―第0️⃣7️⃣7️⃣話― 【くまモン】くまモンすぎて滅——息子のカナダ土産、まさかの選択。
昨晩は、久しぶりに、家族全員が揃って夕食を摂ることができました。
娘は試験期間で早帰り、息子は三者面談期間で早帰り。私は在宅勤務、妻はパートが休み。滅多にない全員集合とあって、テレビのニュースを眺めながらの、ゆったりとした夕食となりました。
そして、印象に残る話題が、次々と流れてきます。
とにかく暑かった今日の天気と、それを上回る猛暑になるという予報。大型の台風が、沖縄の先島諸島に最接近するという話。そんな中で、わが家の食卓の話題をかっさらったのが——地元の英雄、くまモンに関する報道でした。
■ 13周年の、推し活まつり
熊本市の中心部に、くまモンの活動拠点「くまモンスクエア」という常設のふれあい広場があります。国内はもとより海外からも多くの人が訪れる、今や屈指の人気スポットです。
そのくまモンスクエアが、今年2026年の7月で、開館13周年。それを記念して、「推し活まつり!~くまモンすぎて滅!~」なるイベントを開催する、というニュースでした(開催は7月18日から26日まで)。
……「くまモンすぎて滅」。
ご存知の方も多いでしょう。今、社会現象になっている、あのM!LKの大ヒット曲「好きすぎて滅!」。あの「マジ ぎゅんぎゅんぎゅん」のフレーズを、地元のスターがちゃっかり拝借しているわけです。話題に乗っかる嗅覚は、さすが、くまモン。
■ 期待に応える、暴走
早速、画面にくまモンが登場しました。
軽快なステップを踏み、冒頭からノリノリで、画面上を暴れ回っています。レポーターがイベントを紹介しているのに、くまモンは、まるで聞いていない。いつものハイテンションで、わが家にも、期待にも似た緊張が走ります。
「今日もやらかしそうだね」と娘が言えば、「今日はどんなダンス見せてくれるんやろか」と息子。画面の中のくまモンは、その期待を一身に浴びているようでした。
イベントのコーナー紹介に移ります。「くまモンがサイコロを振り、出た目の曲を即興で踊る」という企画。ハイテンションのくまモンが、無茶苦茶に放り投げたサイコロ。出た目は、1。かかった曲は、嵐の「A・RA・SHI」。
これまた、軽やかでキレのあるダンスを、披露していきます。
先日の解散コンサートで急に嵐熱が再発した妻に、さんざん曲を聴かされていた息子と娘は、これで大盛り上がり。さすがは、くまモンでした。
■ そのタオルに、息子が反応した
最後に、13周年の記念グッズが紹介されました。
Tシャツ、タオル、缶バッジなど。まず、Tシャツ。例の「くまモンすぎて滅!」を、これでもかとあしらった、ド派手なデザイン。「どこで着るんだ、これ」と、子どもたちも口が塞がりません。
続いて、フェイスタオル。ピンク地に、大きく「くまモンすぎて滅!」の文字と、でかでかとくまモン。
それを見た瞬間、息子が、こう言ったのです。
「これだ。これにする」
■ カナダへの、手土産問題
実は息子は、この夏、カナダに二週間の短期留学をすることになっています。
少しでも見聞を広げてほしいと送り出すのですが、ホストファミリーへの手土産を、家族で相談していたところでした。
お菓子類は、カナダの持ち込み規制に引っかかるものが多く、なかなか厳しい。ならば無難に、日本らしいものを、と考えるのですが、これという品が見つからない。
日本のキャラクターといえば、キティちゃんか。でも、どんなホストファミリーか分からないのに、あんまり可愛らしすぎても……。そんな話をしていた、まさにその矢先だったのです。
「そうよ、くまモンがあるじゃないの」と、妻が言って、ちょうど検討していたタイミングで。
画面に、あの「くまモンすぎて滅!」タオルが、映し出されたのでした。
熊本観光大使のくまモンと、日本の芸能界を席巻する大ヒット曲。話題性としては、これ以上ない組み合わせです。
■ 息子の、特訓が始まる
ただ——です。
「いや、チョイスとしては、いいけど。これ、どうやって紹介するの」
娘が、冷静に指摘します。
「かわいいし、全然いいけど。この書いてある言葉を、英語でちゃんと説明しないと、意味わかんないよ」
……確かに。
「くまモンすぎて滅」。この一枚のタオルを渡すには、まず「くまモンとは何者か」を説明し、次に「M!LKという人気グループの、好きすぎて滅という曲がある」ことを説明し、さらに「滅とは、好きすぎて死ぬ、という若者言葉の言い換えである」ことまで、説明しなければならない。
それを、すべて、英語で。
出発まで、残り二週間。かくして、息子の「英語による、くまモンとM!LK、そして"滅"の解説」特訓が、始まったのでした。
見知らぬ異国の食卓で、ピンクのド派手なタオルを広げ、たどたどしい英語で「これは"好きすぎて、滅ぶ"という意味で……」と説明する息子。その姿を想像すると、微笑ましくもあり、少しだけ、心配でもあります。
息子よ。
くれぐれも、国際問題だけは起こさず。無事に、帰ってきておくれ。




