―第0️⃣4️⃣4️⃣話― 【作家デビュー?】コンテストの「職業欄」で、私の戦いは始まっていた。
昨日までが締切のある作家志望者向けのコンテストに、短編小説を投稿してみました。
人生初の、コンテストへの応募です。
勝手がまるで分からないので、何もかもが手探り。けれど、その手探り感すらも、なんだか新鮮で楽しい。
応募フォームを開き、項目をひとつずつ埋めていく。本名、年齢、ペンネーム……。その一つ一つに、いちいち心臓がドキドキします。
「この歳で何をやっているんだ」
という気恥ずかしさと、
「いや、夢に挑むのに年齢は関係ない」
という気概が、胸の中で同時にせめぎ合う。
そんな緊張のなか、ふと、ある項目で私の指が止まりました。
「職業」の欄です。
■ 自由記述という名の、罠
普通であれば、「会社員」「自営業」の選択や記入で済む話。
ところがこのフォーム、職業欄が自由記述になっている。しかも、ご丁寧に記入例まで添えられている。
例:「本業は会社員だが、兼業で作家活動をしている」
……ん?
これを見た瞬間、私の中の「考えすぎる悪い癖」が、むくむくと頭をもたげました。
なぜ、わざわざこんな記入例を載せるのか。
ただの職業欄に、なぜここまで「自由に書いていいですよ」感を出してくるのか。
そうか。
読めたぞ。
これは、作品を読む前に、この欄で応募者の「面白さ」を見極めようとしているに違いない。
つまり職業欄とは、本編が始まる前の「前哨戦」。ここで審査員の目を引けるかどうかで、その後の作品の読まれ方すら変わってくる——そういう、高度な心理戦の入口なのではないか。
(※たぶん、考えすぎです)
■ 父、職業欄に本気を出す
そうと決まれば、黙ってはいられません。
私は、職業欄に書くべき「最強の肩書き」を、あれこれ考え始めました。
まず思いついたのが、シンプルな盛り方。
「会社員(ただし、心は文豪)」
……痛い。痛すぎる。厨二病全開。
審査員の苦笑いが目に浮かびます。却下。
次に、家庭での実情を盛り込む路線。
「会社員。家庭内では、妻と4匹の猫に仕える執事。」
事実ではありますが、職業なのかと問われると怪しい。猫の世話は職業ではない。却下。
ならばいっそ、ミステリアスに攻めるか。
「職業:夜な夜な、怪談を書く者。」
おお、それっぽい。けれど、これでは私がただの怪しい人物だと思われかねません。そして実際、半分そうなので、なお厄介です。却下。
気がつけば、本編の推敲そっちのけで、職業欄だけで小一時間悩んでいる自分がいました。
肝心の小説は、あんなに何度も書き直したというのに。
■ 結局、私はこう書いた
さんざん悩んだ末、私が職業欄に書いた答えは——
ごく普通の、当たり障りのない一行を追加で矛を収めました。
「いつか作家になれたらいいなと夢見る会社員」と。
勇気が、出なかったのです。
あれだけ妄想を膨らませておきながら、いざとなると「変なことを書いて落とされたら……」という小心者の本性が顔を出し、結局は無難な道を選んでしまいました。
冒険のできない男の、悲しい性です。
たぶん、審査員の方は職業欄なんて気にしていないでしょう。見極められているのは、当然、作品そのもの。それは分かっています。分かっているのですが、初めての投稿というのは、こういう余計なところまで気になってしまうものなのですね。
何はともあれ、私の初投稿は、こうして職業欄との壮絶な戦いを経て、無事に完了しました。
結果がどうなるかは分かりません。
でも、この「あれこれ考えながらドキドキする時間」こそが、挑戦することの醍醐味なのかもしれない、と思っています。
さて。次に投稿するときこそは、職業欄に勇気を出して何か書いてやろうか。
……いや、やっぱりやめておきます。落ちたくないので。




