―第0️⃣0️⃣8️⃣話―150cm台から182cmへ。僕が『進化論』を信じて高校時代にやった無茶なこと
みなさんは「自転車」と聞いて、どんな風景を思い浮かべますか?
爽快なサイクリング、ストイックな競輪、あるいは懐かしい通学路。
私にとっての自転車は、そのどれでもありません。
それは、自分自身の身体を造り変えるための「進化の実験装置」でした。
「そんな馬鹿な」と思われるかもしれませんが、
どうか最後まで聞いてください。
これは、私の身に実際に起きた、嘘のような本当の話です。
――――――
中学を卒業する時点での私の身長は、150センチ台でした。
今でも鮮明に覚えている光景があります。
ある日の朝、洗面台で歯を磨いていたときのこと。
隣に並んだ母が、ふと鏡に映り込みました。
鏡の中の自分は、身長155センチの母とほぼ同じ。
下手をすれば、私の方が低く見えるほどでした。
「ねぇお母さん。俺、もう身長伸びないのかな……」
思わず漏らした不安に、母は「もう少しは伸びるんじゃない?」
と笑って答えましたが、父も平均より少し高い程度。
私は「160センチを超えれば御の字か」と半ば諦めかけていました。
しかし、そこで終わらないのが当時の私です。
「人間だって、必要に迫られれば進化できるのではないか?」
突拍子もない考えが頭をよぎりました。
高い場所の葉を食べるために首を伸ばしたキリン。
手足のように鼻を発達させたゾウ。
ならば、人間だって「切実な理由」があれば、
骨の一本や二本、伸ばせるはずだ——。
――――――
そこで私は、高校通学で使う自転車に「ある細工」を施しました。
やり方は単純です。サドルを極限まで、目一杯上げたのです。
普通に跨っても、足は地面に微塵も届きません。
信号待ちで止まるには、車体を思い切り傾けなければならず、
常に転倒の危険と隣り合わせ。
私は自分自身の細胞に、強制的な「進化のシナリオ」を突きつけました。
「おい、足よ。伸びなければ怪我をするぞ。事故に遭いたくなければ、早く成長しろ」
命がけの、自己流・進化実験。
1学期の間は何の変化もありませんでしたが、
高校1年の夏休みに異変が起きました。
寝ても覚めても、体中に疼くような痛みを感じ続けたのです。
――――――
そして夏休み明け。
登校した私に、一人の女子生徒が驚いた顔で声をかけてきました。
「めこねこくん、なんか……身長、ものすごく伸びてない?」
騒ぎになり、急遽クラスで一番背が高い野球部のエース(175センチ)
と背比べをすることに。
結果は——私の圧勝でした。
結局、高校1年の1年間で私の背はぐんぐんと伸び続け、
最終的に182センチにまで到達したのです。
キリンやゾウと同じように、私もまた「必要」に迫られ、進化を遂げたのでした。
――――――
もちろん、これは若さゆえの無謀な実験です。
危険ですので、みなさんは決して真似をしないでくださいね(笑)。
ただ、最近高校生になった息子の背中を見ていると……
「サドル、あと数センチだけ上げておこうかな?」
なんて、親バカな企みが頭をよぎってしまうのです。
ほんの、少しだけですよ。




