毒に呑まれる
温室から出たわたくしは、現在仮眠室にいるのですけれど……
「あぁ、リディアナ! 寝不足ですか? 隈ができているし、顔色も悪い。ということで、一緒に寝ようじゃありませんかッ!」
────なんでここにこれがいますの? 空気を読んでくださらないかしら?
それでなくても、わたくし、媚薬の解析に四日費やしたあとなんですのよ。
つまり、四徹あけ。
圧倒的な睡眠不足の今、変人王子様に構っている暇はないんですの!
いますぐにでも突っ伏して、眠りそうなんですからね!
さぁ、お帰りくださいな。出口はあちら。
でないと、そこに飾ってある鈴蘭を口に突っ込みますわよ。えぇ、わたくしはやるといったらやる女ですとも。
でもまぁ、そんなことよりも──
「継母殿ッ!! そこらへんにいるのはわかっていますのよ。さっさとこれをもとの国に返品してきて下さいな!」
「お断りしますわ、リディアナちゃん! 返品不可よ!」
「なんて厄介な!」
「ところでリディアナちゃん、いい加減にママと呼ぶ覚悟を決めて下さいな!」
「お断りしますわ」
すげなく返しながら、わたくしはため息をつきました。
継母殿は、いい加減懲りてくださいな。一回毒飲めば、諦めてくれるのでしょうかねぇ。
あぁ、死んじゃうので無理ですわね。
というか、ママなんて呼びませんわよ。子供っぽい!
「おうちに返してきて下さいな、継母殿」
「嫌です……」
なんで、わたくしがこんなこと言わなければならないんですの……
というか、眠たさの限界がきているんですけれど。
もう、変人とお馬鹿には付き合ってられませんわ。
いっそ、結婚しちゃえばなんにも言われなくなるかしら?
回らない頭で必死に考えて、閉じそうになる瞼を叱咤しながら、わたくしは口を開きました。
あとで、後悔するなんて知らずに。
「あぁ、もう! 結婚でもなんでもしますから、寝せてくださいな! わたくしの趣味にとやかく言わずに、束縛もしないならば結婚しますわ!! お付き合いを前提に結婚して差し上げますとも。これで結構かしら?! わかったならば、そこをどきなさい変人。添い寝は結構よ」
言いきったわたくしは、変人がベッドからでてから、まだぬくもりののこるシーツに体をうめました。
やっと寝れる。
継母殿が煩いですわね……そんなことを思ったのを最後に、わたくしの意識は闇に飲まれていきました。