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俺の人生。支離滅裂。でも、楽しい。  作者: ケイ


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9

「なぁ」


「この道で合ってんのか?」


前を進む、小さな背中。

それに問いかける。


だが、返事はない。


「なぁって!!」


「うるさいですね。黙ってついてきてください」


立ち止まり、いらつくスズメ。


「あなたと違ってわたしはしっかりしていますので」


「それを聞いて安心した」


安堵。


「ほら。はやく行こうぜ」


「ったく。あなたという人は」


〜〜〜


村に着いた。


風がやけにやさしい。


土の匂いがする。

草が揺れる音がする。

遠くで、子供の笑い声が聞こえる。


「なんだここ」


思わず、口から漏れた。


小さな村。


煙が立ち上る家。

畑を耕す大人。

走り回る子供。


どこにでもある、普通の光景。


「ここが。任務の場所か?」


隣を見る。


スズメは、いつも通りだった。


無表情。無感情。

ただ前だけを見ている。


「そうです」


短い返答。


「対象はこの村に居ます」


「ほんとかよ」


疑いの声。


だってそうだろ。


こんな場所に、あの“天国”から逃げた奴がいるなんて。


「ノア」


スズメが、わずかにこちらを見る。


「任務中です」


「私語は控えてください」


冷たい声。


「いや、わかってるって」


頭をかく。


だが、どうにも落ち着かない。

 

「なぁ」


「なんですか」


「ここ。いい場所だな」


ぽつりと呟く。


風が気持ちいい。

空気がうまい。

人も、普通に笑ってる。


ここも天国に見えてしまう。


「そうですね」


意外にも、肯定。


だがその直後。


「ですが。それがなんですか?」


すぐに切り替わる。


「任務には関係ありません」


やっぱり、こいつおかしい。


いや。俺が変なのか?


「おーい!」


声が飛んできた。


顔を上げる。


畑の方から、ひとりの男が歩いてくる。


日に焼けた顔。

鍛えられた身体。

でも、その目はやさしい。


「見ない顔だな。旅人か?」


気さくな声。


俺は一瞬、言葉に詰まる。


「あー……」


どう答えたもんか。


その時。


「あなたを回収しに来ました」


スズメ。


おい。


空気が、止まる。


男は一瞬きょとんとして——


それから、苦笑した。


「はは……なに言ってるんだ?」


当然の反応。


だが、スズメは続ける。


「あなたがマリアさまから逃亡したヒト」


「従ってください」


一切の迷いもなく。


男の目が、わずかに細くなる。


空気が変わる。


「なるほどな」


低く、呟く。


さっきまでの柔らかさが、消える。


「断る」


はっきりと。


「ここが、俺の居場所だ」


振り返る、男。


その先には。


「おじちゃんー!」


子供たちが走ってくる。


無邪気な笑顔。

男はその頭を、自然に撫でた。


「な?」


こっちを見る。


「普通に生きてるだけだろ」


「普通に生きたいと思っただけだ」


その言葉。

なぜか、胸の奥がざわつく。


「ノア」


スズメの声。


振り向く。


「どうしますか?」


その目。

光が、ない。


「対象は確認済み」


「回収可能」


「障害。多数」


さらっと、とんでもないことを言う。


「は?」


「排除も視野に入れます」


空気が変わる。


遠くで笑っていた子供の声。

それがやけに耳につく。


「待て」


思わず手を出す。


「こいつらは関係ねぇだろ」


「関係あります」


即答。


「対象がここに留まる要因です」


「だから排除?」


「はい」


「逃げた理由、その詳細も聞かずにか?」


「えぇ」


一切の迷いもなく。


風が吹く。

やけに冷たく感じた。


「ノア」


もう一度、名前を呼ばれる。


「どちらを選びますか?」


「排除か。男のみの捕獲か」


選択。

突きつけられる。


視線の先。


笑ってる子供。

それを見ている男。


そして。


頭に浮かぶのは、ひとつだけ。


『がんばってね』


あの笑顔。


「……」


どうする、俺。

どうすんだよ。


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