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めこねこの日々のあれこれ  作者: めこねこ


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39/104

―第0️⃣3️⃣9️⃣話― ラビット爺さん——都市伝説テラーを育てたじいちゃんの話。

私は、母方のじいちゃんが大好きで育ちました。


じいちゃんも、孫の中でどうも私が一番可愛かったらしく、とても可愛がってくれました。

とは言っても、えこひいきで何か買ってもらったり食べさせてもらったり、ということではありません。じいちゃんは私を、自分の「後継者」にすべく、様々な英才教育を施したのです。


――――――


じいちゃんは、貧しい家の出身でした。

十分な教育を受けることができず、一生を農業に従事した人でしたが、本当は弁護士か相撲取りになりたかったのだそうです。

そして、少しばかり頭の良かった幼い私に、その夢を託しました。

「まずは弁護士になれ」と、難しい話を私に聞かせる。そして相撲。じいちゃんちに行けば、必ず私と相撲を取りたがりました。

子どもながらに、その期待をどこか嬉しく感じていたのを覚えています。


――――――


そんなじいちゃんちに、私はよく一人で泊まりに行っていました。

妹も、ほかの孫たちも、不便なじいちゃんちには泊まりたがらない。でも私だけは、金曜日の夜にじいちゃんちに泊まるのが、何より大好きでした。

理由は、いくつかあります。

まず、当時の金曜の夜は、萩本欽一さんの番組がやっていて、これがとにかく面白かった。家では「早く寝なさい」と言われるのに、じいちゃんちでは、じいちゃんが寝るまで一緒にテレビを観てもよかったのです。

そして、ばあちゃんの料理。

大層なご馳走が出てくるわけではありません。でも、煮物ひとつとっても、なんというか、味が合うんです。あの味は、今でも舌が覚えています。


――――――


そしてもう一つの楽しみが、じいちゃんが寝る前に語ってくれる「マモー」の話でした。

じいちゃんちの裏山には、「マモー」が住んでいる、と言うのです。


羽が生えていて、真っ黒な体。鳥のような姿をしているが、もっと大きい。

マモーは、幼稚園生くらいの子どもなら足爪で掴んで飛んでいけるほどの力と、とてもずる賢い知恵を持っている。人間を騙して食べることなんて朝飯前。

だから、こちらも知恵をつけて対抗しなきゃいけない。


「明日は朝から山に入るぞ。栽培しているしいたけを採りに行く。ついでに、マモーの痕跡と対策を教えてやる」

そう言って、翌朝、私を山へ連れていくのでした。

あとから母に話すと、「魔物まもの」が訛って「マモー」になったんでしょう、と笑われました。

でも、当時の私にとっては、本当に存在する怪物でした。

山鳩や雉鳩の鳴き声を聞けば、じいちゃんは「あれがマモーの鳴き声だ」と言う。モズの糞を見つければ、「これがマモーの糞だ」と言う。山に入るたびに、ありとあらゆる痕跡が「マモーの仕業」として説明されるため、私はそれをすっかり信じ込んでいました。


――――――


きっと、あの夜の語りがあったからでしょう。

私は幼少期から、UMAや都市伝説、オカルト話がとても好きになりました。今、夜な夜な怪談を綴っているのも、思えばその延長線上にあるのかもしれません。

私は、弁護士にも相撲取りにもなれませんでした。

でも、じいちゃんの薫陶を受けて——立派な「都市伝説テラー」にだけは、なりつつあります。

天国にいるじいちゃん、どう見ているかな。


――――――


ところで、なぜこの記事の題名が「ラビット爺さん」なのか。

じいちゃんは晩年、老人ホームに入っていました。

その頃には私はもう結婚しており、ある日、妻を伴って見舞いに行きました。残念ながら、じいちゃんはボケが進行していて、私のことはよく分かっていなかったようです。それでも、束の間の時間を一緒に過ごさせてもらいました。

その帰り道、妻がぽつりと言ったのです。

「おじいちゃん、うさぎみたいだったね。ラビットじいちゃんだね」

ふんわりとした白髪と、優しい目元。確かに、言われてみればそうかもしれません。

しかし、妻の名言はこれで終わりませんでした。

「90歳近くで髪の毛あったね。良かった、あなた髪の毛は大丈夫よ」

……じいちゃんの遺伝子に、私の頭髪の未来までチェックしていたとは。


うちの奥さんは、数々の名言を放っております。

また機会があれば、ここで皆さんにお披露目したいと思います。

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