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めこねこの日々のあれこれ  作者: めこねこ


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―第0️⃣5️⃣9️⃣話― 【一人猛ダッシュ】雨の日の送迎——増えていく乗客と、ただ一人濡れる運転手。

息子は、高校に自転車で通っています。


本音を言えば、事故が心配なので電車にしてほしい。けれど、都合のいい路線がなく、「友達もみんな自転車だから」「部活で遠くの練習場まで自転車で行くから」という本人の懇願に、最終的に私が折れた、という経緯があります。


しかし、梅雨です。


息子にとっては、完全に「想定外」の事態が訪れました。

簡単に言えば——ずぶ濡れに、なるのです。



■ 不機嫌な高校生


もちろん、対策はしています。雨合羽は用意していますし、前カゴのリュックには、防水カバーもかけている。


それでも、濡れる。


すると、息子は不機嫌になるのです。


玄関で、雨に濡れた前髪を、むっつりとかき上げる息子。その横顔は、「何か濡れずに済む方法があるはずなのに、なぜ俺にはそれが用意されていないんだ」と、世界の理不尽を父に問うているかのようです。


……いや、その方法、ないんだよ。


長年の経験上、自転車で雨合羽を着ても、濡れるものは濡れる。カゴにリュックを入れていれば、走行の揺れや風で雨が吹き込むのも、容易に想像がつきます。父にも、どうにもできない領域なのです。


それでも、ふさぎ込む息子を見ているのは、忍びない。ちょうど試験期間中でもあることですし、私は決断しました。


「よし。学校の手前まで、送ってやろう」


往復30分ほどの、寄り道。朝の余裕はなくなりますが、仕事に支障が出るほどではない。これで息子の心に余裕が戻るのなら、と、一肌脱いだのです。


そこまでは、よかった。



■ 乗客が、増えていく


その様子を見ていた娘が、ぽつりと言いました。


「……私の送迎は、ないのかな」


仕方がありません。娘も、送りましょう。


幸い、息子の高校から少し寄り道すれば、娘の中学校の近くを通れます。プラス5分ほどの誤差。これで娘の機嫌が直るなら、お父さんは頑張ります。


すると今度は、それを見ていた妻が、「ふふ〜ん」という顔になりました。

無言です。何も言いません。


ただ、その顔には、はっきりとこう書いてあるのです。


「息子と娘を送るなら。当然、私も、よね?」


……仕方がありません。妻の、パート先まで。


一旦家に戻って妻をピックアップし、職場まで往復20分。気づけば私の送迎ルートは、わが家発・市内一周の、立派な周遊バスと化していました。



■ ただ一人、濡れる運転手


こうして、家族三人を、それぞれの目的地へ無事に送り届けました。


私はその分、いつもの電車を一本遅らせ、急いで職場へ向かいます。

言うまでもなく、運転手である私に、送迎はありません。駅まで歩き、濡れての出勤です。


ずぶ濡れの私を乗せた電車が、ゴトゴトと揺れる。窓には、子どもたちを降ろすたびにかけられた、温かい言葉が、ぽつぽつと残響していました。


「お父さん、ありがとう」

「助かった〜」


しかし、最後に車を降りた妻の、不敵な笑み。

「仕事に間に合うんだったら、毎回、送って貰おうかしら」


……私は、息子のためと思って踏み込んだ領域は、実は危険な罠に満ち溢れているのではと思わずにはいられません。


家族全員を「濡れない場所」へ送り届けた運転手だけが、ダッシュのために雨に濡れて冷えた体のまま満員電車に揺られている。この、見事なまでの構図。


さて。私のもとに「送迎付きの通勤」がやってくる日は、果たして来るのでしょうか。


それとも——いっそ、私が在宅勤務にでもなれば、この周遊バスの運行ダイヤも、組み直せるのかもしれません。


そんな淡い希望を、濡れたワイシャツの袖でそっと握りしめながら。

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