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めこねこの日々のあれこれ  作者: めこねこ


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7/22

―第0️⃣0️⃣7️⃣話― 鉄人の父が唯一敗北したもの。それは、馬の好物と母のひと言

唐突ですが、私は「にんじん」という野菜に、不思議な縁を感じています。

縁というと少し大げさに聞こえるかもしれませんが、仕方ありません。


私がそう感じるのですから。


私とにんじんを結ぶ、三つの物語をお話しします。


――――――


一つ目の縁は、小学生の頃に出会ったフランス文学、

ルナールの小説『にんじん』です。


当時はシャーロック・ホームズに熱中していた時期。


全巻読み終えてしまい、燃え上がる読書欲を満たすために手に取ったのが、

その本でした。


母親から理不尽な扱いを受ける主人公の少年に、

胸を痛めると同時に、必死に生き抜こうとする彼の強さに、

子供ながらに深い共感と尊敬を覚えたものです。


幸い、わが家の「母上」はそんな理不尽な振る舞いはしませんでしたが(笑)、

あの一冊があまりに強烈だったせいで、今でもにんじんを食べるたびに、

ふとあの少年を思い出すことがあります。


――――――


二つ目の縁は、妻とにんじんの深い関係です。


といっても、彼女が「三度の飯よりにんじんが好き」というわけではありません。


彼女は「にんじんは健康に良い」という信念を持っていて、

あらゆる料理にそれを投入するのです。


結婚当初は、高価な業務用ジューサーで毎朝

「にんじんとりんごの生搾りジュース」を振る舞われました。


最近は、ジューサーを洗う手間を惜しんでか、

「にんじんしりしり」が毎晩の食卓を彩る「オレンジ色の使者」

となっています。


とにかく、わが家の食卓ににんじんが欠ける日はありません。


――――――


そして、三つ目の縁。これが一番の難題かもしれません。


私の父は、大の「にんじん嫌い」なのです。


自動車整備士として働き、野球やマラソンで鍛え上げた強靭な肉体を持つ父。

息子として鼻が高い、自慢の「鉄人」でした。


ですが、こと「にんじん」に関しては、子供だった私よりも弱かったのです。


カレーの中のにんじんはもちろん、あらゆる料理に潜むにんじんを、

ことごとく残そうと奮闘していました。


しかし、そのたびに母から放たれる

「子供たちが真似をするでしょ!」という必殺のひと言。

父はいつも、渋々そのオレンジ色の天敵を口に運んでいました。


一度、理由を尋ねたことがあります。


「どうして、そんなに嫌いなの?」


父の答えは意外なものでした。


「昔、家で飼っていた馬がにんじんを食べていたんだ。

あれは馬の食いもんだと思っていたからな」


……母に言わせれば、単に「味が嫌いなだけ」だそうですが(笑)。


そんな父も今年、81歳の「半寿」を迎えます。


鋼のようだった肉体もすっかり細くなり、

背中も随分と小さくなったように感じます。


けれど、私にとってその存在は、昔と変わらず偉大です。

——にんじんを残そうと必死だったあの姿を除けば、ですが。


今日の夕飯も、きっと食卓にはオレンジ色の使者が並ぶことでしょう。


父の奮闘を思い出しながら、ありがたくいただこうと思います。

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