―第0️⃣3️⃣5️⃣話― 【秘密の暴露】家族は誰も知らない。父の夜な夜な怪談計画。
初夏も終わりに近づき、心なしか夜の空気がジメッと、どこか妖しさを帯びてきたように感じます。
そんな夜にふさわしい、私の秘密を、今日は少しだけ開示しようと思います。
実は私、子供の頃から「不思議な話」を集めるのがたまらなく好きなのです。
幼い頃、祖父が語ってくれた「山に棲む魔物」の境界線。
母が少女時代に目撃したという、闇夜に浮かぶ「火の玉」。
父が遭遇した、地獄の鬼に足を引っ張られたという、生々しい闘病生活の記憶……。
大人になった今、世間はそれを「オカルト」と呼びますが、私にとっては大切な「サブカルチャー」。
ただ話を聞くだけでは飽き足らず、集めた怪異のエッセンスを自分なりにブレンドし、新しい「怪談話」へと昇華(創作)させることが、私の密かなライフワークなのです。
――――――
とはいえ、普通に暮らしていてそんなに都合よく怪異には出会えません。
たとえば母が見た火の玉の話も、元はこうです。
「昔、住んでた家よりも更に山奥にある集落の親戚の家へ行く途中にある墓地に、夜、火の玉が飛んでいた」
実にありきたりです(笑)。本当に怪火だったのか、夜にお参りに来た人のパッと灯したマッチの火か、はたまた「怖い、怖い」と思いながら歩いていた母の見間違いか……。
そのままでは、どうにも締まりが悪い。
だからこそ、そこに「時代の背景」や「人間の業」というスパイスを肉付けし、ひとつの物語に仕上げる。そのプロセスがたまらないのです。
最近は様々なコミュニティにも参加していますが、ディープなネタを持つ方々との会合にはなかなか恵まれず、深刻な「ネタ不足」に陥っていました。
ちなみに。
この怪しい趣味のことは、妻も子供たちも、誰一人として知りません。
もし、私がなんの対策もせず、明日ひょっこりあの世へ旅立ってしまったら。
遺品整理で私のパソコンから「夜な夜な書き殴られた大量の怪談話」が見つかったとき、家族は一体どう思うのでしょう。
「お父さん、実はめちゃくちゃ変わり者だったんじゃ……」と引かれるのか、
「えっ、あの人、裏でこんな恐怖体験をしてたの!?」と震え上がるのか。
今から想像するだけで、ちょっとゾクゾクします(笑)。
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ただ、血は争えないなと思う瞬間があります。
私の愛する子どもたちには、どうもその「息吹」が少しだけ引き継がれているようなのです。
いつだったか、
「小さいおじさん(小人)を見たことがある」と真顔で言っていた息子。
そして、なぜか昔から「動物との意思疎通が異様にスムーズ」な娘。
怪談師の血を引く(?)我が子たちよ。
そろそろ学校や日常で、新しい「不思議な体験」のネタが溜まっている頃ではないかい……?
父は密かに、彼らからの「新作ネタ」のタレコミを心待ちにしています。
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……しかし、現実はそう甘くありません。
昨晩、リビングで宿題をしていた高校生の息子に、私はそれとなく探りを入れてみました。
「なぁ、通っている学校で七不思議とかの話とかない?」
すると、思春期真っ只中の息子は、私の顔をじっと見つめ、低音の効いた声でこう言ったのです。
「……お父さん。夜中にニヤニヤしながらパソコンに向かっているお父さんが、今、我が家で一番の怪奇現象なんだけど」
(くっ)
さらにキッチンで洗い物をしている、我が家の絶対権力者である妻が冷ややかに一言。
「お父さん、オカルトもいいけど、さっきから『ちゃとらん』がパパの背後で霊みたいに張り付いてるわよ。たまにはウェッティーな高級猫缶買って来ないの?強い怨念を感じるわよ」
振り返ると、食いしん坊のちゃとらんが、世にも恐ろしい(可愛い)おねだりの顔で私の足元をチョイチョイと突いていました。
どうやら、私が死んだ後に残る怪談の原稿よりも、「今ここにある、思春期の息子の冷たい視線」と「猫の食欲という名の怨念」の方が、遥かにリアルで、恐ろしいホラーのようです(笑)。
今夜も頭を空っぽにして、サメ映画かゾンビ映画でも観て眠ることにします。
皆さんにも、誰にも話していない「恐怖体験」や、ちょっと「不思議な話」はありませんか?
よかったら、こっそり教えてください……。




