表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
めこねこの日々のあれこれ  作者: めこねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/104

―第0️⃣4️⃣7️⃣話― 【禁断の飲料】禁断のジュースと、わが家に来航した「黒船」——夏本番、父の悩ましい決断

私は小さい頃、清涼飲料水——いわゆる「ジュース」を、ほとんど飲んだことがありませんでした。

正確に言えば、両親が買わなかったので、飲む機会そのものがなかったのです。


唯一の例外が、オレンジジュースくらい。世界的に有名なコカ・コーラなど、私の目の前に現れたことすらありませんでした。それは祖父母の家でも同じで、記憶が確かなら、中学校に上がるまで、炭酸飲料の類はほぼ口にしたことがなかったと思います。


■ 「秘密のカーテン」の先


そんな私が、ジュースの味を覚えたのは——大人がお酒の味を覚えるのと、よく似ていました。


きっかけは、交友関係や部活動。友達と連れ立って外に出ると、みんな躊躇なくジュースを買うのです。それに見習って、私も「大人になった気分」で一本買って、一緒に飲む。


あの甘さと、爽やかさ。炭酸が体を駆け巡るあの感覚は、えも言われぬ美味しさだったと記憶しています。


もちろん、両親が飲ませなかった理由も、今なら分かります。虫歯や糖分の摂りすぎを心配して、子どもに飲ませたくなかったのでしょう。だから、両親を恨む気持ちは微塵もありません。


むしろ、あの頃のジュースには、背徳感がありました。親には知られてはいけない、「秘密のカーテン」の先を覗いたような、あの特別な感覚。それも含めて、美味しかったのだと思います。


■ 世代は巡る


時は流れ、私が子どもたちを連れて実家に帰ったときのこと。


孫たちの飲み物として、ジュースが出されました。とはいえ、どぎつい炭酸ではなく、果汁10%程度の、子ども向けのリンゴジュースです。以前、子どもたちがりんごを綺麗に平らげたのを覚えていて、「りんごが好きなら」と用意してくれたものでした。


私の子ども時代にはなかったジュースを、孫が美味しそうに飲んでいる。その光景を見て、両親も少し柔らかくなったのかな、と微笑ましく思いました。


もっとも、わが家でも普段ジュースを飲む習慣はほぼありません。記念日に、私がお酒を飲むのに合わせて子どもたちにジュースを用意するくらい。それも基本は果汁100%か、野菜と果物のジュースです。妻の健康志向も、大いに影響しています。


そんな子どもたちも、外で友達と過ごす機会が増え、すっかり外でジュースの味を覚えたようです。時々、外で捨てそびれたペットボトルを持ち帰ってきて、その包装を見ては、「この子も大人の階段を昇り始めたな」と、妻と顔を見合わせて、あえて何も言わずにいます。


■ そして、黒船来航


そんな健康志向のわが家に、とうとう「黒船」が来航しました。


ポカリスエットの粉です。


私が学生の頃、あの粉を使って「濃いめのポカリ」を作って飲む友人を、羨ましく眺めていた——あの、伝説の粉です。


健康に厳しい向きに言わせれば、糖分や成分は褒められたものではない、なんて話も聞きます。けれど、夏場の熱中症対策として、子どもがきちんと水分とミネラルを摂れるなら、目くじらを立てるのも野暮というもの。要は適材適所、過度な常飲にならないよう配慮すればいい、というのが私の考えです。


そのポカリの粉が、なんと息子の部活の活動費で支給されたというのです。


「夏の暑い時期、熱中症で倒れられては困るから」という配慮とのこと。頭が下がります。


さて。これを息子に持たせるにあたり、私は今、重大な決断を迫られています。


あの日憧れた「濃いめのポカリ」を持たせるべきか。それとも、規定通りの「普通のポカリ」を持たせるべきか。

禁断の扉を開く鍵は、私の「ひと言」が握っている。そう思うと、今夜も眠れぬ夜になりそうです。


……いや、冷静に考えましょう。


部活で汗だくになる息子に、濃いめの糖分を持たせてどうするんだ、と。これは私の少年時代の夢を息子に投影しているだけで、完全に親のエゴです。


息子には、きっちり規定通りの濃度で持たせます。私の「濃いめの夢」は、私がこっそり休日に叶えることにします。


「秘密のカーテン」の先にあったジュースの背徳感も、今となっては良い思い出。


子どもたちには、万全の飲料体制で、思いきり青春の汗を流してほしいものです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ