―第0️⃣6️⃣3️⃣話― 【独り映画鑑賞】久々に、笑って泣いた映画。——父がこっそり観た、Netflixの隠れた一本。
最近、夕食後に、Netflixを自室でこっそり観ています。
理由は、単純です。
ダイニングでは、妻がYouTubeでBTSの曲を観ていて、おちおち座っていられません。リビングでは、娘が「ダイエット!」と言って、動画を見ながら体操にいそしんでいる。息子は、自室で試験勉強。
誰も相手をしてくれませんし、邪魔をするわけにもいきません。
そうなると、私に残された道は、自室でひっそりと映画を観る時間に充てることだけ、なのです。
■ 隠れた一本を、探す夜
さて、とりあえずホラー映画を検索します。
メジャーどころは大概観ているので、できれば日本未公開の、聞いたことも観たこともない作品がいい。そう思って、あちこちを物色していました。
モンスター・スプラッターの類がいくつか。先日、『アビゲイル』という吸血鬼の映画を観たけど、イマイチだったしな……。ゾンビ映画も、あらかた観たしな……。
と思っていたら、ふと「ホラーコメディが観たいな」という気分になりまして。そういえば、と探してみると——ありました。
『ファイナル・ガールズ 惨劇のシナリオ』。
Netflixを契約されている方でも、これを観ている人は、なかなか少ないでしょう。
賛否両論あるかもしれませんが、私の素直な、率直な感想を言わせていただきます。
——良かったです。
久々に、笑って泣ける、スプラッター・ホラー・コメディを観させていただきました。
■ パロディだけでは、終わらない
ネタバレになるので細かい筋は避けますが、ホラー映画の中に閉じ込められてしまった若者たちが、元の世界に戻ろうと悪戦苦闘する、という物語です。
基本は、『13日の金曜日』をはじめとした、八〇年代ホラー映画の「お約束」をネタにしたパロディ。ところが、これが単なるパロディだけでは、終わらないのです。
主人公が閉じ込められるホラー映画は、亡くなった母親が、女優として出演していた作品。そして劇中、母親は「お決まりのシーン」で命を落とす運命にある。それを回避しようと、主人公は孤軍奮闘する——という筋立てで、話が進んでいきます。
怖がらせるよりも、パロディで笑いを取りにくる作風なのですが、何より良いのが、事情を知らない「役」としての母と、娘との人間ドラマ。これが、絶妙なエッセンスになっているのです。
綾瀬はるかさん主演の『今夜、ロマンス劇場で』や、アーノルド・シュワルツェネッガー主演の『ラスト・アクション・ヒーロー』のように、映画の中の世界に入り込む。そして、回想シーンに突入したり、スローモーションを体験したりと、遊び心のある表現も満載で、まったく飽きません。
タイトルを見たときは、「大好物のB級ホラーかな」と思っていたのです。ところが蓋を開けてみれば、盛りだくさんの要素が程よく混ざり合った、なかなかの傑作でした。
観終わったときには——クライマックスの、母と娘のシーンに、涙を流している自分がいました。
■ 【オチ】だから、映画は一人に限る
ふと、思うのです。
映画はやっぱり、自室でこっそり観るに限る、と。
私にとっては傑作でも、家族にとっては、所詮はホラー映画。そのホラー映画を観て涙を流す父の姿など、とてもじゃないが、子どもたちには見せられません。
「お父さん、サメの映画とか、ホラーばっかり観て、しかも泣いてるの?」
——そんな冷ややかな視線を浴びる未来しか、見えませんから。
リビングに居場所がないから、仕方なく逃げ込んだ自室。けれど、その「一人の時間」があったからこそ、こんな良作に出会えて、誰にも気兼ねなく、心ゆくまで泣くことができた。
これはこれで、悪くない夜の過ごし方なのかもしれません。
さて。いい映画を観て、泣いて笑って、すっかり楽しませてもらいました。
次は、本格的に怖いやつを観ようと思っています。
菅野美穂さん主演の、『近畿地方のある場所について』。実はこれ、小説サイトに投稿されて大ヒットした小説が原作だそうで。ものを書く端くれとしても、これは観ておかねばなりません。
——もちろん、今夜も、自室で。一人、こっそりと。




