―第0️⃣5️⃣2️⃣話― 【緊急対応】食いしん坊なお姉さん「チャトラン」
うちには4匹の猫がいる。
それぞれが特徴のある猫たちだ。
その中で長女にあたる猫が、チャトランという保護猫だ。
この子は、半外飼いされていた、人懐っこい子だったようだ。
地域猫として近所の方からご飯をもらい、生きながらえてきたと思われる。
そんななか、熊本地震が起きた。
人々は日常の生活から切り離され、避難生活を強いられてしまう。
そんな中では、飼い猫ならともかく、地域猫として人々の好意によって生きながらえてきた猫にとっては、死活問題な状況になっていたようだ。
たくさんの人々でごった返す避難所に来て、懸命に餌をねだっていた。
可愛いねとみんなに言われるが、手元には自分たちの食料しかなく、猫にあげられるご飯はなかったようだ。
そんな懸命に生きている姿を、私の友達が動画に撮り、送ってきた。
「余裕があれば、この子を引き取ってみない」と。
我が家は比較的被害が少なかった。
大病院の近くに居を構えていたため、本震後すぐに電気は復旧。
水は井戸水を地下70メートルから汲み上げていたため不便はなく、家はオール電化だからいくらでも調理ができる。
本震後に買い出しにスーパーに行った際も、他の方々がカップ麺やパン類等を入手している横で、誰も手にしていない、じゃがいもと人参と玉葱とカレールー、お米を20キロ買って帰ったものだ。
それだけ余裕がある状況だった。
妻に相談をすると、動画で愛想を振りまく彼女に一目惚れをし、翌日には引き取りのために車を走らせた。
あれから10年。
熊本地震からの復興の歴史と、チャトランとの想い出は、我が家ではイコールになっていた。
我が家では、必ず引き取る際には動物病院に連れて行く。
元々の飼い猫も居るので、病気の有無から始まり、本人の状態もしっかりと調べておかなければならないからだ。
チャトランを調べると、どうやらお腹に虫がいるという。
他の子に移したら厄介。
すぐに虫下しを処方されて飲ませることになった。
他の子にも予防としてクスリを処方され、当時、我が家には諭吉、かぐやの2匹がいたので、3匹分のクスリをそれぞれのご飯に混ぜ込んだ。
先生から「このクスリは強力なんですが、苦いので猫さんが飲まないので頑張ってあげてください」と言われていた。ウェットなご飯に混ぜると比較的食べやすいと。
諭吉もかぐやもかなりの量を残した。
しかし、チャトランだけは違った。
自分の分をぺろり、諭吉とかぐやのクスリ混じりのご飯もぺろり。
お陰で、本来ならしばらく治療にかかると言われていた彼女のお腹の虫は、わずか2日で駆除ができた。
食いしん坊で生きる事に貪欲で、そして誰よりも愛想の振りまきがあざといお姉さん。
それが、チャトランだった。
引き取ったときには2歳くらいと言われた。
経産婦でお母さんだったことも告げられていた。
彼女が保護されていたときには、近くには子どもはいなかったとも聞いていた。
そのチャトランの様子が最近おかしい。
食べても戻すし、どうもお腹がゆるくなっているようだ。
水を飲んでも全て戻す感じ。
今日、動物病院に連れて行った。
とりあえず全身の検査をしましょうと、今は動物病院に日帰り入院をしている。
説明では、人間ドックということだが、年齢も年齢。
病気になっている可能性が高いだろう。
諭吉が亡くなった時に似ている。
このままあとどのくらい元気でいてくれるか。
猫は自分の運命が分かってくると、どこか遠くに行って静かに逝くと聞くが、あれは違うという。
自分が病気と気が付かず、いつものように出かけて、帰って来れずに亡くなるのだと。
夕方に引き取り、お医者さんから説明を受けるが、果たしてどういう結果になるのか。
今は彼女に負担をかけず、そしてできる限り元気にいられるように見守るしか無い。




