊された親の姿。
天井からぶら下がった、親の姿。
握られた拳。
それを見つめ、俺は呟く。
「俺は」
マリアさんを見る。
期待している眼差し。
熱のこもったそんな眼差し。
マリアさん。
綺麗で、俺を買ってくれた人。
そして。
スズメを見る。
どこか怯えている。
再び、ヨミを見る。
覚悟を決めた。そんな顔。
壊れてもいい?
壊してもいい?
いや、ダメに決まっている。
俺は別に、マリアさんの為なら壊れてもいい。
けど。
「俺以外が壊れるの」
「見たくねぇ」
「俺が壊すのも」
「なんか違う気がする」
思わず、つぶやいていた。
「マリアさん」
「俺。壊れる側なら大丈夫なんです」
「けど」
「壊す側には」
そこに、割り込む。
マリアさんの機械的で温かな声。
「なりたくないんだね」
頷く。
はい。
俺、失望された。
マリアさんに嫌われた。
くそっ。
でも。
「マリアさん」
「すんません」
「俺のこと嫌いになっちゃいました?」
聞いてみる。
顔を見ずらい。
きっとマリアさん。
とっても困った顔をしるんだろうな。
そんな顔。
俺は見たくない。
だって、つれぇもん。
大好きな人の困った顔なんて見たくねぇもん。
しかし。
「ノアくん」
「それがノアくんの決めたことなら」
「わたしは尊重するよ」
響く声。
それに俺はマリアさんを見る。
ま、マリアさん。
「誰だって壊す側には誰もなりたくないもん」
「でも」
じっと、見られる。
「ノアくん。壊れる側なら大丈夫なんだ」
「うん。やっぱり、わたし。ノアくんのこともっと知りたいな」
微笑んでくれる。
あ、あれ。
もしかして、俺。
嫌われて--ない?
「お、俺のこと」
「ん?」
「き、嫌いになってないんですか?」
「なるわけないよ」
にこり。
「だって」
「まだまだわたし」
瞳に宿る、薄暗い光。
そして。
「ノアくんのこと知りたいんだもん」
そう言い切ったマリアさんの顔。
それは今まで見たマリアさんの顔より、数段。
綺麗で、美しかった。




