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あれから、色々な場所を巡った。
入ってはダメ。
そんなところが多かった。
まぁ、仕方ない。
まだペーペーだからな。
あの声は気になる。
だけど、またいつか。
マリアさんに聞いてみよ。
マリアさんなら優しく教えてくれそうだし。
「で、ここが書物庫」
「ここにはね。たくさんの書物があるの」
弾んだ声。
「わたし。ここでたくさんの本を読んだんだ」
「へぇ」
「ノアはさ」
「好きな本とかあったりする?」
ずらっと並んだ本棚。
そこにところせましとつまった書物。
それらを指で差しながら、嬉しそうなスズメ。
しかし。
「なら。えっちな本とかあんの?」
「は?」
「だから。えっちな本」
「あんたね」
溜め息。
「えっ?」
なんかまずいこと言ったか?
素直に答えただけじゃねぇか。
好きな本はなに?
えっちな本。
間違えてねぇだろ。
好きな本なに?
りんご。
って、答えたわけじゃあるまいし。
「ノア。いい?」
「なにが?」
「こういう時はね」
「なにかおもしろい本とかあんのか? って答えるのが正解」
「特に異性が相手ならなおさら」
そうなのか。
なら。
「なにかおもしろい本でもあんのか?」
「もう遅いわよ」
「まっ、次から気をつけることね」
若干楽しそうな、スズメ。
それに俺は思う。
スズメって意外といろんなこと知ってんだな。
ちょっとだけ尊敬してやる。
でも俺。
嘘つくの苦手だからなぁ。
次また同じことがあっても、きっと同じことを繰り返すだろう。
多分、いや絶対に。
っと、そこに。
「スズメ」
「今日もマリアさまのお使いか?」
「ご苦労なこった」
そんな声が響く。
なんだ?
妙に鼻につく言い方だな。
どんな奴か見てやる。
立っていたのは、スズメと同じ背丈の男。
銀髪で目が赤い。
しかし、その顔は生意気そのもの。
「で、そいつ誰?」
「見ない顔だな」
あ?
こいつ。殴りてぇ。
げんこつしてやりてぇ。
おら、スズメ。
お前もそうだろ?
いつもみてぇにーー
「ち、違う。今日はその」
おい、スズメ。
どうした?
いつものてめぇはそんなんじゃねぇだろ。
しっかりしろって。
ちらっと俺を見てくる。
その目はどこか怯えていた。
「今日はその。なんだよ」
「もしかして」
馬鹿にしたように俺を見る。
「その新入りのお守りか?」
はい、無理。
俺、こいつ殴る。
許せ、スズメ。
止めてくれるなよ。
「おい、オスガキ」
「な、なんだよ」
気づけば。
「俺はな。女は極力ギリギリ殴らねぇ。けどな」
目の前に立ち、拳を振り上げていた。
げんこつ。それをお見舞いしてやる為に。
「男ならなぁッ、充分なんだよ!!」
「第一印象だけでなァ!!」
ごんッ
クリーンヒット。
それに、オスガキは喚く。
「いッ、いってぇぇぇ!!」
「なッ、なんだお前!! そッ、それでも新入りか!?」
「うるせぇッ、もう一発行くぞ!?」
拳を振り上げてやる。
それにオスガキは尻尾を巻いて逃げていく。
「おッ、覚えてろよ!!」
おぉおぉ。
負け犬がなんか吠えてら。
更に。
「頭おかしいんじゃね!! 脳みそないだろッ、てめぇ!!」
そんな最高の褒め言葉まで残してくれるの?
ありがとね。
それにしても君、よく喚くね。
「負け犬ッ、はやく俺から逃げろって!!」
「俺ッ、追いかけちゃうよ!? いいの!?」
「くッ、来んな!!」
必死こいて逃げていく姿。
それに。
ふぅ…すっきりした。
スズメよ。
どうだ?
これが俺だ。
スズメを見る。
そして。
「なぁ。今の俺。異性から見てどうだ?」
スズメはあっけにとられている。
でも、すぐに。
「ノア」
「今のは」
少し嬉しそうに。
スズメは親指をあげてくれたのであった。




