―第0️⃣7️⃣8️⃣話― 【トイ・ストーリー5】映画鑑賞に欠かせないのは、ポップコーンと、迷惑な客。
土曜日の朝。
朝ごはんを終え、片付けをして、掃除機もかけ、まったりとした時間を過ごしていました。
そうだ、ワールドカップの準決勝はどうなったかな——と、Yahoo!を開いてチェックしていた、その時です。(残念ながら、わが日本代表は、すでにブラジルに散っているので、今は、他国の熱戦を、気楽に楽しんでいます)
昨日の朝から、どうも機嫌の悪かった妻が、いきなり無言で、スマホを突きつけてきました。
なんだ、新手の嫌がらせか——と身構えると、おもむろに、こう宣言したのです。
「トイ・ストーリー5、観たいんですけど」
■ 「思い立ったが吉日」の、無茶ぶり
どうやら、子どもたちも交えて、今日、映画を観に行こうと話がまとまっていたらしい。もちろん、私は蚊帳の外です。
それはいいのですが——いきなり、すぎました。
というのも、わが社の福利厚生に、映画の鑑賞券が割安で手に入る制度があるのです。ただし、条件がひとつ。「十二時間前まで」の申し込みが必要。
つまり、妻が今日行きたい時間には、どう頑張っても、間に合わない。
いつもの通常運転とはいえ、一言、言いたくもなります。
「前々から言ってるけど。せめて前日、できれば二日前までに言ってくれないと、割安チケットは取れないんだよ」
しかし、こちらの正論に対しても、妻は憮然として、一歩も引きません。
「思い立ったが吉日、だから」
……この場面でチョイスする言葉とは、とても思えませんが。仕方がありません。可愛い子どもたちのため、私は定価でチケットを購入したのでした。
■ 束の間の、一人時間
Snow Manの目黒蓮さん主演「SAKAMOTO DAYS」の時には、GWの渋滞を華麗なドライブテクニックで切り抜け、映画館まで送り届けました。
けれど今回は、妻の運転でも余裕を持って行ける上映時間のチケットが取れた。というわけで、三人は妻の運転で出発。私は、久しぶりの、のんびりとした一人の時間を、心ゆくまで満喫したのでした。
■ 「4があるからこその、5」
現地でお昼も食べて、四時間後、三人は満足げに帰ってきました。
実は私、トイ・ストーリーは「3」までで十分かな、と思っていた口です。「4」が、それまでの3作とは少し毛色の違う展開だったため、正直、少し苦手だった。だから今回の「5」も、観るのを遠慮した、という経緯があります。
ところが、子どもたち曰く——「4があるからこその、5なんだよ」と言うのです。
なるほど、ちょっと惜しいことをしたかな、と思いました。子どもたちの話を聞くだけでも、その面白さは、十分に伝わってきましたから。
さて。映画の良さは、しっかり伝わってきたのですが。
一方で、妻が、どうも不機嫌なのです。
——あ、また、映画館で何かあったな。私は、ピンときました。
■ 妻の、迷惑客ジンクス
というのも、妻が映画を観に行くと、高確率で、迷惑な客に遭遇するのです。
直近では、あの「SAKAMOTO DAYS」の時。隣で観ていた老夫婦が、上映中、しきりにスマホを開いては、何やらメッセージを送っていたそうで。暗い館内で、すぐ横がぱっと明るくなる。集中できたものではありません。
鑑賞後、妻は思わず、その老夫婦に聞こえるか聞こえないかの声で、「映画鑑賞中にスマホを開くとか、常識のないお客さんもいたものねぇ」と、嫌味を漏らしたとか。
——さて、今回は何があったのか。私は、娘にそっと聞いてみました。
「あ、今回はね。ポップコーンを、ぶちまけたお客さんがいたんだよ」
なんでも、上映中ではないものの、直前に慌てて入ってきた客が、手に持っていたポップコーンを、盛大にぶちまけたのだそう。館内に、ポップコーンの匂いが充満する。
もっとも、こちらも同じくポップコーンを食べながら観ていたので、匂いには次第に慣れたそうですが。問題は、スタッフが片付けであたふたしていたせいで、本編前の予告編を、ゆっくり観られなかったこと。妻にとって、予告編は映画の楽しみの一部ですから、これが不満だったようです。
「なんで、私ばっかり、こんな目に遭うのかしら」
■ バランスは、どこかで取られている
なぜ妻が、映画館でばかり不運に見舞われるのか。私には、分かりません。
ただ、思うのです。世の中というのは、どこかで、帳尻が合うようにできているのではないか、と。
わが家で、日々、あれこれと理不尽な目に遭っているのは——言うまでもなく、この私です。急な映画に定価で買わされ、送迎をさせられ、家族の輪からは、しれっと外される。
もしかしたら。私が受けているその理不尽が、宇宙のどこかで巡り巡って、妻の「映画館での不運」として、返っているのではないか。
そう考えると、少しだけ、溜飲が下がる——などと思ってしまうのは。私の、性格が悪いせいなのでしょうか。
いや。そういうことにしておいたほうが、わが家の平和は保たれるのかもしれません。




