11
〜〜〜
「おかえりなさい」
扉を開けた瞬間。
そう声が返ってきた。
その声だけで、苦労が報われた気がする。
あぁ。
声を聞くだけで安心する。
部屋に入る。
ニ歩。三歩と進み、立ち止まる。
視線の先には、日を逆光に椅子に座るマリアが居た。
木のテーブル。その上に手を置き、いつもの吸い込まれそうな微笑みをたたえて。
「た、ただいまかえりました」
「うん。おかえり」
スズメに視線を向ける、マリア。
「ノアくんのサポート。ありがとね。ぜんぶ、ミてたよ」
見てた?
マリアさん。どこかに居たのか?
だとしたら。
俺の活躍も筒抜けだったってことか?
なにそれ。
俺、勝ち確じゃん。
「はい。マリアさまの為に…スズメはがんばりました」
「知ってるよ。スズメは頑張った」
「あ、ありがとうございます」
スズメの声が弾んでいる。
羨ましい。
俺も褒めてほしい。
そんな思いが顔に出ていたのであろう。
「ノアくん」
「ご褒美はなにがいい?」
きたぁ。
待ち望んでいた言葉。
待て、待て、待て。
あんま調子に乗るな。
喜びのまま。本能のまま。褒美を要求しちまったら、マリアさんを困らせちまう。
ぐいっ
痛っ。
スズメが尻をつねってくる。
ちらっと見れば、刺すような横目。
若干頬を膨らませているのが、なんとも子どもらしい。
ははん。
さては俺のことが羨ましいんだな。
わかる。
わかるぞ。
だがな、スズメよ。
これが成し遂げた者と成し遂げられなかった者の差ってやつだ。
大人しく悔しげにしておいてもらおうか。
「ノアくん?」
「はッ、はい!!」
「ご褒美。どうしよっか?」
「え、えっーと」
いざ聞かれると思い浮かばない。
添い寝? 膝枕? デート?
胸。お尻。唇。
この前みたいに。あーん、してもらう。
揉みてぇ。ちゅーしてぇ。
い、いかん。
マリアさんを見てたら、いかがわしいご褒美が浮かんできやがる。
っと、そこへ。
「こんなのどうかな?」
「これから1時間。ノアくんとわたしがいっしょに居るってご褒美」
い、1時間もご一緒できる?
「ノアくんに教えてあげたいなと思って」
な、なにをですか?
「わたしのこと」
「!?」
マリアさんのことを知れる?
最高のご褒美じゃないっすか、それ。
「わたしのことを知れば知るほど。ノアくんは、もっと上手に動けるようになると思う」
「それに。これから先のご褒美。それも、きっと。ノアくんにとって価値あるものになると思うんだ。わたしを【知る】ことによって」
「どうかな?」
「それで大丈夫です! そ、それが一番嬉しいです!!」
即答。
笑ってくれる。
そして。
「スズメ」
「貴女にも。わたしの時間を【あげる】。久しぶりだね。時間を【あげる】の」
「それでね。お話。しよっか?」
響く優しい声。
それにスズメもまた、嬉しそうに頷いたのであった。
〜〜〜




