―第0️⃣7️⃣1️⃣話― 【ボンボンドロップ】シール熱——わが家に来航した、思わぬ黒船。
最近、子どもたちの間でシール収集が加熱している、という報道をよく目にします。
単なるシールではなく、ぷっくりと立体的で、こだわりのあるデザイン。大人の男が見ても、確かにオシャレで、可愛らしい。
しかし、加熱しすぎて、なかなか手に入らないのだとか。終いには、いわゆる「バッタ物」まで出回っているといいます。実際、文房具店やファンシーショップだけでなく、普通のホームセンターのような店でも、「ボンボンドロップシール、入荷次回未定」の張り紙が貼られた、空っぽの売り場をよく見かけます。
しかも、その人気は子どもだけにとどまらない。幼い頃にプリクラやシール帳が流行った世代にも「再加熱」で伝わり、品切れに拍車をかけているそうです。
シール帳にびっしり貼ったシールを、友達同士で交換して盛り上がる。単なる収集ではなく、コミュニケーションのツールになっているあたりが、なんとも現代的です。女の子のツールとして、実によくできているな、と感心します。
■ うちの娘は、どこ吹く風
ただ——うちの娘は、どうも興味がなさそうなのです。
そういえば、キティちゃんをはじめとするサンリオグッズにも反応せず、ポケモンやマリオ、ディズニー系に少し興味がある程度。もともと、あまり「グッズ」的なものに、心を動かされないタイプです。
とはいえ、これだけ世間で流行っていると、少し心配にもなります。本人は、このシール熱をどう思っているのか。学校で、疎外感を覚えていたりしないか。気になって、聞いてみました。
「学校で? ……全然、流行ってないよ」
あっさりした返事でした。
娘の学校でなのか、この辺りの中学生全体がなのかは分かりませんが、少なくとも娘の周りでは、流行っていないらしい。だから、加熱するシール業界について、娘は特に何の感慨も抱いていないようです。
娘の通う学校が、地域の中では少し進学校寄り、というのも関係しているのかもしれません。何にせよ、「娘が流行に置いていかれて肩身の狭い思いをしている」わけではないと分かって、私は、ひとまずホッとしたのでした。
わが家に、シール熱は無縁。そう思っていた——矢先のことです。
■ 黒船は、風呂場から来た
「ねぇ、ほら。これ、かわいいでしょ」
妻が、嬉しそうに、シャンプーとリンスのセットを見せてきました。
その日に新発売された、ディズニーのトイ・ストーリーとコラボしたセットが、運良く手に入ったのだそうです。
なるほど、パッケージは確かに可愛らしい。バスルームが、ぱっと華やぐ一品です。妻が喜ぶのも、分かります。……まあ、いいシャンプーとのコラボらしく、値段は少々お高いようですが。インテリアも兼ねていると思えば、そんなものか、と納得しかけました。
ところが、です。
「でね、このシャンプー、"ぷっくりシール"もセットで付いてくるのよ。せっかくだから、流行りだし、揃えていこうかな」
……。
シール熱は、娘にも、その友達にも、来なかった。
代わりに、まさかの「シャンプー」という黒船に乗って、わが家の最年長女子——妻のもとへ、堂々と来航したのです。
そういえば妻は、幼い頃にプリクラやシールが流行った、まさにその世代。報道で言っていた「再加熱で伝わった大人たち」とは、他でもない、わが家にいたわけです。灯台下暗し、とはこのこと。
どうやら、これを皮切りに、「たまたまシールがおまけで付いていた」の理由で、シールとのコラボ商品が少しずつ我が家に侵食し、妻いわく「お得にシールが増えていく」ことになりそうです。
この流れ、一体、いつまで続くのでしょうか。
そして、そのコラボ商品の数々が、わが家の家計に、ぷっくりと張り付いてくるのだろうな——と、まだ見ぬ商品の数々を思うと、私は静かに、財布の中を確認するのでした。
せめて、この熱が、娘にまで伝染しませんように。
いや。それより先に、私の財布が、干上がりませんように。




