―第0️⃣4️⃣1️⃣話― 【脳内災害対策本部】元災害対策プロの父、台風一過に下された非情な辞令。
台風6号が日本列島を襲いました。
6月にしては14年ぶりの台風上陸とのこと。
各地で大雨をもたらし、少なからずの被害が起きて、心を痛めています。
私は以前、この台風の被害と向き合うことが多い職場にいました。
気象庁とかではないですよ。もちろん、自衛隊とかでも。
全国規模で支店が各所にあり、被害が起きた際に対応をしなければならない部署に身をおいていたという立場とだけお伝えいたします。
台風が来ると、その部署で働いていたことを思い出します。
台風が来る前から進路を確認し、進路近くの支店等に被害が最小限になるように指示を出す。また、社員が災害に遭わないような配慮をする。
万が一何らかの被害があれば、復旧のための各種支援を行う。
その部署には出たり入ったりで10年近く所属していましたが、年々、災害対応が常態化していくのを感じていました。
以前でしたら1年に1回くらい災害対応をすればよかったのが、年に2回、3回と増え、近年では、8月9月になると2週間に1回くらいの対応をしていたのでは?との記憶があります。
それくらい、最近は台風の巨大化や、線状降水帯の頻繁が当たり前になっている気がしています。
当時は台風が発生するたびに、文字通り「不眠不休」で各種HPの天気予報や進路予想、雨雲レーダーと睨み合い、刻一刻と変わる台風進路に神経をすり減らしていました。まさに、見えない敵と戦う前線基地のような緊張感が、あの部署にはあったのです。
その部署を離れて数年が経ちますが、悲しいかな、長年叩き込まれた「災害対応の習性」というものは、そう簡単には抜けません。
今でも台風のニュースを見ると、私の脳内には自動的に「脳内災害対策本部」が立ち上がります。
「よし、進路は東寄りに変わったな。ベランダの物干し竿を全部外して固定しろ!」
「停電に備えてモバイルバッテリーの充電は100%か!?」
「食料と水の備蓄、避難経路の確認よし!」
元・プロとしてのプライドが、私を突き動かすのです。
昨日も、台風6号が通り過ぎるのを前に、私はリビングで「これぞ完璧なリスクマネジメント!」とばかりに、家族に向かってドヤ顔で防災講義を垂れていました。
「いいか、台風が過ぎたからって油断するな。吹き返しの風があるし、何より気圧の急激な変化に備えて、体調管理をだな――」
そこへ、リビングのソファで猫のちゃとらんを撫でていた妻が、冷ややかな視線を向けてきました。
「ねえ、脳内対策本部長。さっきから偉そうに指示出してるけど、一番大事な『現場の被害』に気づいてないの?」
「え? 現場の被害……?」
私が首を傾げると、妻は静かにベランダの窓を指差しました。
そこには、台風の暴風雨によって近くの竹林から吹き込んできた、大量の笹の葉や落ち葉に汚れた窓ガラスが。
すかさず、横から娘が追撃を仕掛けてきます。
「お父さん、元プロなんでしょ? 吹き返しの風を計算して、今すぐあの『窓ガラスの復旧作業』の陣頭指揮を出してくれない? あ、もちろん作業員はお父さん1人ね」
「……。」
さらに足元では、ちゃとらんが「お外が汚れてて、パトロール(窓の外を見るの)ができないニャ」とでも言いたげな顔で、不満そうに私のスネに頭をすりつけてきます。
かつては全国規模の災害対応を指揮(指示)していたはずの私ですが、現在のわが家における私の立ち位置は、本部から最前線へと一瞬で送られる「現場のワンオペ作業員」でした。
気がつけば、妻からバケツと雑巾を渡され、台風一過の青空の下、1人で必死に窓を磨き上げている私がここにいます。
まぁ、これも一つの「迅速な復旧支援」ということで……。
皆様のご家庭の「対策本部」は、台風の後にどんな指示が出ましたか?
なにはともあれ、大きな被害がなくて本当に良かったです。
これから梅雨の季節。まだまだ予断が出来ない時期に突入しますので、皆様日頃から備えをしておきましょう。




